Essay 135 捨てコンだって大事だよ!

住宅を建てるときに「基礎が大事」と言われることは、皆さんもご存知でしょう。それに何で大事なのかも、今更説明する必要が無いと思いますので、今回は私が見た「ん?」と言う経験談を2つほど、ご紹介しましょう。


■その1
ある住宅の工事中に、「基礎の配筋チェック」に行きました。住宅の規模は35坪ほどの、この辺りではごく普通の広さの木造2階建て住宅。基礎はベタ基礎とし、配筋に特に気をつけるように、図面に指示してありました。


「こんちわ~、おっ!綺麗に出来てますねぇ。チョッと見せて下さいね」と言いながら、綺麗に整列した鉄筋を見ながら、何かが足りない違和感を感じました。足元には縦横に敷かれた鉄筋、鉄筋の下にはサイコロ、その下には防湿シート、そして土が見えています。・・・あれ???土?なんで土が見えてるの?
捨てコンは何処?


「ねえねえ、これなんか変じゃない?捨てコンはどうしちゃったの?」と尋ねると
「何言ってんだ~、今日日捨てコンなんか打たねぇよ」と来た。あはは、参ったねどうも。
「あのね、そんな事言ってるからダメなんだよ~。<捨てコン打ってねっ!>て図面にも書いて有るし、見積もりにも入ってるでしょ?大体、捨てコンが無かったら、鉄筋の正しい被りが取れないじゃない~。
それにピッチだって適当になっちゃうでしょ~。」


散々すったもんだした挙句、結局鉄筋は全部バラしてやり直し~。予定より1週間ほど遅れたけど、チャンと直して貰ったと言うことがありました。


「捨てコン」と言うのは、呼んで字の如し「捨てるコンクリート」の事なのですが、基礎を作る前に、基礎が正しい形で作られるように、基礎の底を平らにするためのコンクリートの事です。厚さは5cm程度が平均で、鉄筋は入っていません(捨てコンですから)


もし皆さんのお家が工事中で、しかも基礎工事の最中だったら見に行って下さい。鉄筋の下に土が見えているようだったら、直ぐに設計者に連絡しましょう。もし、設計者が「そんな事は平気ですよ~」と笑顔で応えたとしたら、後はひたすら仏壇に拝みましょう!「どうぞ私の家が、まともに建ちますように」と。


■その2
これは相談を受けたケースです。
ある大手のメーカー住宅で新築中のことなのですが、基礎の立ち上がり部分の型枠を外したら、なぜかコンクリートがボロボロの状態だったそうです。酷い個所では鉄筋が見えているとの事。(この段階で、仕事が下手過ぎ!)
※ここで言う立ち上がりとは、床下換気孔が付いている所の事。
よく聞いてみたら、工期が無いからと言って「台風」の時にコンクリートを打っていたらしいのです。


施主が見て「これ大丈夫?」と監督さんに尋ねたところ、早速「モルタル」を塗って綺麗にしたとの事。
(ここで多くの設計者が倒れるか、笑い転げてる筈。私も呆れるのを通り越して笑ってしまいました)


コンクリートとモルタルは、全くの別物です。塗ってしまえば雰囲気は似てますが、とても家を支える基礎の一部には、絶対に!断じて!何が何でも代用品にはなりません!


そんなに酷い状況なら、全部壊してやり直さなければ駄目でしょう。その辺りの事を施主さんに伝えてあげたのですが、その後どうなったのかは音信普通です。


このように、施主が見て「あれ?」っと思ったら、直ぐに設計者に聞いてみて下さい。間違っていなければ安心出来るでしょうし、間違っていれば即対応してくれる筈です。(あくまでも筈ですが・・・)


設計図の中に書かれている事に、無駄な情報は何一つ有りませんし、やらなくても良い作業を指示する事もありません。反対に言えば、書いて有ることは全て大切な事が書かれていると言う事です。小さな事だからと言って、その工程を飛ばすようでは他の部分の工事も危険ですからね。ではまた。

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