初めて設計事務所の門をたたく日に、絶対に遣ってはダメなことがあります。もしそれをすると、たぶんあなたの家造りは失敗すると言っても良いでしょう。それは「自分で書いた間取り図を提示する」ことです。
今はフリーソフトを利用すれば、比較的簡単に間取り図を書くことが出来る時代です。勿論、そのソフトを使い、個人や家族で遊ぶのは良いと思いますが、それを設計事務所に持参して「こんな感じで」と、得意になって広げるのは止めましょう。
貴方にとっては上手に書けた間取り図かもしれません。思いの外、上手く書けた間取り図に、得意になる気持ちも分かります。専門家に見せて「どうだ」と、自慢したくなる気持ちも、理解できないこともありません。
でもそんなあなたの不用意な小さな自尊心は、これから貴方たち家族が一生暮らすであろう家を、台無しにしてしまいます。
まず前提として「設計事務所の門をたたく」と、示しています。設計事務所は設計することを生業とし、そのために勉強を続け、国家資格を得て、報酬をいただき、設計という仕事をしています。
また数ある設計事務所の中から、家の相談をしたいと思える設計事務所を探して訪問したのですよね? その建築士の設計力に期待し、依頼する前提で訪ねている筈ですよね。
仮にその場で依頼を決めなくても、依頼したいと考える内の一社、あるいは一人の建築家であることは間違いない筈です。そんな専門家に対して、御自身が書いた間取り図を見せて、どんな反応が欲しいのでしょうか。
「上手に書けていますね」と、褒めて欲しいのですか。それとも「これが私たちが考えている理想の家の間取りです」と、結論を提示しているのでしょうか。
優秀な建築家(設計事務所の意味ですよ)は、あなたの話が聞きたいのです。家族のことや仕事のこと、趣味や好きな服や色の好み。子供の頃に暮らした家の記憶や、健康の事といった話の中から、あなたの暮らしを想像し、イメージを膨らませていきます。そして土地の条件などを考慮して、あなたに合う理想の家を想い描きます。
普通の建築家や楽をしたい建築家は、貴方が書いた間取り図をキレイに清書し、若干の綻びを繕い、丁寧に着色して「ハイ! これが貴方の理想の家です」と、提示することでしょう。だってそれが楽だし、貴方が書いた間取り図なのですから、大きくは外れていないでしょうしね。
でも本当にそれで良いのですか? 貴方が支払う設計報酬とは、あなたの書いた間取り図を、清書しただけのものだとは思いませんか。もしどうしても自分が書いた間取り図を具現化したいのならば、設計事務所に行かずにハウスメーカーに行くことをお薦めします。無駄な設計料を支払うこともありませんし、なによりハウスメーカーは、喜んであなたの書いた間取り図を清書してくれるでしょう。
設計事務所を尋ねると言う事は、自分たちが想像もしなかった専門家の提案が欲しいと考えている筈です。そのためのイメージを膨らませられるのは、あなただけなのです。そして邪魔をしてしまうのも、あなた自身です。自分の家造りのパートナーを選ぶ際に、相手に何を求めているのかをよく理解した上で、行動することが大切なのです。