Essay 117 雨水利用の話

桜の花も散り始める頃になると、もう梅雨も直ぐそこまでやって来ています。またこの梅雨と言う時期が嫌われる時期ですよね。濡れた傘を持って乗り込む満員電車は最悪だし、洗濯物は乾かないしと、まったく良い事が無いのが梅雨なんですけど農家の方にとってだけは貴重な雨なのでしょうね。


ところが、この雨を心待ちにしているのは、農家の方だけでは有りません。それは誰かと言えば、雨水を再利用している「雨水利用者」の方々なのです。


一口に「雨水利用」と言っても、皆さんピンと来ないと思いますが、雨水を蓄え再利用している方は全国に沢山いらっしゃいます。住宅は勿論の事、市庁舎、老人ホーム、学校、事務所ビル、体育施設などと言うように、雨水を有効利用している建物も様々あります。有名なところでは「両国国技館」なんて言うのもそうですね。


もともと雨水利用と言うのは、降り注いでは川や海に流していた豊富な水資源を、有効に利用したいと考えた事から始まりました。だって、庭木に水を撒いたり車を洗うのに水道の水で無ければいけないって言う事自体がおかしな事で、雨水で充分なんです。もっと言えばトイレの排水だって雨水でOKです。


外国の話を例に挙げても仕方ないかもしれませんが、アフリカのボツワナでは、お金の単位は雨を意味する「プラ」と言う言葉が使われているぐらい大切に雨水が使われていますし、シンガポール空港では滑走路に降った雨をトイレに利用しています。ビールで有名なドイツでは天然水を大切にする事から、雨水をなるべく地中に浸透させるように国が力を入れていますし、デンマークやオランダでも同じような政策が取られています。日本だって「天然水」が沢山売られているでしょ?元を正せば雨水ですよね?


話が反れてしまいましたが、「雨水を家庭で貯めて飲みましょう!」なんて無茶な事は言いませんが、ちょっとした工夫で簡単に再利用が出来る事だけは知っておかれても損は無いと思います。


例えばトイレの排水としての利用。細かい数字を説明する事は割愛しますが、4人家族の家の場合、トイレの排水だけで1日におおよそ800リットルの水が使われる計算になりますが、この量って計算上では雨水だけで賄えちゃう計算になるんです。ちなみに800リットルって言えば、ドラム缶4本分なんですよ~。


勿論、この計算は地域やその年の年間降水量によっても変化しますし、雨水を貯めておく貯水タンクの大きさによっても変わってきます。だから「計算上は」と言うことなんですが、それでもまったく出鱈目な数字では有りません。


設備だって至って簡単!雨樋の下に、チョットだけ加工したドラム缶を設け、その中に雨を貯めポンプで送り出すだけ。雨水の蓄えが無くなったら水道水を使えば良い。ドラム缶だって200リットルは貯められますからね。こんな程度の設備なら10万から20万円ほどの金額で賄えちゃうと思います。ねっ!チョット良いでしょ?


じゃあ良い事ばかりの手間要らずかと言えば、そうは問屋が卸さない。大体、楽して美味しい所だけ持って行こうとしても御天道様が許さない!(雨水だけに御天道様が・・・・・ここ笑うところなんですけど)


どこに手間が掛かるかと言えば、まず雨を貯めるタンクの管理。降り始めの雨水と言うのは泥や埃と言った物を含んでいるので、これを使いたくない。貯めて捨てるか、最初から取り除く工夫をしなければ成らない。つまり定期的に掃除が必要と言う事。

また貯めていた雨水が無くなったら、水道水を使わなければ成らないから、雨水の残存量のチェックや水道との切り替えを行う必要もある。つまり多少は子守りが必要と言う事。これ全て、機械や工夫で対応できない事は無いですが、費用が掛かると言うことだけはお忘れなく。何でも楽しようと思ったら、費用がかかるって事です。


最近では「環境共生住宅」だとか「循環型社会」だとか、偉そうなお題目を耳にする事が多いですが、本当の意味での循環とか共生と言うのは「地球と共に」と言うことなのだと思います。だから「雨水利用」と言う物も経済効果だけを考えるのでは無く、もう少し純粋な部分にも触れないと、きっと「管理が面倒だから止めた」なんて事になりかねないかもしれません。


ただし「太陽熱利用」や「風力発電」、そして今回取り上げた「雨水利用」にしても、決して悪い事では無い事だけは確かです。出来れば個々の建物だけが、こんな考え方を取り入れるのでは無く、街全体が「地球と共に」と言う考え方を大切にすれば、もっと住みやすい街になるかもしれませんね。


ちなみに金融公庫は雨水利用に関しての割増融資も受けられますし、自治体によっては補助金を出すところまで有るようです。ご参考までに・・・。


♪あめあめふれふれ かあさんが じゃのめで おむかえ うれしいな ぴちぴちゃぷちゃぷらんらんらん♪


子供は、雨も水溜りも、そしてお母さんも好きなんですよね。じゃあ!

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