Essay 151 「広告」を探偵する(2)

「で、で6つ目の奴はですねぇ、<積算・見積もり>も、ただって書いてあるんすよ」
『はあ~?それ一体何の会社の広告だ? 住宅メーカーの広告だろ?見積もりするのなんか当たり前じゃんか?チョッと見せてみろ。うぅ・・・ん、(当社では全ての見積もりに正確な明細を付けております)だと?これってサービスなのか??? 当たり前の事だろ?』


「そうなんすか~?でも見積ってくれない会社だってあるって事じゃないですか? それに比べたら良心的っすよね?」
『お前みたいなタイプが引っかかるんだろうなぁ・・・』
「それどう言う意味っすか?」
『気にしなくて良いから、次読んでみろ』


「ええっと次は・・・<資金計画立案>って有りますよ。これなんすか?」
『なんだか聞くのが馬鹿馬鹿しくなって来たなぁ~。もう帰ってくんない?』
「そんな事言わないで、最後まで教えてくださいよ~」


『仕方ない・・・(この忙しいときに、ったくもう~) あのな、資金計画って言うのは、土地や建物を買うのに幾ら必要で、自己資金が幾ら有って、融資を何年ローンで借りたら月々の返済が幾らで、ボーナス時に幾ら必要と言うように返済額を計算する事を言うんだ。それが一番知りたいのは、買い手の施主じゃなくて売り手側の方なんだぞ』
「なんででっすか?」
『いくら欲しいと言っている客でも、買える資金力が有るか無いかを見極めないと営業できないだろ~。そんな計算をサービスと言ったら笑われるぞー。』


「へぇ~、そんなもんなんすか・・・。じゃあじゃあ次の<公庫申し込み手続き>って言うのはどうっすか?」
『よく読んでみろ。(公庫・年金の必要書類も意外と手間掛かりですが、充分ご協力します)と書いて有るだけじゃないか。いいか、住民票や給与明細、印鑑証明や残高証明などと言った必要書類は、大抵本人しか入手できない物ばかりなんだ。だから完全代行致しますとは言えないし、できっこないんだよ。だから、その辺りを“ご協力致します”と言う言葉でボヤかしているに過ぎないのさ。そんなのサービスでもなんでもないぜ』


「なるほどねぇ~、だんだん怪しくなってきましたねぇ~」
最初から怪しいっちゅうの!


「でも次のは凄そうですよー!だって<株主銀行要請>とか書いてありますもん。きっと銀行に凄い事を要請しちゃうんすよ~」
『(意味が解らん) 何を何処に要請するんだよ?それに、その注意書きおかしいだろ?(ローン返済に不安は無いが表向きの収入基準はチョッと・・・・・・もOK)って、“・・・・・”ってなんだよ!? 表向きの収入とか裏向きの収入とか有るのか? それって何処の国の話だぁ~? いいか、よく考えてみろ、その書き方からすると、“違法か、あるいはそれに限り無く近いことでも当社はやっちゃいますよ~”って書いてあるんだぞ。それも広告に堂々と・・・・・。それが本当のサービスだと思うか?』


「そんなに怒んなくたって良いじゃないですか~、俺が書いたわけじゃいのに・・・ブツブツブツ」
『解ったから最後のサービスを読めよ』


「はいはい、最後のは<登記手続>って書いてありますよ。“解体・新築時の登記手続もアドバイスします”ってね」
『その“アドバイス”って言葉、さっきも聞いた!あのな、登記の手続きって奴は土地家屋調査士と言う資格が無いと出来ないの!それもただでやるなんて事は絶対ありえない。だってその会社、建設業と設計事務所の資格しか無いじゃん。土地家屋調査会社って書いてないだろ? つまり別の土地家屋調査士に依頼する時に、この書類とかあの書類が必要ですよ・・・・って言うだけなんじゃないのか?』


「なるほどねぇ・・・、そうやって、よーく考えてみると、おかしな点や納得いかない事ばかりっすね。」
『そんな程度で良いんなら、俺だって書けるぜ』
「ホントっすか!じゃあじゃあ探偵長の<10の無料サービス>教えてくださいよー」
『ふん、10有るかどうかは解らないが、取りあえず挙げてみるか。まず・・・


1,敷地調査(土地を見て法的制限を調べる)
2,プランニング(1stのみだがな)
3,図面作成(ただし1stプランを書くことを指す)
4,資金計画立案(これは出来るぜ でもクライアントに限りだ)
5,公庫申し込み手続き・・・・の手伝い
6,登記手続・・・・の手伝い
7,適切な施工者探し
8,適切な工事価格のチェック
9,俺が入れたコーヒーサービス
10,愛のバラードを耳元で歌う


なんて感じだ。どーだー!』


「・・・・・真剣に聞いて損した --;」
『なんだとー!お前が聞きたいって言うから聞かせてやったのに、その言い草は無いだろ』
「だって幾らなんでも、コーヒーとか歌とかって、場末のカラオケボックスじゃあるまいし・・・」
『なにーーー!もう帰れ! ったくー。』

 

なぁ~んて感じの<10の無料サービス>だったのですが、これを読んで本当に“無料って素敵だわ~”と感じた方が何人居るでしょう? この広告の他の場所には、こんな事も書いて有ります。
「マイホーム作りの3つの成功条件とは、設計力・工法・品質」と。


でも、それほど大切な設計を無料でやっちゃうのは、おかしくないですか?また工法とは、
2×4以外は全然ダメとも書いて有ります。(在来工法は燃えやすく壊れ易いとハッキリ書いて有りますから)それと品質の但し書きには“相見積りなんか何社取っても意味が無い。だってうちが一番なんだもん”って書いて有るんですけど、それと品質とどう言う関係があるのか理解不能です。それよりも、フォーリーブスの“だって地球は丸いんだもん!”を思い出してしまったぐらいですから。


広告と言うのは、その会社の体質や体制を何気なく感じさせる物です。綺麗な写真や甘い宣伝文句だけに目を奪われるのではなく、その広告から感じる会社の雰囲気や小さな疑問点を見つけると良いでしょう。それらを踏まえた上で、その会社にお問い合わせしてみても遅くは無いですよね?


その時も貴方が見つけた小さな疑問を質問し、紳士的に対応してくれるかどうかも、今後の判断材料の一つになるかもしれませんからね。

それではまた。

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