Essay 54 一般解と特殊解

「建築家」と呼ばれる人が、一般の人から敬遠される理由の一つに、「判りにくい言葉を話す」と言う事があると思います。


建築家は難しい言葉を使って、相手を煙に巻こうとしている訳では無いのですが、知らず知らずに、英語交じりの言葉や、意味不明の言葉を話してしまう時が有ります。話している時でさえ、そんな状況だから文章にしたら、益々判りにくくなってしまう。結果として、「近寄りがたい人種」とか「私の家は頼めない」と、多くの方が引いてしまうようです。


それは高名な建築家であろうと、街場の「建築家に憧れる設計士さん」であろうと同じ事で、高名な建築家の場合は、本当に勉強しているから自然に専門用語が出てきてしまうし、「建築家」に憧れている設計士さんは、難しい言葉を並べる事で、自分を偉く見せようとしているのかもしれません。そんな必要無いのにね。


そんな言葉の中でも、「特殊解」と言う言葉は、建築家の間では、良く使われる言葉の一つです。(これ、私も使う時があるのですが)この言葉は、完全に「造語」ですけどね。


「普通と違っている」と言う意味の「特殊」と、「答え」と言う意味の解答の「解」を、くっ付けた言葉で、この反対の意味に当たるのが「一般解」だと思って下さい。


建築家が、この「特殊解」と言う言葉を使うのは、文字通り「住宅(建築)は、これ全て特殊解」だと思っているからです。地域・住み手・時代・費用と、何一つ取っても、この世に同じ物など二つはありません。その建築を「一般解」として考える事など、出来ないから「特殊解」と言う言葉を使うのです。


ハウスメーカー等が建てている住宅(建築)は、売れる事を前提としています。従って、マーケット・リサーチを重ね、多くの人が平均点を付ける建物を、研究している筈です。平均点を付けると言う事は、100点でなくても良いのです。10人のうち、9人までもが「まぁ~こんなもんかなぁ・・・?」と、感じれば良いのですから。所謂、スタンダードって奴です。


建築家は、そんなふうには考えません。つまり、住み手の個性や環境と言った諸条件を、売る為(商売として)に平均化して考える事は、しないと言う事です。


だからと言って「特殊解 = 変な形の家」と言う事でも有りません。


仮に100歩譲って、変な形の家だったとしましょう。でも、それの何処がいけないのでしょう?「家」を建てる場合、建築家の考えだけで、造られて行く物ではありません。当然、住み手と一緒に考えて行くのです。その結果、周りと少々形が違ったからと言って、それを「変な家」と決めてしまう事は出来ないと思います。

家とは、99人が「嫌だ」と言っても、住み手で有るただ一人が「これで良い」と感じる事が大切なのです。「家」とは、住み手ただ一人の為にあると言う事です。


間違わないで下さいね。家や家族には「標準的な」と言う言葉は無いのです。


100人いれば、100通りの生活があり、100通りの考え方が有るのです。「家なんて、所詮こんな程度」と諦めてしまう人は、生き方さえもが「そんな程度」なのです。


これが「特殊解」と「一般解」の言葉の意味ですし、「建築家」と「ハウスメーカー」との違いでも有ると思うのですが、あなたはどう考えますか?

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