Essay 162 暑くない家を考える.2

ハイ!1週間のご無沙汰です!と言っても「玉置宏」の挨拶では有りません。前回に続き“暑くない家を考える.2”と題して、今度は室内について考えてみたいと思います。


外部の考え方としては、「断熱」と「放熱」でした。放熱に関しては、素材特性だけで考えるのが難しかったので、「断熱」に限って考えてみたのですが、今回の「室内」に関しては「冷却」と「素材特性」と言うテーマで考えてみたいと思います。と言っても、簡単に言えば「風通りの良さ」と「熱を貯めない素材」と言う意味なのですけどね。


■まず最初に、部屋を細かく区切らない。
つまり個室を沢山設けない。中廊下などが必要な間取りになると、どうしても風の通りが悪くなってしまいます。従って、出来る限りワンルームに近い間取りが良いと思います。また、どうしても個室が生じてしまう場合には、外部に設ける窓ばかりでなく、他の部屋との風通りを工夫したいと思います。


例えば扉の上下を空けて風道を設けてみたり、壁も天井まで設けるのではなく、居室空間を認識できる高さで止めてみてはどうでしょう。例えば天井の高さが2.4mなら、壁は2mぐらいの高さで止めてしまいます。 その上部は、風が通れる道にすると言う事です。もしそれが嫌な場合は、窓や障子などで開閉可能にしておく手も有るかもしれませんね。そうすれば冬場の暖房にも対応しやすいでしょう。


■窓をキチンと考えよーう!。
大抵の方は「南側に大ききな窓を設けて、明るい部屋にして欲しい・・・」などと言われますが、これは明るさに関する要望だと思います。風の通りに関しては、いくら南側の窓だけを大きくしても、効果は薄いと思います。


水鉄砲の出口を指で抑えた状態で、いくらポンプを強く押しても水は出ないでしょ?つまりあれと同じ理屈で、風は入り口ばかりが大きく設けられても、出口が無ければ入ってこないのです。風のことを考えれば、その入り口と出口を設ける事を忘れてはいけません。それも出来れば同じ高さに設けるのではなく、少しでも高低差があるほうが、風の通り抜けは良いのです。

もう一つ言えば、風の道が狭ければ、入ってくる風は強い風が吹き抜けますし、風道が広ければ風は優しく流れてくれます。常識ですが、実際は忘れがちなので念の為。


■吹き抜けを設けよう
これ、チョット偏った考え方では有りますが、「暑さの軽減」と言う意味においては、充分効果があると思います。勿論、風の通り抜けに関して、1階から2階へと期待してのことなのですが、一つの部屋に設ける上下の窓よりも、家全体を考えた上下の窓の方が、風邪の抜けの良いことは確かでしょう。


■天井は低めに
上の「吹き抜けを設けよう」と言う内容と、矛盾しているように見えますが、実はそうでもないんです。吹き抜けは下から上へと風道を設け、キチンと「入り」と「出」を考えての事。ところが、ただ単純に天井を高くしただけの部屋は、窓から上の場所に熱が溜まってしまいます。


風が入り口から出口に向かう時、ご丁寧に上部に溜まった暖かい空気まで、運び出してくれるわけでは有りません。風が運び出してくれるのは、あくまでも風道にある熱だけです。ならば余分な熱を貯める高い空間は、熱の溜まり場にこそなれ、部屋を涼しくしてくれる効果は全く期待できないということ。ね!吹き抜けとは違うでしょ?


■縁側の復活
漫画「サザエさん」の家にも有りますが、縁側は良いですよね~。何が良いって、まず外部に関して全面的に開放できるのですから、家はほとんど外と同化します。さらに縁側と接する居室の部分を、障子や襖と言った稼動建具で開閉可能にすれば、理想的な環境になることでしょう。


■土間空間の復活を
土を叩いて固めた土間空間。屋内でありながら、屋外的要素を持つフレキシブルな場所。この土間空間を積極的に取り入れることが出来れば、家の有り方は大きく変わるかもしれません。土は夏に涼しく、冬に暖かい地熱を存分に伝えてくれる事でしょう。


■天然木・土・紙を積極的に内装材に使う
土や木の利用と言っただけで、何となく雰囲気が伝わりませんか? これらの素材は触感だけでなく、熱を貯め難く、伝え難いと言う特性を持っています。これらの素材を積極的に活用する事で、外気温に影響されることなく、室内の温度を一定に抑えられる効果を期待したいです。同時に土や木が持つ天然の色と言うのは、ペンキや壁紙で作られる華美な色彩とは、一線を引いた色だと思います。この色合いが精神的な落ち着きや、不快感を低減してくれる事でしょう。


反対にビニールクロスやポリ合板、コーティングされたフローリングの類は、極力使わないようにしましょう。これらは言ってみれば、サランラップと同じような物。 レンジでチン!する時には便利ですが、それだけ熱を逃がさない効果も有ると言うこと・・・・・・では?


■明度は低く
上でも書きましたが、室内の色使いは極端に明度の高い色は避けましょう。明度とは簡単に言えば「色の持つ明るさ」と考えても良いでしょう。 少し暗めの落ち着いた色でまとめると、暑さを感じ難いと言う事です。


「寒色系の色を使えば?」と言う意見もあるとは思いますが、それだと「夏場限定」の対応に成りがちなので、あえて「暖色・寒色」と考えずに、明度で考えてみました。


■照明器具は最低限に
照明器具が発する熱量と言うのは、意外に高い物です。昨今の住宅は、「これでもか!」と言うほど照明器具を設け、昼間のような明るさを求める傾向にありますが、こんな必要ないと思います。明るさが欲しい場所だけを、「ほんのり」と照らすぐらいで充分ですし、多少、影が生まれる程度の灯りの方が雰囲気も有るってもんです。その方がご主人も2枚目に見えるでしょうし、奥様もより美人に感じる事でしょう。


ついでに言えば、電気製品は極力使うのを止めましょう。家の中に有ると使いたくなるから、使わない物は全て処分!一掃して家もスッキリ!・・・・・なんて訳には行きませんかねぇ~。


■出来る限り室内に物を置かないようにしましょう
段々、無茶な話になってきたような気も?でもまぁ、最初に「冗談半分」とお断りしたので、多少のことは目を瞑って頂けると助かります。


例えば6帖の部屋を作ったとします。この部屋に箪笥二棹を置き、テーブル置いて、テレビを置いたとしましょう。この時の天井の高さが2.4mだったとすると、何も物を置かない時の室内容積は23.3立法メートルと成ります。ところが箪笥を二棹置いた途端に、20.0立方メートルと成ってしまいます。テレビから放熱される熱量が同じ場合、容積の少ない方が暑くなるのは必然です。 テレビと同様に照明器具や、その他の家電製品も同じ事が言えると思います。つまり、そう言うこと。


■換気扇の系統を注意しよう
今の住宅では、ほとんど有り得ないと思うのですが、念の為に書いておきます。それはお風呂とトイレの換気扇を、親子扇にしないと言う事。 親子扇とは、トイレの換気と浴室の換気を、同一の系統で外部へ放出するやり方。つまり親と子。


一昔前のマンションやアパート、中には建売住宅にも見受けられた換気扇方式ですが、この方式を採用すると、浴室の熱がトイレなどに逆流する事もありえます。それって嫌でしょ?


まだまだ有りそうですが、考え方としては極力開放的な空間を造る事と、風の通り抜けを正しく考える事。また、熱を溜め込んでしまう素材よりも、呼吸してくれるような材料を選択する事も、大切だと思います。そんなふうに自然の風による涼を心がけた上で、それでも、どーしても我慢できない時はエアコンを使いましょう。


別に家の中で「我慢大会」をする必要は有りませんし、そんなことを言うつもりも有りません。花粉症の方に「花粉の舞う時期でも窓を全開にして、部屋に風を・・・」等と言うつもりも有りませんし、病気がちで体力の無い人に「風だけで我慢したら?」等と言うつもりも毛頭有りません。ただ、少し暑くなったからエアコンを点ける、少し涼しくなったから暖房を点けるのは如何な物でしょうか?と言うことを、今一度考えたいと思ったまでです。 


今はボタン一つで快適な環境を作り出してくれる時代ですが、その「快適な環境」は、外部に、いえ地球全体にリスクを押し付けた上での「快適さ」だと言う事を、忘れてはいけないと思います。


軒先に吊るす風鈴の音で、凌げる程度の暑さも有ります。寝息を立てる我が子に、団扇で風を送る母の姿も良いじゃないですか。縁側で蚊取り線香を焚き、夕涼みをしながら冷たいビールを飲んだら美味しいでしょうし、許される環境なら蚊帳など吊って、窓を全開にして寝てみたいものです。


家を建てる時に、一度ぐらいは土地に立ち、「風はどっちから吹いてくるのかなぁ~?」とか「こっち側は高い建物が有るから西日が射さなくて良いや!」なんて事を、自分で確かめてみる事も大切だと思います。


外部の話の中では書きませんでしたが、「縁の下のある家」なんて言うのも、暑さを凌ぐには良い方法かもしれません。耐震性を考慮して、ベタ基礎を初めとする連続基礎全盛の時代ですが、考え方一つで家はいろんな形に変化します。


ダラダラと思いつくままに書きましたが、これらを闇雲に取り入れてもダメだと思います。予算やバランス、使い勝手や自分達の好みを上手に取り入れ、あるいは選択する事が大切です。要はバランス。


家を建てるとき、こうした考え方や理想を語り合えるのは、残念ながら「設計者」しか居ないと思います。設計者不在の家造りが大多数を占める昨今ですが、こんな話をしながら考える家が、本当の意味で『家を造る』と言う事なのなのだと思います。


立秋を過ぎても、まだまだ暑い毎日。 残暑お見舞いを兼ねた、今回のエッセイは一先ず終了します。

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