Essay 153 解体作業を眺めながら

道路を隔てた目の前のアパート。外壁は薄い緑色をしたトタン張りだし、屋根だって黒いトタン。外壁から太さ10cm程の煙突が、部屋数だけニョキニョキッと立っています。そんなアパートが2棟、今まさに解体されている真っ最中です。


今はまだ室内を手で壊しているので、それほど煩くもありません。近頃では都会に限らず、住宅が密集して建っていることが多いので、大型機械で ガァーッ と壊す訳にも行かないのでしょう。見ていると、なかなか大変な作業です。


誤解の無いように言って置けば、私が暇を持て余し、窓からボーっと眺めている訳ではありません。何か古材として使えるものは無いかなぁ~と、睨んでいる訳で、それはまさに獲物を狙うハンターの目・・・・・全然違うって!


最近は「ローコスト住宅」と言う言葉が、流行語のように使われていますが、その反面、古材を扱う店と言うものをトンと見かけなくなってしまいました。一昔前なら中古の扉・流し台・便器と言った物から、照明器具の傘まで扱う店が有りましたが、最近はど~も、その手の使い回しをしなくなったようですね。


つまり今の「ローコスト」と言うのは、あくまでも新品の材料で、安価な工法・素材を使ったものを指し、決して古材あるいは中古材を用いず、かつ施主の手作業は一切含まないものを指す・・・・・とまで言ったら言い過ぎでしょうか?でも当たらずとも遠からずだと思うのですが。

まぁ、「ローコスト住宅」と言う言葉を発信する側が、どんな立場に立っているのかに拠って、その意味合いは、かなり違うとは思うのですけどね(詳しくは言いませんが)


先日あるリサイクル・ショップの店先に、流し台や浴槽・便器などが並んでいるのを見つけ、慌てて戻って見た事があるのですが、実に値段の設定がムチャクチャで呆れてしまいました。I型キッチンL-2550が18万円強。便器が6万円、その値段じゃあ~買う人は居ないって!
建築のことに疎い方が、中古建築材料を扱うと、こう言う値段になってしまうのでしょうねぇ。


ちなみに同サイズのキッチンは、新品で35万前後、便器なら7~8万円で購入できる筈。それなのに誰が好き好んで、そんな高い中古を買うと思っているのか甚だ疑問です。


話が反れてしまいましたが、建物の解体の方法や解体した材料の処分と言うのは、リサイクルと大いに関係しています。木造住宅に限っても、そこに使われている材料は、木・アルミ・鉄・コンクリートと多種多様。その材料一つ一つを分別処分し、再利用出来れば良いのですが、現実にはなかなか大変な作業です。まして、断熱材のような物まで加われば、丁寧に分別するのは至難の技でしょう。当然、解体費用に影響する。その費用は依頼者の負担です。なかなか理想通りには行かないみたいですねぇ~。


余談ですが、設計事務所には、いろいろな建築材料のカタログや見本が必要な時があります。そんな時はメーカーにお願いして頂戴するのですが、困るのは要らなくなった時の処分なんです。


例えば浴室に貼るタイルの見本が必要になり、メーカーに現物見本を依頼すると、数枚から数十枚のタイルが届きます。ガラスのカットサンプル然り、屋根材や鉄板なども同じです。ところが用が終わり、処分しようと思った時に捨てる訳には行かないんです。だってこれ「産業廃棄物」扱いなんです。


以前、30cm角タイル10枚ほどをゴミ捨て場に持ち込んだ所、叱られた経験があります。仕方ないので、近くの産廃処分場に捨てて来ましたけどね。なんとか、リサイクル出来ないのかなぁ~と考えちゃいました。


建物を造る時に、リサイクルまで視野に入れて造るか、あるいは解体時の手間を重々認識しておくか。いずれにしても、そう言う知恵や工夫さえもが、必要な時代なのでしょうねぇ・・・。


などと考えているうちに、アパートは鉄骨の外階段を解体し始めています。
解体屋さん、雨の中お疲れ様です。
 

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