Essay 78 崩壊の先にあるもの

私の住む街の「建設業界」が、揺れていると言う噂を聞いた。少し前に発覚した談合事件を皮切りに、どうも業界を取り巻く状況が悪化しているらしい。公共工事の発注が激減してることも然ることながら、地元信用金庫が他の信用金庫を吸収すると言う事体が重なったことも、大きく影響しているらしい。


実は、この辺りの事情をよく知らなかったのだ。なぜなら、建設会社から図面を書く仕事を貰うようなお付き合いも無いし、公共工事の指名にも参加していない。ましてや銀行など、全然縁が無いから。


正直言って、談合問題が発覚して会社の経営が悪化するような会社なら、いっそ綺麗サッパリ無くなってしまえば良いのにと言う、極端な考え方も持っていた。信用金庫が、どういう経営をしようが、私には関係が無いとも思っていた。ところが、よく考えると困ったことや、おかしなことに気が付いたのだ。


まず最初にお断りしておくが、私は断じて「談合」反対者である。この事は大前提である。だから談合など止め、正しい競争入札を行うべきであると信じているのだが、時代は正義だけでは動かないほど、腐ってしまっているのも事実のようだ。


地域によっても多少の違いはあるようだが、公共工事の入札に参加できる会社は、必ず前年度の売上が「黒字」の会社であることが前提だそうだ。そして、その売上金額によって、いくつかのランクに分けられ「●■建設は大きな会社だから、○億円以上の工事には参加できます。だけど△△工務店は、小さな会社だから、一つ下のランクの工事に参加して下さい」とランク分けされるらしい。


となると、どうなる???当然、見栄とプライドの建設業界。実質利益も無いくせに、決算の時期になると、さも売上が有ったように、決算書を飾り付けるのである。そうすれば、来年も同じクラスに入っていられるしメンツも保てる。でも、その分無い懐から税金を払う羽目になる。勿論、そんな金は無いから、銀行から金を借りてくる。当然、銀行にも利子を払わなければならない。だが、そんな金がどこにある?


仕事が無い。だから談合してでも仕事が欲しい。完全に、転がり落ちる図式以外の、何者でも無い。


中には見栄もプライドも捨て、「粉飾決算」を止め、正しい会社経営に目覚める建設会社のオーナーもいるらしいのだが、残念ながら、このオーナーの頼みの綱の金融機関がバッサリと切り捨てる。なぜって、去年の決算書は「2億円の黒字」と書いてあったのに(勿論、嘘で塗り固めた)、今年の決算書は「2億の赤字」と書いて有れば、「あんな危ない会社には、金は貸せないよ~」と言うことになる。完全に八方塞り・・・・・。


その結果、仮に建設会社が次々と倒産し始めたらどうなる?下請け・孫受けの職人さんたちも仕事を失うし、地域で一番大きな金額を動かす「建設」と言う業界自体が死ぬことになる。となると、地域の活性化の推進力も落ちる。余計に、街が寂れていくのでは?


もし、そうならなくても「住宅」を建てたいと考えた人は、どうすれば良い?残っているのは公共事業に関係の無い「住宅メーカー」と、国に顔の利く「大手ゼネコン」だけ。(顔が利かねぇとは言わせねぇぞ~!)街場の住宅市場は「住宅メーカー」の独断場か~?それって独占市場って事?


余談だけど一言。「信用金庫」って地元に密着し、地域の活性化に貢献することが理念と趣旨なんじゃないの?もともと、商店街の「信用組合」が発展したのが、信用金庫でしょ?いつのまにか「地元の人に背を向け、国や利益ばかりを見ている様は、情けないんとちゃうんか?」


これは、一部の地域の話ではないと思う。今は、どの業界でもそうだけど、「変革の時代」なんですよねぇ。それに早く気付き「悪しき風習」から抜け出した者だけが、苦しみながら新しい方向を見つけられるのだと思います。ひょっとすると、その先駆者たちは異端児として、冷遇されるかもしれません。でも、それでも良いじゃないですか?


必ず来るであろう、崩壊の先にある光明を見られる人と言うのは、いつの時代でも冷遇される物なのですから。


私も「ニュータイプ」に覚醒しなければ・・・若しくは、「強化人間」に。
※文中に、「ニュータイプ」あるいは「強化人間」の文字がありますが、本文は「機動戦士ガンダム」とは一切関係が有りません。

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