詩人・茨木のり子氏自身が感銘を覚えた詩を紹介し、感想などを付して分かりやすく説明されています。
紹介されている詩は5つのジャンルに分類されています。
生きることや人生に触れる「生まれて」
恋心を描いた「恋唄」
人生の苦悩や感慨を描く「生きるじたばた」
景色と心情の交錯を詠む「峠」
そして大切な人たちとの別れ「別れ」
本書が1979年の作品なので、その中で選定されている詩は、どれもみな古い作品ばかりなのですが、人の心の機微や感情には古いも新しいも無いと知ることが出来ます。たしかに言葉が古く、読むことに一瞬詰まることもありましたが、それでも琴線には触れます。

恋の詩にも惹かれるものはありましたが、たくさんの詩の中で心に残った作品は、石垣りん氏の『幻の花』でした。
著作権に触れるといけないので全文は記しませんが、庭に咲いた菊の花を見て時の移ろいを感じています。
今、目の前に咲いている花は、確かに今年の花なのだが、実は去年も、その前も同じように花は咲いていた。そして今年の花を、過去の花が連れ去っていく。私もいつか、誰かに手を引かれるのだろうと。
こういう詩って、歳を重ねないと詠めないし、共感できないと思います。
少しニュアンスは違いますが、某アイドル・グループの歌詞に、「花の無い櫻を見上げて、満開の日を思ったことがあったか」という一節があったことを思い出しました。
若い頃なら、きっと「花が咲いている」というところしか見なかったし、その感想しか抱かなかったと思います。ですが今なら、その花がいつか無くなることまで考えてしまう。それは想像力でもあり、経験でもあるのでしょう。
そんなふうに読めるようになったことは、歳を重ねたご褒美なのかもしれませんね。
安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。