Essay 84 建築コンクール落選

どの都道府県でも行われていると思うのですが、私の住む神奈川県でも毎年1回、「県主催の建築コンクール」なるものが行われています。


これは過去1年以内に、県内に建てられた建物を「住宅」と「住宅以外」の2部門に分け、優秀な建物を表彰すると言うもの。


もっとも表彰されたからと言って、賞金が貰える訳でも無いし、次の日から仕事の依頼が山のように来ると言うことは、まったくありません。ちょっと、ナル系なイベントなんですよねぇ~こう言うのって。


私は、こう言うのがあまり好きではありませんでした。なぜって審査員に評価されるよりも、住む人に喜んで貰う事の方が大切だと思うし、それに完成した建物に対して「良い悪い」を評価することは誰にでも出来ること。その建物の外観や平面に決まった経緯を何も知らない人に、とやかく言われるのは、あまり気持ちの良いものでもありませんしね。


「何も知らないアンタらに、とやかく言われたくないんだよねよ~」と斜に構えていたのが、今までの私だったんですが、今年は訳有ってエントリーしてみたんです。


残念ながら結果は、予選を通過しませんでした。ノミネートしたのは6月だったのですが、つい先日、優秀賞に選ばれた建物を冊子にした物と、参加賞なるものが送られてきました。


さてさて、どんな建物が選ばれているのかと眺めてみると、う・・・ん、流石に豪華な建物ばかり。設計報酬も、さぞ貰っていると思われるような建物が並んでいます。(チョット羨ましいぞ)


負けん気だけは強い私のことですから、今までなら地団太踏んで悔しがるところなのですが、今回だけは少し違います。なぜって私がノミネートした建物は、所謂「設計監理」した建物ではなかったのです。建築の認可だけを取得する業務・・・・・俗に言う「建築条件付建物」と呼ばれる建物だったのです。


当然、作業に費やせる時間も、報酬も、書いた図面の枚数さえ僅かなものでした。それでも私に出来る限り、施主と打ち合わせを重ね、時間を費やし努力しました。キチンとしたコンセプトを作り、書けなかった図面を補うべく現場に足を運び、大工さんとも打ち合わせを重ねました。完成した家はなかなか素敵に仕上がり、施主の方にも喜んで頂けるものになりました。


建築のコンクールや雑誌などのメディアに載せる家というのは、往々にして豪邸や高額な予算の元に作られた建物が多いのも事実です。また、奇抜な発想や仕上がりからなり、一般の人には「私たちには関係ないわ~」と、言われかねない建物も多数見受けられます。


でも現実の「家事情」を見れば、そんな家を立てる人は極僅か。三角形の頂点側に近いような建物ばかりです。でも、そんな建物ばかりになって行くはずもありません。もっと普通の建物のレベルが少しでも上がるほうが、きっと「日本の家」のポテンシャルはあがっていく筈だと思ったのです。その為に、大げさに言えば「一石を投じる」ような気持ちだったのです。これは決して、優秀賞に選ばれなかった言い訳ではなく、私の今の正直な気持ちです。


来年もまた、応募してみようかと思っています。けして私の名誉のためではなく、純粋に「問題定義の一環」として。(本音は、チョットだけ悔しかった)
 

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