Essay 173 シックリハウス

ゴールデンウィークの初日に当たる4月の最後の土曜日、新宿のOZONE(オゾン)と言う所で、シックハウスをテーマにした話をする機会を頂き、不慣れながらも拙い経験談を話してきました。


(この話は2003年5月に書いていた物に加筆修正したものです。古い話でゴメンなさい)


もっとも私の場合、シックハウスのオーソリティーでも無ければ、材料に関する絶対的な情報を持っている訳でも無い。つまり自分の体験談を話してきただけ(←素人同然)
ただしこのセミナー(と呼ぶのもおこがましいですが)の後に、幾つかのメディアに取材された事でも、その関心の高さを改めて感じました。また現在抱えているいくつかの計画の施主も、温度差こそあれ、大なり小なり「シックハウス」と言う言葉には敏感になっているのも感じます。
そこでセミナーの内容を振り返りながら、「あらためてシックハウス」を考えてみたいと思います。


 


2003年7月から「シックハウス法」と言う法律が、施行されたのはご存知ですか?
その中身はと言うと、「特定の化学物質を含む材料に面積的な使用制限を設ける。同時に24時間換気の設置を義務付け、室内の化学物質濃度を下げましょう」と言うものです。(凄く端折った説明ですが)


正直言って、その概要を聞いた時にはビックリしました!だって法律で、室内の空気中の成分まで、規制しようって事ですからねぇ~、凄いでしょ~。


笑ってると怒られちゃいますが、平たく言うと、そういうことなんです。
でもね「これで今日から安心して家が造れるわ」なんて思っちゃダメですよ。なぜって国が作った基準が「個人がシックハウス症候群にならない基準」とイコールでは無いでしょ?あくまでも国が「このぐらいなら良いかな~?」って線を引いた基準であって、「私にとって大丈夫な基準」じゃない訳ですから。正直に言えば「この基準で作ってますから大丈夫です!」なんて言う、免罪符にならないかの方が心配なぐらいです。


また住み手だってシックハウスと言う言葉だけに踊らされ、材料や工法の選定だけに目を奪われ、家の本質的な部分が蔑ろにされているような気がしてなりません。例えば、どんなに素晴らしい内装材を選択しても、その下地は?接着方法は?構造材は?防腐剤の有無は?施工者の考え方は?って突き詰めて行っちゃうと、完全にパーフェクトな建物って有るのかなぁ~って悩んじゃいます。

そりゃあ~有り余る資金を注ぎ込んで、世界中から絶対に間違いの無い材料だけを集めて造れば、造れないことは無いでしょうが、そんな建物が造れる筈も無く・・・。


「じゃあどうすんのさ?」と言うことになっちゃいますが、自分がセミナーで話したのは、「材料や工法の選択が先に有りきではなく、当たり前の家を当たり前に作ることが大前提」と言う内容でした。

結論として言えば(えっ!もう結論か?)絶対にシックハウスにならない家なんか存在しないと言う事。おわり・・・・・・ダメですか?結論早いですか?でも正直に言えば、これは真実だと思います。同様のニュアンスで言えば、地震で絶対に潰れない家なんか無いです!・・・は、同じだと思います。


そして大切なのは、「そう言う大前提に立った上での家のあり方・造り方」を考えることで、材料を吟味するのは、その後でも遅くないと言うこと。


だいたい『シックハウス症候群』『化学物質過敏症』を同じ物だと考えている方が居ますが、これ、全然別の物です。正確に言えばアレルギー反応の一つに「シックハウス症候群」があり、それらアレルギー症の全てを包括した総称が「化学物質過敏症」なんです。


そんな事も知らないのに、雑誌やメディアの受け売りで「シックハウスがゼロの家を建てたい!」とか言われても正直困っちゃいます。だって肝心のシックハウスが何かが分かってないんですから。


人によって【蕎麦アレルギー】とか、【花粉アレルギー】とか、いろんなアレルギーがありますよね?一説によれば、日本人の3人に1人がアレルギーを持っているとさえ言われています。「シックハウス症候群」は、その中の一つのアレルギー反応だということを、まず認識する必要があると思います。


これって当たり前の事みたいですが、結構大事なポイントだと思います。

今は住宅建材に「F☆☆☆☆」みたいなマークが付いています。このマークが付いている材料は、国が決めた化学物質の基準値以下の製品であると言う印です。だから、こう言う製品を目安に材料を探すのも一つの方法ですし、材料の成分表を見て、どんな物質がどのぐらい使われているのかを知る事だって出来るようになりました。


(余談ですが “F☆☆☆☆”の正式な呼び方は決まっていません、その程度なのよねぇ~>国交省 )


でもそれはあくまでも目安であり、決定的な要素では無いと思うのです。
最終的には自分自身の五感に頼ることも大切かもしれません。


いろいろと難しいことも沢山有りますが、そんなこんなを乗り越えて、シックハウスより、自分に合った・・・・そう、「シックリ来る家」、名付けて「シックリハウス」にしたいですよね。


「シックハウス」より「シックリハウス」、ダジャレみたいですが、これが一番正しいのかもしれませんよ。じゃあ、また!

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