『パレートの誤算』柚月裕子著／読了

市役所の社会福祉課に勤務するケースワーカーが、生活保護受給者の住むアパートで焼死するという事件が起きた。その死を切っ掛けに、善良で面倒見の良いケースワーカーに、裏の顔が見え隠れし始める。生活保護受給者を巡る闇、そしてヤクザが生保受給者を囲い込む「貧困ビジネス」。その真っ只中に放り込まれた新人職員が、尊敬する上司の死の真相と、貧困ビジネスの闇に迫る—

超・面白かった！　生活保護と言えば、小田原市の「生活保護なめんなジャンパー」が有名だが、本作品に描かれた生保の実態や、支給日の生々しさはなかなかのもの。小田原市も、こんな感じで生活保護費を支給しているのかと、違う意味でも興味深く読んだ。またその背景に蠢く貧困ビジネスの実態に関しても、取材の深さに驚かされる。こんな現実があるのかどうかは定かではないが、きっとあるのだろう。そして小説と同様のトラブルはきっと実在すると思わせる、そんな怖さも覚えた。読み応えのある社会派ミステリでした。