『アイルランドの薔薇』 読了-31

長年の戦争状態から、ようやく和平交渉のテーブルに付けるかと言う、その大切な時期の南北アイルランド。その最も重要な時期に、北アイルランドの武装勢力NCFのメンバー三人は、重大な任務を帯び、南アイルランドの宿に宿泊する。そこは元NCFのメンバーだった男の、未亡人が経営する宿。 ところが、こともあろうにその宿で、NCFメンバーの内の一人が、何者かに殺されてしまう。敵地のど真ん中で警察を呼ぶわけにもいかず、宿泊客たちは孤立した状態で、犯人を捜すことを余儀なくされる。更に悪いことには、この宿泊客の中には、NCF幹部が依頼した超一流の暗殺者が紛れ込んでいたのだ。緊張と懐疑の錯綜する中、犯人の手掛かりさえ掴めない状況で、第二の事件が起こってしまう―

完全なクローズド・サークル物です。
犯人はNCFが送り込んだ暗殺者なのか、それとも別の誰かなのかと言う謎と、暗殺者は誰なのかと言う謎。そして3年前に起きた事件との繋がりと言った具合に、閉じた空間であるが故の謎が生まれ、事件は混沌とします。石持作品の特徴でもある探偵役ですが、今回も一般人が演じます。
しかもその探偵役は日本人。外国人が持つ日本人への不可思議なイメージが、捜査に役立っているところが面白い。

ミステリには、名探偵が登場する安心感と、登場しない安心感があると思います。石持作品は後者。
キャラが際立つ名探偵が登場すると、謎の深度よりも探偵の所作や行動が注目されてしまい、ともすると謎が浅くても成立してしまう場合がある。ところがシリーズ化された名探偵が登場しない作品だと、謎の深度が命となります。だから読者にとっては、そんな作品を手にすると「当たり外れが多い」と感じてしまうのでしょう。

その意味において、石持作品は、あまり外れと言う印象を受けた事が無い。そして、それは凄いことだと思います。本作も、とても面白かったです。(ツッコミ所は何箇所かありましたけどね/笑)

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