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■ 『玄い女神』 を検証する ■
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ジャ〜ン!久しぶりの更新です。お待たせ致しました!
いよいよ元祖建築探偵「桜井京介」をご紹介する事になりました。実は、このコンテンツを思い付い
たきっかけは「桜井京介」だったのですが、何しろこの作品に登場する建物は難しくて。
解読不能と言う難しさではなく、題材として扱っている建物が「鹿鳴館」とか「湖畔に建つ城」と言っ
た建物で、手に負えなかったのです。(面目無い)
それでは早速ご紹介しましょう。
作者は、篠田真由美さんで「建築探偵 桜井京介シリーズ」の第ニ段です。(でも私の場合、読む
順序が作品順に読んでないのです・・・失礼)
主人公の探偵役は「桜井京介」。W大学の文学部の学院生なのですが、なぜか歴史的建造物に
興味があるのです。身長は180cmを越す長身で痩せ型。長髪を前に垂らし、髪で顔を隠している
鬼太郎のような風貌なのですが、実は絶世の美男子!その顔を正面から見据えたら、どんな女性
でも、たちどころに恋に落ちるほどの代物だから、これが凄い!かつポーカーフェイスの無口と来て
いる。興味があるのは、歴史的に価値のある建造物だけ。
その脇を固めるのが親友の「栗山深春 くりやまみはる」と「蒼 あお」。美春は京介の同級生で、
蒼は「桜井京介」デビューの事件で知り合う、身寄りの無い少年。しかも苗字も無い・・・。その謎は
「原罪の庭」をお読みください。この作品も、とっても良かったですぞ〜。個人的には、こちらから読
んでもらいたい。
まぁ、その事は置いといて・・・。取り敢えずは、年の離れた弟分と言うふうに紹介しときましょう。
3人とも同大学の教授「神代宗 かみしろそう」氏の家に下宿しているのですが、また、この教授が
良い!(私がこんなに誉めるのは珍しい!)
ですが残念ながら今回の作品には、蒼と京介しか登場しません。美春は旅行に行ってしまうし、神
城教授はイタリアに留学中なのです。
さてさて事件の概略ですが、事の起こりは10年前のインドから始まります。7人の男女が、インド
旅行に出かけます。リーダー役の橋場氏が借りた別荘内の密室で、橋場氏が謎の死を遂げる。自
殺か?はたまた殺人か?しかし厄介な事に巻き込まれる事を避けた6人は、自殺と言う事でインド
警察に届ける・・・。
場面は変わって10年後の現在。京介の元に1通の招待状が届く。それは、京介が15歳の時に加
わっていた劇団のマドンナだった「狩野都 かりのみやこ」からの招待状だった。群馬県碓氷郡に
建つ、明治建築の建物を改修しホテルとして営業する。ついては京介や、あの頃のメンバーを招待
して、お披露目をしたいとの事だった。あの頃のメンバーとは、そう「あの忌まわしい事件を共にし
た、インド旅行のメンバー」なのだ!
人里離れた山中のホテル。大雨の影響で土砂が崩れ、道が閉ざされる。電話も通じない。そして、
惨劇の幕は切って落とされる。全ては「あのインド旅行から始まっていたのであった〜!」
パチパチパチ、素晴らしい〜!私の好きな王道だ〜!
ここまでで充分読みたくなったでしょ?読ん
でください!見て下さい!お勧めですから。
さてさて事件の舞台となる、このホテル。その名も「恒河館」。ところが、これなんて読んで良いの
か記載が無い。インドがテーマならば「ガンジス河」の筈なのに、なぜか「こうが」と読めてしまう。
正解は「ガンガ館」。う〜ん、チョット読みにくい。それはこっちに置いといて・・・。
建物のイメージを説明すれば、明治時代の別荘建築を蘇らせたもの。背後の渓流に張り出したよう
に建ち、正面には広いベランダを持つ、木造2階建ての漆喰仕上げの建物。様式的には我流模倣
「擬洋風」になるのですが、特徴的なのはベランダやインテリアにインド・ムガール風装飾をなして
いること。つまり簡単に言えば、インドの雰囲気漂う明治村の建物みたいってこと。(余計判りにく
いって!)
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居留地建築 参考写真
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私が解釈するには、居留地建築の雰囲気を、持っているのではないかと思います。
居留地建築と言うのは、西欧人が南アジアの亜熱帯地方を植民地とした時に、建物の三方向に
大きくベランダを設け、入り口や窓を大きく開け、通風に配慮し、かつ直射日光を避けるように配慮
された建物様式です。
上の写真は現存する「長崎居留地二十五番館」の写真です。
現在も、明治村に行けば本物を見ることが出来ます。
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この恒河館は明治建築を改修した本館と、平屋建ての新館があり、その間を渡り廊下で繋いだ建
物なのです。新館はカリ(オーナー狩野恵のあだ名)と、その養子にあたるナンディの住居と厨房
倉庫などがあります。
その外観は北欧風のログハウスの面持ちと記載されています。なに〜〜〜!ログハウスと明治建
築を隣り合わせるとは、実にけしからん!いや、失敬・・・。バランスが釣り合っていない、出来れば
単独で建っていて欲しいと、切に願うような建物なんです。今回は、この建物の解説はカット!
(個人的な趣味の問題で)
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開智学校
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余談ですが、京介と蒼が「恒河館」を始めて見た印象を語る会話の中に、松本の「開智学校」の話
題が出てくるのですが、これがその建物のスケッチ。
建築様式としては、上の居留地建築とは、似ても似つかない様式ですから、二人が驚くのも無理
はない。代表的な明治建築ですから、覚えておいて損はないですよ。
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話が反れてしまいました。本題に戻し、舞台となる恒河館の大きさを推理しましょう。
2階の客室から考えるのが、妥当でしょう。(ここが一番判断しやすいから)客室に入ると、まず広
い部屋が。この部屋の大きさが、ホテルのツインルーム2室ほども有ると言う記述があります。
ホテルにも拠りますが、ツイン・ルームの部屋の広さは、大体14〜18u(つまり、畳8.6畳ぐらい
から11畳程度の広さです)。この部屋のおおよそ2倍だと言うことから、28〜36uと仮定します。
この時も建物が木造建築であると言う観点から、メートル単位ではなく尺寸法で考えると
5.46m×6.37m程度(3間×3間半)が妥当な広さと考えられます。つまり34.79u。
次いで正面バルコニー側にある寝室スペースも、ほぼ同じ広さと有りますので、ざっと下図のような
建物の大きさになると予想されます。ここまで来れば面積は出たも同然!
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2階平面図
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1階平面図
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面積を計算すると、こんな感じです。
2階床面積 168.94 u (51.11坪)
1階床面積 168.94 u (51.11坪)
延床面積 337.88 u (102.22坪)
建築面積 231.87 u (70.14坪)
予想に反して、あんまり大きな建物じゃないなぁ・・・と、お考えの貴方は甘い!
カリ達の住居であるログハウスを、考慮に入れなくても、この建物の建設費は相当します。なぜって、まず
土地が山の中の相当奥深い場所です。碓氷峠を越えて軽井沢に通じるR18を右に折れ、山道を進むこと
半日あまり。ガードレールも設置されてないダート道をひたすら走り続ける場所にあるのです。建築資材を
運ぶだけだって、相当な人件費になりそうです。
また、建物は明治建築の由緒正しき物(笑・・・なんで笑っているのかは秘密)その購入費は相当な物で
す。それを丁寧に解体し移築する。チョット値段の想像が付きません。でも、既存建物購入費・運搬費・改
造費・電気・給排水設備の工事費・作業員の宿泊出張費等などを考えると、坪200万は下らないはず。
とすれば、ねっ!2億でしょ?極端に言って、その半分だとしても1億は掛かっているんですよ〜。
凄いなぁ・・・。なんで、ミステリーに登場する人たちって、大金持ちばかりなんだろう?
また、建築基準法上の解釈にしたって、こんな野中の一軒屋。大抵の建物はOKです。おしまい!
だって、ホントに問題ないんです。
私も建物が「宿泊施設」だから、廊下の幅やニ方向避難経路の確保が・・・なんて思ったのですが、大体
客室が2室しかない。これって「旅館業法」から考えれば、簡易宿泊施設にしか該当しません。同様に建
築基準法でも、大抵の項目はセ〜フです。仮に何か問題があったとしても、私が許します。だって、こんな
野中の一軒家なら誰にも迷惑掛けないもん!
書いてしまうと本当に単純なんですが、篠田さんの「建築探偵シリーズ」は建物に、こだわりがあり、私な
んか読んでいる分には非常に面白いです。
この「玄い女神」を読んでいて、明治村に行きたくなりました。普段ミステリーに興味の無い方も「明治村」
の写真集でも眺めながら、明治建築を堪能してみては如何でしょうか?ひょっとしたら、チョットだけ旅行気
分が味わえるかもしれません。
篠田さんの、益々のご活躍を期待しております。
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篠田真由美(しのだ まゆみ)
92年に「琥珀の城の殺人」でデビュー。94年に「建築探偵 桜井京介」が
デビューしました。初登場作品の「未明の家」を皮切りに、本作、「翡翠の
城」・「灰色の砦」と続き、2000年現在では「仮面の島」まで、全8作を執
筆されています。
有名すぎる建築探偵シリーズの他にも、「彼方より」や「イシュタルの子」な
どの作品も多数あり、文章の読みやすさにも定評のある私の好きな作家
の一人です。これからも読み続けたいと思います。
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