Essay 9 マンションのガーデニングは命懸け

近頃は「ガーデニング」なるものが、流行っていますねぇ。庭に季節の花を植え、ウッド・デッキに木製のテーブルと椅子で、優雅にお茶を飲む。まるでイギリスのティータイムのようですね。街に花が溢れるのは、とても良いですね~。
雑誌でも、ガーデニングの特集をすると、良く売れると言います。そこで登場するのが「ガーデニング・コーディネーター」なる人物。一昔前の植木屋さんとは、ちょっと違い……やっぱり「カタカナ職業」って感じですねぇ~。花をメインに扱う仕事のせいかもしれませんが、女性が多いようです。工事現場に、女性が登場するのは嬉しい限りです。
 
ところが、確かに飾り付けのバランスや、配色にかけては上手なのでしょうが、ちょっと勘違いされている方もいらっしゃるようです。
 
先日、有る雑誌で「ガーデニング特集」を見つけて読んでいました。一戸建て住宅の庭なら、私も楽しく見ているところなのですが、この特集なんと!マンションのバルコニーを、ガーデニングで飾り付けると言うもの。
 
高層マンションのバルコニーに、レンガやブロックで花壇を作り、色取り取りの花を植え飾り付けると言う企画だったのです。おまけに隣の部屋との境には、ウッド・フェンスまで取り付ける始末(>,<)
いやはや、何をか言わんや……。
 
あんなのを見て「私もやってみよう!」なんて思ったらダメですよ!そこの奥さん!ああ言う事を堂々と、顔まで見せて自慢げにやっている人物は、無知・無教養、おまけにエゴイスト以外の何物でもないのですから。
 
何故って、だいたいマンションのバルコニーと言うものが、何の為に有るのかを理解していないでしょう?洗濯物を干すためや、日当たりを良くする為に有るなんて思ったら大間違いですよ。確かに、そう言う理由もありますが、本当は『命を守るため』なのです。
 
3階建て以上のマンションには、大抵バルコニーに緊急避難用のハッチが付いています。床に60cm程度の金属製の蓋が付いていませんか?それは、緊急避難用の梯子なのです。隣の部屋とバルコニーが繋がっているマンションの場合は、一つの階に一箇所ないし、二箇所付いています。大抵は角の部屋に付いている物なのです。
 
そしてバルコニーの隣との境の板は、足で蹴れば直ぐに破れてしまう程度の物で出来ています。つまり火事になって玄関から外へ逃げられない時、バルコニーの隣との壁を蹴破って、隣の部屋に逃げる事が可能にして有るのです。隣の部屋からも玄関に逃げられない時は、また隣へバルコニー沿いに移動する。
 
どうしてもダメな時、つまりどの家の玄関からも逃げられない時には、避難梯子を下ろし、下の階へ逃げるようになっているのです。(ご存知無いですか?)バルコニーには、そんな重要な役目があるのですよ。
 
「私の家のバルコニーだから…」なんて理由で、ブロックやレンガを使って花壇を造り、逃げ道を塞いでしまうようなことをすれば、その家の人だけではなく、隣近所の人達の逃げ道さえも塞いでしまうことになるのです。
 
分譲マンションと言っても、所有権は部屋の中だけに限られ、玄関扉の外側やバルコニーを改造(ガーデニングも過剰な物は改造でしょう)することは許されていません。(お手元の管理規約をお読み下さい)嘘だと思うのなら、試しに玄関扉の廊下側を、赤いペンキで塗って御覧なさい。今晩中に、管理会社からクレームの電話が入る筈ですから。
 
そんなことも知らないで、ガーデニングの言葉を免罪符のように使い、一戸建ての庭だろうと、マンションのバルコニーだろうと同じようなつもりで飾り付けるなんて、無知以外の何物でもないでしょう?それを「プロの仕事」として、雑誌に載せるなど笑止千万!もう少し勉強して、謙虚な気持ちで、仕事をして欲しいと思います。建物の設計やデザインをすると言うことは、人命を守ることでも有るのです。
 
それを生業にしているのなら、もう少し建築のことも知って欲しいですねぇ。お互いにきれいな街を造る、デザイナーなのですから。

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