『神様の裏の顔』藤崎翔 著/読了 

誰からも慕われ尊敬される教師、坪井誠造氏が心不全で亡くなった。物語は、その坪井氏の葬儀の場面から始まる。大勢の弔問客が集まった通夜の会場は、弔問客の大部分が泣いている、いや号泣と言っても良いだろう。下は小学生の子供から、上は60歳をとうに過ぎた方までもが、その死を悼み悲しんでいる。その会場に集まった7人の人物が、それぞれ一人称の形で坪井誠造氏との関わりや、思い出を振り返る形で物語は進んでいく。そして各人に、ふとよぎる過去の不可思議な出来事。そしてそれぞれの過去の出来事が、ひっとすると坪井氏と何か関わりがあるのではないかと、疑惑が生まれる。それぞれが抱える小さな疑惑が、ふとしたきっかけで全員の疑念へと繋がっていく。神様のような善人だった人物には、ひょっとすると誰も知らないもう一つの裏の顔があったのだろうかと。第34回横溝正史賞受賞作―。

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展開も早いし、文体も読み易く、なるほど横溝正史賞受賞作です。物語の時間軸も通夜と通夜振舞いの、ほんの数時間の中での話。登場人物も少なくて、分かり難いなんてことも無い。また通夜の作法が分からずに、思わずクスッと笑えるシーンも多数あり、このまま映像にすることも簡単そうな気さえします。

が! 個人的には苦手な系統の作品でした。ミステリは作家が読み手を騙す作品なので、トリックやミスリードに知恵を絞って書かれています。本作も同じように、その工夫が盛り込まれ、最後の最後にどんでん返しが連なります。(←これ、最近のミステリ系文学賞応募作品の傾向らしいと、何処かで読みました) その意味では、綺麗に騙されました。本来ならば、騙されたことを喜ぶのが、ミステリ読みですが、この騙し方は好きではないです。フェアではないとは言いません。トリックにはアンフェアギリギリなんて作品はたくさんあるので、そんなことは気にしません。ただ好きか、好きじゃないかと聞かれれば、好きではないと言うだけの話。本とすれば面白かった。でもトリックは好きでは無かったということ。まっ、ミステリ読みと言うのは、そんなところを彼是言っている時が、一番楽しいのですけどね。

 

 

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