8の殺人 この「8の殺人」は我孫子武丸氏のデビュー作です。その名の通り、平面が「8」の字になっている建物で起こる連続殺人を書いたミステリー。我孫子氏の作品は、どことなくユーモラスな雰囲気がありドロドロしたおぞましい作風では無いので、緊張せずに読めるところが好きです。それに、ときどき「カー」の講義を取り入れていたりして個人的には拍手しながら読んでいます。 ところで、この通称「8の字屋敷」と呼ばれる建物は、東京都S区の閑静な住宅地に建っているようです。所帯主は“蜂須賀建設”と言う建設会社を営む「蜂須賀菊雄氏」で、鉄筋コンクリート造3階建ての専用住宅。う〜ん、まともですねぇ…。ここまでは何の問題も無く建つ建物のようです。 1階には大きな中庭を持ち、数字の「0」の形をしています。2・3階は、その中央部を横切るように渡り廊下が掛けられ、上から見ると「8」の字に見えるのです。(余談ですが、この蜂須賀氏 当初は「蜂」の形の建物にしようとしていたらしいのですが、周りから反対され結果的に数字の「8」で落ち着いたらしいのです。建築的には蜂の形の建物も見てみたかったなぁ〜)ところが、この建物の凄い所はお風呂とトイレが無いのです。いや正確に言うと各人の部屋の中にユニットバス・トイレが設けられていて、まるでホテルのようになっています。普通、自宅ならお風呂やトイレは共用のスペースとしてありそうなのですが、この住宅には共用のお風呂はありません。部屋ごとに完備してあるので全部で12個ものお風呂が有る家なのです。(変ですよね〜)家人の人間関係が、いかに冷めているかを象徴していますよね? また平面図を見て貰えれば判るように、建物は南北に伸びる形をしているのですが、これが実に不合理!建物の南面には各階とも廊下が有り、部屋になっていません。当主やその家族の部屋は、中庭を介して「北側の採光」を確保しているだけなのです。反対に従業員や秘書など、家族以外の人間の部屋は中庭から「南の日当たり」を得られる良い場所にあります。これってどう言うこと?
1階の食堂も厨房とは中庭を挟んだ場所に有り、これでは食事を運ぶのも一苦労!住み込みのコックさんがいるとは言え、全員で11人も住んでいるのですよ?食事の時は、料理の上げ下げだけでも戦争のようでしょう。ゾーニングに問題ありと言いたいですね!蜂須賀建設さんの設計能力を疑いますね〜。もっとも、これは使い勝手の問題で建築基準法上は問題ありませんが…。 建物の外観に関しては、「貸しビルのよう」とだけしか書いていませんが、雰囲気から想像するとタイル張りの外観が似合いそうですね。門に関しても同じようなセンスのものだと考えます。 さて、ここからはもう少し突っ込んで推察したいと思うのですが、まず「閑静な住宅地」と言うことから用途地域は「住居系」の地域であると推察します。都内のS区に建つと記述してあることから、渋谷区・世田谷区・新宿区などと「S」の付く区は沢山ありますが、閑静な住宅地として直ぐに思い浮かぶのは「世田谷区」です。文中に「新宿に向かう車の中で…」の記述があるところからも、そう判断したいですね。
建物全体の大きさを想像する目安として、一番小さな部屋の大きさを考えてみましょう。「応接室がおよそ20帖の広さ」との記述と、3階の小さな部屋が「およそ8帖程度」の記述を元に考えます。小さい部屋もビジネスホテルと変わらない程度のユニットバスがありますし、トイレも別に設けられているでしょう。(トイレぐらい別だよね〜普通?)と言うことは部屋だけの面積で8帖、その他水回りなども含めると一部屋の大きさはおよそ12と言うところでしょうか?応接室は、その2部屋分の広さと言うことですね。(でも、これでは生活出来ないような気がするけど…まぁいいか!)部屋の大きさは、常識的に考えて3.5m×5.5m程度と仮定します。次に中庭ですが、1階に食堂があり当然基準法上の「採光」が必要になるので、計算すると渡り廊下までの距離として5m程度は必要になります。これに基づいて計算すると 1階 426.0 と言う、とんでもない数字になってしまいます。ちなみに坪数で言うと403坪ですよ!ど〜です 豪邸でしょう?敷地だって、住居系地域の建蔽率は若干の差が有っても60%を上限としていますから最低でも760平方センチメートル!およそ230坪になります。でかい!坪当たりの工事費を150万円ぐらいとして計算すると、なんと6億以上の費用の建物!6億掛けてビジネス・ホテルのユニットバスなの?恐ろしくセンス無いぞ!「蜂須賀建設!」 同じ「8の字」でも、もう少し何とかなるだろう〜? それに…建物の大きさを推察してくると、どうしても不可解な事象があるのです。事件のトリックに大きく関係してくるので、書けませんが「説得力無いんじゃないの?」って感じになってしまいます。(我孫子さん ごめんなさい) でも、この我孫子氏の作品は本格物を読みやすく書いてくれる文章力や娯楽性に富み、ミステリーが苦手な方にも楽しめると思いますので一度お試し下さい。今後の我孫子氏の益々のご活躍に期待したいところです。
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