『「生活保護なめんな」 ジャンパー事件から考える』読了

新年三冊目に読んだ本は、8年前に起きた小田原市役所職員の「生活保護なめんなジャンパー事件」に関する考察本。計10人の識者や寄稿者によって、当時何が起き、どんな経緯でジャンパー問題が生まれたのか、その本質や問題点、今後の課題を解いています。

上っ面の情報だけで判断すると「そりゃあ~ダメだよね」と、一面的な解釈を下してしまいますが、事の本質はそんなに簡単な話ではないことが分かります。問題が発覚した当時の私自身も「そりゃあダメだよね」と、判断していた側なので、反省も含めて読んでいました。

識者はケースワーカーの視点に問題が有り、ジャンパーを作ることに繋がった言う論調でした。たしかに生活保護を支給することで助かる命があるなら、多少の不正受給者が混ざっていたとしても、その方が良いという考え方もある意味では理解します。不正受給者の数は少ないのだから、生活保護者すべてをフィルターを掛けて見るのは良くないとも思います。

それでも現場の職員たちは、毎日怖い思い、辛い思いをしながら困窮者支援に知恵を絞り、対応していても、時には受給申請者から罵声を浴びたり、カッターナイフで切りつけられるという顛末が、けして健全な業務だとは思えないし、その日々が続くとなれば離職したいと考えても仕方がないと思います。

また庁舎内部からも生活保護を担当する課は、大切な税金を外へ配る仕事であり、納税を促す課のように税金を集める課に比べると、一段下に見られるという見えない圧力のような物さえあるとのこと。

これでは外も敵、内も敵と感じて孤立してしまいます。その孤立が課内だけの強い団結を生み、その屈折した団結が間違った方向に向かっても、仕方ないと感じました。

その結果、生活保護を不正受給する者すべて悪で、それを阻止する自分たちは正義と。立場が変わればこの心情に同調することは、十分理解できます。

また問題が露呈した後の市の対応は素早く、的を得た改善措置を講じていることに賛辞も書かれています。

どんな制度であっても必ず抜け穴があり、その抜け穴を探して悪用する輩が表れます。罰すべきはこの輩であり、真面目に取り組むケースワーカーでもなければ、生活困窮者でもありません。難しい問題だと、あらためて理解した一冊です。