Essay 73 悪意

自民党が威信を掛けた「長野県知事選」は、作家の田中康夫氏の圧勝に終わりましたねぇ~。私、田中氏は好きじゃありません。(まぁ、私の好き嫌いなんかどっちでも良いですけどね)でも、長野県民が新しい風を入れようと選んだ田中氏ですから、その活躍に期待するところです。


ところが、早くも庁内で逆風を受けているようで、その様子を26日のニュース・ステーションで報じていました。田中氏がキーワードとして使う「しなやか」と言う言葉の意味が判らないと言った質問に始まり、「今までの遣り方を否定しているのか?」と言った、かなり辛らつな発言までもが飛び出す始末で、ちょっと見ていて感じが悪かったです。


中でも極めつけは、田中氏が庁内を挨拶して回った光景。田中氏の名刺には、個人のメールアドレスが書かれているらしく、「広く職員の方からのアィデアを求む」と挨拶で語った田中氏が、そのアドレスを知ってもらう意味での名刺交換だったのだと思います。


ところが、藤井世高県企業局長は「会社で、社長が社員に名刺を渡す会社は潰れる」と食って掛かり、挙句の果てには受け取った名刺を、田中氏の目の前で折り曲げて仕舞う有様。
田中氏が退室した後には、名刺を受け取った自分の部下にまで叱責し、悪態をつく始末。


なるほど・・・。民間の会社で社長が変わった際に、一々社員と名刺交換はしないでしょう。あり得ない事かもしれません。だけど、もし本当に「民間の会社」だったら、新社長にイキナリ意見するような無礼な事もしないでしょうし、ましてや社長の目の前で受け取った名刺を、破り捨てるような真似も出来ないでしょう?そんな事したら、一発で「明日から来なくて良い!」と言われてしまいます。


その藤井局長が、自分の行動を正当化しようとしていますが、もはや手遅れだと思います。
人間ですから、相手の好き嫌いはあるでしょう。主義や考え方が違うことも認めます。でも、藤井局長が取った行動の裏には、完全に「悪意」が潜んでいます。

本当に「民間の会社だったら」と田中氏を諌めようとするのならば、少なくとも意見を言うだけで良いでしょう。何も本人の目の前で、受け取った名刺を折り曲げ「貰ったことは無かったことに・・・」と捨て台詞まで吐く必要など、どこにもありません。


その名刺には「長野県知事」と書いて有るのですから・・・。


「会社だったら」の例えを使ってみても、所詮役人でしょう?
社長にどんな悪態をつこうが、反発しようがクビにはならないと言う「安心感」の上に、胡座をかいた行動以外の何者でもありません。笑止千番とはこのことです。本当に「民間の会社」に勤める人に言わせたら「無知・無謀・無教養」以外の何者でもありません。自分の上司や、取引先の相手の名刺を、目の前で破り捨てる等と言う暴挙に出るビジネスマンは、何処にも存在しないと思います。


このこと事体は、ひょっとすると大した事では無いのかもしれません。でも、役人の考え方や役所の体質と言う物を、象徴的に物語っているように感じてしまうのは、私だけでしょうか?


私も仕事柄、建物の「確認申請」なる書類を役所に提出することがあります。「こんな建物を建てますよ」と言うことを報告し、認可を受ける手続きです。木造住宅程の規模ならば「7日間で認可しなければならない」と建築基準法で決められていますが、市町村によっては、1ヶ月近くもかかります。担当者によっては、自分の仕事が忙しく見ている暇が無いから「認可作業を中断します」と言う、判断をする人までいるようです。


「中断」とは、「7日間で認可できません。建物に重大な問題があるからです」と、その認可に要する期間を無期限に延長できる「宣言」みたいなものです。

役人が一日で、どの程度の仕事をしようがノルマはありません。頑張って「認可」を下ろそうが、給料にもボーナスにも影響しません。でも民間は違います!その建物の認可を受けて、初めて報酬になったりするのです。


現実も知らない役人が、自分の好き嫌いを誤魔化すための方便として使う「会社だったら」などと言う台詞は、「片腹痛いわ!この、おおたわけの身の程知らずが!」と言わざるをえません。身の程をわきまえた発言をしないと、役人全体が国民を敵に回すことになりかねません。


田中氏は、長野県民の総意で選ばれた「新知事」です。どうか、県民の期待に応えるべく、ご活躍を期待しております。


追記:このエッセイを書き上げた後の30日(月)の朝刊に、藤井局長の謝罪会見の様子が報じられていた。ちょっとクレームが入ったら、態度を翻し謝罪する・・・・・なんじゃそりゃあ?良い年したオッサンが、TVカメラの前で見せた行為に「信念と覚悟」が無かったのか???逆に「信念も覚悟」も無いのなら、粋がるんじゃないよ!男として最悪じゃ~~~!
 

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