感想

                  














暗い宿
有栖川有栖 著|角川書店 発行|¥1500−| | 

【宿】をテーマに書かれた4作の短編集です。
「暗い宿」・「ホテル・ラフレシア」・「異形の客」・「201号室の災厄」と、いづれにも火村助教授と有栖川氏の名コンビが登場しています。

「暗い宿」は、取り壊された旅館の床下から発見された死体は?
「ホテル・ラフレシア」は、イベント“ミステリーナイト”の推理劇と平行する現実の謎。
「異形の客」は、顔中に包帯を巻き、サングラス・マスク・手袋を付けた客が殺される。
「201号室の災厄」は、有名ロックシンガーが目を覚ますと、そこには彼女の死体が・・・。
なんて感じの作品です。



読みやすいです。これって文章が上手なだけじゃなく、無駄な説明や、回りくどい言い方をして無いからだと思います。ですから「謎は謎」として「推理は推理」として、ズバッ!と説明している点が好きです。

強いて言うとすれば「201号室の災厄」のオチって、それで良いの?って感じでしたが、総じては面白かったと言う感想です。

 











天使などいない
永井するみ 著 |光文社 発行|¥1800−| | 

これまた短編集。女性が主人公の短編が、9作が納められています。
その一つ「マリーゴールド」は、OL亜由美の話し。
OL生活に何処と無く張り合いを無くし、恋人は一流商社の御曹司の為、結婚出来ないと言う始末。張り合いを無くした亜由美の唯一の楽しみは、人の人生を覗き見ること。

そんな彼女は電車の中で見つけた、颯爽とスーツを着こなすキャリア・ウーノンの後を付ける。そして彼女の家や休日、家族を覗き見る事を楽しむのだが・・・。ある日、そのキャリア・ウーマンの家が火事になり夫が死ぬ。放火と断定され、亜由美がその容疑者に・・・。



永井女史が書く女性って、読んでいて怖いです。執念みたいなものや、復讐心が妙に生々しくって・・・。まぁ、それが面白い所なのですけどね。

あと生保会社の営業ウーマンを描いた「13ヶ月」などは、やっぱりバック・データの豊富さを覗かせてました。この辺りは「大いなる聴衆」とか「樹縛」と言った、データに裏打ちされた長編の雰囲気を感じさせ面白かったです。

上記の有栖川氏の作品と比べて、推理とかプロットと言う「本格的思考」ではなく、やっぱり「ある種の社会派」だと感じてしまいました。・・・でも好き(^^;)











猫にマタタビの旅
出久根達郎 著 |文藝春秋 発行|¥1667−|


時は文政元年の江戸。金時長屋の3人の住人が織り成す、奇妙奇天烈なお話。
猫の似顔絵を書くことを生業とする銀太郎。
貧乏神を売り歩く丹三郎。
そして饂飩(うどん)好きの謎の絵師 源蔵。

この3人が、猫と織り成すお話。



最初は読み難かったのですが、知らぬ間に引き擦り込まれてしまいました。なんだか「野次喜多珍道中」みたいで、とっても面白かった。(流石!出久根氏!)

江戸時代ののんびりした時の流れと、3人の奇妙な掛け合いは、「大人が書いた本だな〜」って感じです(←誉めてるんですよ)

猫好きの方にはお勧めしたいところですが、好き嫌いがハッキリ出るかもしれないので、お薦めしませんけどね(笑) 










試験に出るパズル
高田祟文 著 |講談社 発行|¥880−|


【QEDシリーズ】で、その名を馳せた高田氏のチョット変わった短編集。
主人公は浪人生の2人と、成績抜群の現役高校生の3人組み。この3人が日常に渦巻く事件を、パズルを解くように解決していきます。

理数系ミステリーが好きな方、あるいはパズル的要素が好きな方には良いかも?



個人的には、高田氏には【QEDシリーズ】を書いて欲しいと思っているので、本書はイマイチ馴染まなかったですが、森博嗣氏的な理数系トリックを書いた点で面白かったです。

また名探偵役の高校生の推理が、本当はことごとく外れていて、ボーっとした主人公が正解を導いてしまう結末は、それぞれに笑えます。

でもやっぱりQEDが好き!











六人の超音波科学者
森博嗣 著 |講談社 発行|¥820−|


人里離れた山奥に、6人の科学者が集う超音波研究所が建っていた。そこに通じる唯一の橋が爆破され、研究所は陸の孤島となってしまう。そんな研究所で第一の殺人が起こる。パーティに招待されていた瀬在丸・練無そして保呂草・紫子の4人は事件に巻き込まれてしまう。そして第二の殺人が・・・。

首と手首を切り落とされた死体が意味するものとは?



どーーーも、森氏と感性が合わなくなってきた(^^;) だいたい、保呂草シリーズは、読んでいてピンと来ない!首は兎も角、手首を切り落とさなければならない必然性が、ロジカルには伝わってこないよ〜。

いくら陸の孤島と言ったって、次の日には警察が来る事は明らかなのに、事件を起す必然性事態が理解できない!ちょっと、こねくり回して鋭さが無くなった感が否めないんですけど〜。

森氏の作品、まだ2冊も未読本が有るけど、また遠のきそうだなぁ〜(辛口失礼)










私が彼を殺した
東野圭吾 著 |講談社文庫 発行|¥695−|


男は恋人を捨て、「金になる女」と結婚しようと目論んだ。捨てられた彼女は恨みに思い、服毒自殺を図る。男は彼女との関係を隠そうと隠蔽工作を図り、結婚式当日を迎える。

そして花嫁を迎えるバージンロードで、男は死んでしまう。そう!自殺した彼女が飲んだのと同じ“硝酸ストリキニーネ”を、誰かに飲まされて。

容疑者は3人。果たして誰が彼を殺したのか!



「どちらかが彼女を殺した」より、容疑者が一人増えた3人になっています。それと真犯人を断定する、所謂「正解」は何処にも書かれていません。ですから読者自身の推理を働かせ無いと、犯人は解らない仕組みになっています。

が!私には「どちらかが」よりも、簡単でした(^^) 本文終了後に、袋綴じのヒントが載っているのですが、これを見るまでも無くキーワードを拾っていけば、犯人は自ずと見えてきます。

ただ哀しいかな、その推理が正しいと言う確証を得る事が出来無いと言う点では、読後ストレスが残るかもしれませんねぇ〜。
こう言う作品て、流し読みをする時には、絶対に不向きだと思います(笑)

以下、私の推理(完全ネタバレですので、未読の方は読まないで下さい)

問題は3つ

1・準子の薬ビンから消えた2錠のカプセルの行方は?
2・ピルケースに付いていた第三者の指紋とは、誰の指紋か?
3・その薬を穂高に飲ませる事が出来たのは誰か?

この3つでしょう。
カプセル2錠の内、一つは間違い無く兄・貴弘が持っていた筈です。穂高の家のゴミ箱から2錠拾った事は事実であり、そのうちの1錠は猫で実験しています。つまり、もう1錠持っている筈なのです。では、その1錠は何処か?それさえ提出すれば、身の潔白は証明できるのにしていません。つまり、今は持ってい無いと言うことなのでしょう。

では何処に? これは美和子が持っていた薬ビンの中としか考えられません。忍び込ませたのは式前日、ホテル内の日本料理店です。美和子が薬の説明をした後に、トイレに立っています。つまり、ここで問題の1錠を薬ビンの中のカプセルとすり替えたのでしょう。他にチャンスは一度も有りませんでしたからね。


もう1錠は、駿河か香織が持っていた。つまり殺人に使った物だと考えられます。ではどちらが持っていたのでしょう?


次にバッグ・薬ビン・ピルケースの中で、一つだけ複線が張られていた物が有ります。それはピルケース。これは穂高が前妻とペアで買ったと書かれています。つまり「同じ物が、もう一つ存在していますよ〜」と言う伏線がね。

一瞬、誰かが「実は穂高の前妻だったのか?」とも考えましたが、加賀刑事は「あなた達以外の第三者」と言明しています。つまり、この中に前妻は居ない・・・。とすると、この指紋は第三者としての「前妻」以外に考えられない!

では何処で前妻が出てきたか?実は何処にも登場していません。登場したのは前妻の荷物だけ。そう!前妻が再婚する際に、穂高との思い出の品を送り返していましたよね。

送り返した場所は、穂高事務所!つまり駿河の部屋にです。文中にも何度かダンボールの山が登場し、駿河自身が「穂高の前妻の荷物」だと語っています。
そして当然、この中からピルケースを見つけたとしか考えられないのです。(当然、前妻の指紋は付いているでしょう)
駿河は、この中に毒入りカプセルを入れ、持ち歩いていたのだと思います。

では駿河には、ピルケースをスリ替えるチャンスが有ったのでしょうか?有りました!たった一度!たった一瞬だけ。

式前に絵里から香織、香織から駿河へと渡されたピルケースの蓋を開け、中のカプセルの数を見ているシーンが有るのです。そしてそれをボーイへ託す前に、一瞬ポケットの中へ仕舞っています。

次の瞬間には、もうボーイに渡していると言う、ほんの一瞬だったのですが、その一瞬ポケットの中でピルケースをすり替えたのでしょう。これ以外、前妻のピルケースとスリ替えるチャンスなど、何処にも有りませんからね。

香織に関しては論外。仮にカプセルを準子の部屋から持ち出す事が出来ても、それをピルケースに忍ばせることが出来ません。ましてや前妻のピルケースを香織が手に入れることなど不可能です。同様の理由で、貴弘も犯人には成り得ません。

と言う訳で、犯人は駿河直之。・・・・・と言うのが私の推理。意外と簡単では?(^^)



たまには建築の本も読まないと(汗)