Essay 156 続・キッチン考

前回のエッセイでキッチンの話に触れたところ、エッセイ書き始めて以来と言うほどの沢山の感想を頂き、本当にありがとうございました!(と言っても13通ほどですが、この数は凄い事です)


内容としては独立キッチンに賛成する、あるいはご自宅を独立キッチンにして良かったと言う「独立キッチン派」の方のご意見が9通。反対にオープンキッチンは楽しい、あるいはオープンキッチンで料理をするのが夢だったと語る「オープンキッチン派」の方が4通と言う内容で、それぞれのエピソードや思い入れを読ませていただき、楽しかったり反省したり、はたまた耳が痛かったりでした。


チョット意外だったのは、前回のエッセイの趣旨が「流し台も既製品など止めて、作ってみてはどうでしょう?」と言う内容で書いたつもりだったのに、台所の形態論になってしまったこと
んんん・・・まだまだ物を書くレベルとしては、随分低いのね?と、大いに反省です。


頂戴した感想の中で、耳が痛かったご意見に「オープンキッチンは建築家の功罪では?」と言うものがありました。その方曰く、「料理を作ると言う事は決して綺麗な作業ばかりではなく、食材や調味料があれこれと並べられ、煙が出、匂いが充満するものであり、オープンなキッチンでは気になって満足良く調理が出来ない」との事。なるほど、お説ごもっとも。


どんな世界でも同じですが、物を作っている過程と言うのは、決して出来上がった状態からは想像も出来ないような様子を呈しているものです。料理の最中なら、散らかった食材や炒めかけのフライパン、並んだ調味料、大小さまざまな食器類などなど・・・。何処をどう見ても、決して理路整然としている様ではないと思います。その他にも煙や匂い。それらは楽しくも有りますが、同時に生々しくもあります。ですから、そんな場面を他人様にお見せしたくないし、部屋中に秋刀魚の煙が充満するのなんか真っ平ゴメン!と言うことなのでしょう。


でも、そんな事は百も承知で、それでも「オープンキッチン」を望まれる方の気持ちもよく解ります。お子さんがある程度大きくなると、パートを含めてフルタイムで働きに出る女性も少なくありません。夕方まで外で仕事をして、帰りにスーパーでちょっと買い物。バタバタと家に戻れば、もう夕飯時!TVを見ている子供達と禄に話す事も出来ず、一人キッチンに閉じ篭り、グツグツと鍋掻き回すのは、やっぱり寂しいのでは?・・・と思うのは私だけ?


そんなチョットした時間も大切にしたいと、キッチンをドーンと表に出し、「こらこらお前達、今日の勉強はええのんか?」などと言いながら、子供達と触れ合う事も大切にしたいと考えるのは至極当然。大切なのは、そのご家庭で「食事を作る」あるいは「食事を食べる」と言う事が、どんな位置付けになっているかと言う事ではないでしょうか?それを踏まえての台所の形だと思うのです。


外国映画のように七面鳥を丸ごとオーブンに放り込み、寸胴鍋でグツグツとシチューを煮込むような料理を一人黙々とこなす日常なのか、それとも作ると言う事と、その他の事を同時に楽しみたいと考えるのか? 勿論、家族構成や主婦のお勤めと言った、様々な要素が絡んだ上での話です。その辺りの基本的条件が同じで無い限り、どちらが良い悪いとは言えないと思います。あるのはただ、そのご家庭の希望と事情だけ。


とまぁ、ここで話を終わらせては、オープンキッチンの時の匂いや煙に関する問題が、有耶無耶になってしまいますので少しだけ補足です。


独立キッチンの場合も同じですが、煙や匂いに対する配慮で、大切な事の一つに「室内外の圧力に気をつける」と言う事が有ると思います。


例えば風の強い日に、玄関の扉を開けようとして、勢い良く引っ張られるように開いてしまった経験がありませんか?反対にトイレの扉を閉めようとした時、バタン!と勢い良く閉まってビックリした事は? これ全て室内外の圧力差のせいなんです。


「いくら密閉性が良くなったと言っても、家の中と外とで、そんなに圧力が違う筈が無い」と仰る貴方!実はそうでも無いんですよ。最近ではアルミサッシュの水密・気密性能が、かなり優れているんです。また外壁には防水紙と称する紙が、隙間無く張られているし、壁体内部にはガラス繊維などで出来た断熱材もビッシリ詰められています。(勿論、床も天井も)


そんな中で家事をした時に、レンジの上の換気扇を回しても、煙や匂いは吸い出されないのです。換気扇の力を最大限に活用したい場合は、排出する空気の量と同じだけの空気を、何処からか引き込まないとダメ!これが所謂給気口ですね。でも皆さんのお家にある給気口を見て貰っても解るように、給気口って意外と小さい物なんです。それでは排出したい煙の量と、同じだけの空気を引き込む事は出来ません。ですから、これを解消できれば、料理の煙や匂いを解消できるって言う訳。


余談ですが空気を取り入れる量が少ないまま、高性能の換気扇をガンガン回すと、どうなると思います?答えはビックリするものなんです!(アトピーの方やVOCに過敏な方は要注意)


密閉性が高い家の中で、性能の高い換気扇を回すと、壁や床そして天井と言った場所に使用されている建材から、「ホルムアルデヒド」や「トルエン」、断熱材の「スチレンモノマー」や「防腐処理剤」などと言った物質を多量に含んだ空気が、一斉に室内に引っ張り出される事に成るんですよ。ですから室内の空気を入れ替えたい時、寒いから、あるいは暑いからと言う理由で、換気扇だけをガンガン回すのは間違いと言う事ですね。


「風が上手に通り抜ける家」と言うのは、こう言う意味に於いても、やっぱり大切なのだと思います。皆さんのお家では、風はどっちから吹いているのか?季節や時間に拠ってどうなのかを、確かめてみる事も大切ですねぇ~。


なんだか途中から、キッチンの話から外れてしまいました。失礼しました!ではでは。

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