感想

                  








夏の庭 
湯本香樹実 著|新潮文庫 発行|¥400−| | 

町外れのボロ屋で一人暮らしをするおじいちゃんを、観察し始めた3人の少年。
観察し始めた理由は、「人が死ぬところを見てみたいから」。
だけど観察はいつか、おじいちゃんと少年達の交流へと変わっていく。

いつかは逝ってしまう儚い命を、子供たちの視線で見続けた一夏の思い出。



子供の頃、とても近しい人を亡くしたことがある人は、グッと来るかもしれません。
今、孤独な人は、おじいちゃんを羨ましく感じるかもしれません。
そして大切な人を亡くしたばかりの人は、少年達と一緒に涙することでしょう。

12歳の夏・・・・・悲しくもキラキラした夏。












エンジェル
石田衣良 著 |集英社文庫 発行|¥533−| | 

若くして投資会社のオーナーをしていた掛井は、二人組みの男に殺されてしまう。
そして幽霊となって蘇る。ただ殺される直前から、2年間の記憶を無くしていた。
幽霊となって街をさ迷い、自分がなぜ殺されなければならなかったのかを追い始める。

果たして犯人は?そして動機は?犯人を見つけた時、掛井はどうするつもりなのか?



有栖川氏の「幽霊探偵」と似ているのかな?と思って読み始めたのですが、全然違いました。個人的にはこっちの方が好き。

物に触れることが出来ない幽霊が、訓練を重ねることによってメールを打つことが出来るようになり、それで意思を伝えるのは今時ですが、根底に流れている“孤独感”や“疎外感”は、石田氏独特の雰囲気が出ていて、他の作品同様良かったです。

犯人を追い詰めて行く最後の最後も、テンポもスピードも緊張感も良かったし、どんでん返しが切なくも悲しいラストはお見事。思わず胸がキュン・・・って感じか。











裏庭 
梨木香歩 著 |新潮文庫 発行|¥590−|


今は荒れ放題になっている洋館。
高い塀に囲まれ閉ざされた洋館の庭は、子供たちが潜り込んで遊ぶには絶好の場所。
ところがその裏庭には、隠された秘密の世界への扉が・・・・。

ファンタジー小説かな?



途中からへ別の話になったみたいで、読んでてチョッとビックリ。
でも流石梨木さん!落とし方はお見事でした。
幼い子供が読むにはチョッと複雑だけど、幼い子供を持つ親が読むにはバッチリ!

親と子の情愛、とっても綺麗でした・・・・・・チョッと悲しかったけど。











絶叫城殺人事件
有栖川有栖 著 |新潮社 発行|¥1600−|


表題作を含む6編の短編集からなる一冊。
・黒鳥邸殺人事件
・壺中庵殺人事件
・月宮殿殺人事件
・雪華楼殺人事件
・紅雨荘殺人事件
・絶叫城殺人事件
トリック物がお好きな方には、お勧めの一冊。

被害者だけの足跡があり、犯人の足跡が無い。
でも絶対に殺人事件!果たして犯人は〜!・・・・・みたいな感じ。



うんうん、流石有栖川氏。スッゲェー堪能した。
ハードカバーなのに持ち歩いて読んだほど。

読む人によっては「おい!」ってツッコミも有ろうかと思いますが、私は許す(←何様)
だいたい雪華楼のトリックなんか、普通は思いつかないよ〜〜〜いろんな意味で(^^;)

やっぱりトリック物は面白い!と言うか、有栖川が良い!(←あえて呼び捨て)
読んだ後、「ああ〜トリック・ミステリー読んだ〜」って気にさせるから。
足跡の無い犯人とか、不可解な供述をする目撃者とか、有り得ない犯人とか、そう言うのが好きなので、◎。











唇のあとに続くすべてのこと
永井するみ 著|光文社 発行|¥1700−|


商社に勤める優しい夫と、可愛い娘を持つ主人公の奈津。奈津には料理研究家としての顔もあり、何冊も本を出版するほどだった。平凡ながらも多忙を極める奈津の下に、昔の勤務先での上司の不法が届く。それはかっての奈津の不倫相手、岸の死。
そして、それが全ての始まりだった。

女の煩悩・・・欲みたいな物が書かれているのかも?と評された一冊。



えっとぉ・・・殺人事件は置いといて、女の人の描くエロチシズムみたいな物を、少し感じちゃいました。もっとも、それらが事件全体を動かす軸になっている訳ですから、上手に書かないと意味が分からなくなっちゃう訳ですが(笑)

事件自体も上手に料理されています。やっぱり女性の業・・・と言うか、そう言うものなのかなぁ〜?女性じゃないので分からないけど、小説は面白かった。

あと、これから生牡蠣を食べる時は、気をつけようと思った(謎)











盗作
伊藤たかみ 著|幻冬舎文庫 発行|¥648−|


ミステリー作家の辻克巳は、学生時代の親友カツミの死に疑問を抱く。
カツミの死の謎を追い求めるうちに、巻き込まれていく不可思議な体験。
そして何よりも、この本を書いたのは俺か?カツミか?

ビートルズのポール死亡説などと絡めた、ある意味ではミステリー。



最初は面白かったんだけど、そのうち話がトッ散らかっちゃって、何がなんだか???って感じ。ビートルズの話はカツミが追いかけていたと言うことで、所々に興味深い逸話が挿入されているんですが、それが面白いから読み進めましたが、無ければ途中で投げたかも?

話がアチコチにトリップするの、あんまり好きじゃないです。
あとカツミの死の謎はなんだったの???











迷宮遡行
貫井徳朗 著|新潮文庫 発行|¥552−|


書き置き一つを残して、突然妻が消えた。「探さないでくれ」と・・・・・・。

数少ない手掛かりから妻の行方を負う、リストラされたばかりのダメな夫。
その夫の行方を阻むのは、なんと日本中に傘下組織を持つ広域暴力団だった。
気弱な男だが、妻に会いたい一心で歩き続ける夫。
そして妻の行方を尋ねた男が殺される。

本格ミステリーですね。



貫井徳朗恐るべし。こんなハードボイルド書けたなんて知らなかった。
しかも中盤からのテンポの速さはスッゲー!ってん感じ。ハードボイルドしてるぜぇ〜

ただ最後はそうか?もっともそうだからハードボイルドなんだけど、難しいとこだ。
今年一番「映画にして欲しい作品」みたいな感じでした。

主演は・・・寺島進あたりでどうでしょ?











捨てる技術
辰巳渚 著|宝島社文庫 発行|¥552−|


有り余る物を、如何に上手に処分するかの、極意を書いたような本。



「物を捨てない」ことは、「物を大切にしている」・・・と言う考え方があるが、果たしてそうだろうか?もともと「要らない物」を後生大事に抱えているから、にっちもさっちも行かない状況になってて、それを取り繕う方便が「物を捨てないことは資源を大切にすること〜」なんてすり替えになってんじゃないの?その結果家の中は押入れだらけで、無駄な面積食ってるったらありゃしない(笑)

と、あんまり書くと怒られそうなので止めとくが、確かに物を捨てるテクニックは現代人には無い人が多いし、物を大切にすると言うことと、要らない物まで抱え込むことを一緒に考えてる人も少なくないのは事実。この本のやり方が正しいとは言い切らないが、一理有るのは認める。

家の中に物が溢れ始めると、女性は「収納場所を増やして欲しい」と騒ぎ始め、男性は「広い場所に引っ越そう」と考えるらしい。言い得て妙(^^)

収納するって言うのは、無駄なものを見えない場所に突っ込むって意味じゃないよね(笑)











枯れ蔵
永井するみ 著|新潮文庫 発行|¥667−|


富山県の田圃で、新種と思われる害虫が異常発生すると言う事件が起こる。
ちょうどその頃、食品メーカーに勤める映美は親友の自殺を知り、暫く連絡を取っていなかったことを悔やむ。だが冷静になって、友人の自殺の理由に疑問の目を向ける。かくして映美は親友の死の原因を突き止めるべく、調査を始める。

「米」をテーマにした、第一回新潮ミステリー大賞受賞作品。



永井さん凄いわ〜〜〜。
人間誰でも一作ぐらいは、凄い小説を書くことが出来ると言うけれど、そんなラッキーな力を持ってしても、こんな作品書けないわ〜(当たり前だって)

だいたいプロローグのショッキングさと、本編始まって直ぐの引き込む力の強いこと強いこと。社会派だから血生臭い事件が無いのは当たり前ですが、それにしても凄い。

登場人物のキャラがハッキリしているのは勿論のこと、それぞれが断片的に持っている情報がやがて一つの結論に至るプロセスなんぞ、とっても見事でした。

次作にも期待です










MAZE メイズ 
恩田陸 著|双葉文庫 発行|¥524−|


アジア大陸の外れ、辺境の地に、不思議な矩形の建物が建っている。
その建物は、一度中に入ると戻ることが出来ないと言われていた。
果たして人間消失の真実は?謎を解き明かすために、4人の男たちが調査に乗り出す。



読み手の興味を上手にはぐらかす・・・所謂ミスリード。それがとっても上手でした。
私は違う事ばかり気にしていて、本質の部分を考えないで読んでいたので、結構面白かった。ただしロジカルにミステリーを読む人には、チョッと考えればネタには気が付くと思います。でも、それを気が付かないようにミスリードするのが、恩田さんのお上手なところ(^^)

総合的に判断して、面白かったです。(多少、強引な設定はありますけどね 笑)











童謡の謎 案外、知らずに歌っていた 
合田道人 著|祥伝社黄金文庫 発行|¥571−|


古くから歌われてきた童謡、あるいは唱歌。
その歌に隠されていた本当の意味や、謎のメッセージを探る、童謡の真実。



ある意味でミスとりーの謎解きにも似た内容で、結構面白かった。
しゃぼん玉/七つの子/お正月/ロンドン橋/etcと言った曲が取り上げられているので
とっても興味深く読めます。

ただし【童謡の話】だからと言って、小さいお子さんに読ませるのは???
結構、艶っぽいお話も多いので(^^;)



今年一年で、およそ50冊程度しか読めませんでした。
去年よりも減っているのが、とっても残念です。

年末恒例の「このミス」や「ダ・ヴィンチ」の
今年の秀作アンケートなどを眺めながら
そこに取り上げられている作品を
全く読んでいないことに愕然としたりしながら
鬱々と年の瀬を迎えるのでしょう。

来年は、もうチョッと読みたいし
「話題作も読むべきかな?」などと考えつつ
今年の本の感想は、これで終わりです。

本を読むことって、やっぱり「良い!」ってあらためて感じる
2003年の年の瀬です、はい。