Essay 68 品確法の話 1

最近よく耳にする「品確法」と言う法律。その正式名称は「住宅品質確保促進法」と言います。今回は簡単に、この法律のお話を書いてみます。なぜ簡単にかと言うと、細かく書くと100ページでも足りないから。


この品確法は大きく分けて、2つの骨格から成り立っています。1つは基本構造部分の瑕疵担保責任が10年になったということ。ただし、「基本構造部分」と言う言葉に注意して下さいね。何でもかんでも10年保証するという物ではありません。基本構造部分と言うのは、基礎や柱と言った基本的な骨組みの部分に当たるわけで、壁紙の剥がれやペンキが落ちたと言うようなことに関しての保証ではありません。


2つ目は建物の性能を、施主自身が決めて発注すると言う、いわゆる性能保証と呼ばれているシステムの確立です。ところが、この性能保証が大変難しい作業なのです。建物を9つの項目に分け、それぞれの性能を施主自身が決め、施工者に正しく作らせ、性能を確保すると言う内容なのです。では、どんな項目なのか?その大項目を下記に記してみましょう。

 


1,構造の安定
地震や風などの力が加わったときの建物全体の強さ


2,火災時の安全
火災の早期発見のしやすさや、建物の燃えにくさ


3,劣化の軽減
建物の劣化(木材の腐朽など)のしにくさ


4,維持管理への配慮
給排水管とガス管などの日頃の点検、清掃、補修のしやすさ


5,温熱環境
冷暖房時の省エネルギーの程度


6,空気環境
内装材のホルムアルデヒド放散量の少なさや換気装置


7,光・視環境
日照や最高を得るための開口部面積の多さ


8,音環境
居室のサッシなどの遮音性能


9,高齢者等への配慮
バリアフリーの程度

 

とまあ、こんな感じの骨子で成り立っています。この各々に1から4、あるいは5等級までの基準を設け、「私の家は”火災時の安全”に関しては2等級で、”劣化の軽減”に関しては1等級で良いわ~」てな具合に決め、その基準通りに作ってもらうと言うシステムです。どうです、素晴らしいでしょう、ここまでは。


では、なぜこの性能保証システムが、作られなければいけなかったのか?そして、それは本当に功を奏するのかを考えてみましょう。


まず、この法整備が進められた背景の一つには、欠陥住宅問題があることは異論は無いと思います。施工者の質によって、同じ金額なのに隣の家は正しく造られ、私の家は欠陥住宅・・・と言う現状を打破したかったのだと思います。そのための基準作りとして、素人である施主にも判りやすい基準を決めた。これは良しとしましょう。


そしてもう一つは、利益格差が生ずる「大手住宅メーカー」と「中小の工務店や大工さん」が造る家を、同じ土俵の上で戦わせたいという理由があったのだと思います。同じ性能を持つ家ならば、大手の住宅メーカーだろうと、小規模工務店が造る家だろうと同じはず。つまり「頑張れ!中小工務店!」と言う建設省からの応援の意味があったようなのです。ところが、残念ながらこの目論見は、かえって中小工務店の首を絞める結果になりそうな気 がしています。


それはなぜか?答は簡単!基準を難しく作りすぎてしまったから。私も品格法のセミナーに行って勉強してきたのですが、渡されたマニュアルは5cm以上も厚みのある物で、その内容もまた難しい。性能を保証してもらう審査期間への提出書類だって、ほとんどの大工さんは、自分では書けないと思います。ひょっとすると、不勉強な設計士でも頭を抱えることになりかねない始末。


それに引き替え、金に物を言わせるのが得意な大手メーカーはちょっと違う。こんな手続は朝飯前!それ専門の人間を確保すれば良いのですからね。下手すれば、オリジナルな性能保証までしかねない勢いです。


つまり大手の後押しをし、中小や大工さんの頭を叩いた結果になってしまったのです。建設省のお偉いさんが「これは完全な見込み違いだ!」と気づいたときには後の祭り。そんな感じだと思います。


ところが見込み違いは、大工さんの話だけでは無かったようです。そう!つまり施主にとっても、頭を抱える問題になるのでは?と、私は考えているのです。


それは、この「性能保証」と言うシステムが、あくまでも任意の制度であり、かつ施主自身が指定する性能を確保するという点にあると思います。早い話が、「自分が高性能を求めれば、それを作り上げる費用は自分で払います~」と言うことです。
ちょっと長くなったので、ここで一度休憩しましょう。続きはPART2で。。。

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