Essay 109 違反建築天国 日本!(1)

「欠陥住宅」や「違法建築」等と、建てる側の皆さんにとって、非常に嫌な言葉が横行している今日この頃ですが、実は日本と言う国は先進国と呼ばれる国の中でも、ダントツに「違反建築」が多い国だと思います。ひょっとすると、このエッセイを読んでいる方の中にも「違反建築オーナー」がいらっしゃるかもしれません?


それが「故意」なのか「知らずに」だったのかは兎も角、プロの目から見ると「違反建築」と言うのは、やたら目に付くのです。


そもそも「違反建築物」と言うのは「何に対して違反」なのかと言えば、建築基準法や都市計画法と言った建物や土地に対する法律に照らすと違反ですよと言うことなのですが、この法律自体「ザル法」と呼ばれる不可思議な法律ですからねぇ。


そこで今回考えてみたいのが「カーポート」。皆さんのお家にも有りませんか?これ違反建築である場合が多いのです。ご存知でしたか?大抵の人は知らないと思いますが、建築基準法に照らし合わせると「立派な違反建築物」に該当してしまう場合がが有るのです。もっとも、私も笑いながら書いているぐらいですから、性質が悪い訳でもありませんし、行政だって「見て見ぬ振り」をしている程度の物ですけどね。


まず建物の定義と言えば「柱や壁があり屋根がある」と言うことなのですが、カーポートには立派な柱も屋根も有るでしょう?駅のプラットホームと同じで、あれも建築物なのですから、当然これも建築物と判断できます。じゃあ、その構造的な安全や性能を「確認申請」で届けたかと言うと、誰もそんなことはしていないですよね?多分、全カーポート・オーナーの0.02%も、確認申請は提出していない筈です。


この材質はアルミ合金製が殆どですが、建物の安全を考える「構造的」な解釈から言うと、違反している場合があるのです。

写真は参考で、この物あるいは製作会社を
誹謗中傷するものでは有りません

注)写真は参考で、この物あるいは製作会社を
誹謗中傷するものでは有りません

皆さんの中に「防火地域とか準防火地域」と言う言葉を聞いた事がある方もいらっしゃると思いますが、この地域は「火事を出すと被害が大きくなりそうだから、他の地域以上に気をつけてね」と言う地域なのです。


当然、建物に使用される材料も燃え難い物を使う事が義務付けられていますが、こんな地域にも堂々とカーポートは建ってますよね。その上屋根は、燃えると一番厄介なポリカーボネート板やアクリル板です。厳密には、この地域で使うことが許されていない屋根材なんです。

もっとも建設省告示第101項により「準難燃材」としての指定を受けているものも有りますが、そんな事は殆ど施主には関係ない話です。
だって、お金払って工事して貰うものが、まさか法律的にいけないものだなんて誰も思わないでしょ?


と、口角に泡を飛ばして話すほど、深刻な物でもありませんけどね。それが証拠に、行政だって当然知っていますが「まあ、いいか?」とお目こぼしをしているぐらいですから。それに今更、日本中のカーポートを撤去できないですからね。そんなことしたら暴動が起きますよ、暴動が。


つまり「違反建築」と言っても様々で、その内容により判断されるべきなのですが、今は「言葉」だけが先行し「違反建築全て悪。施工者も設計者も同罪。市中引き回しの上・・・」なんて言う風潮になっていますが、その内容を正しく理解し判断しないと、自分が「市中引き回し」にされかねません。


「じゃあ、どうすりゃあ良いのよ?」と言われても困ります。法律を厳守するなら撤去するか、法律的に支障無い材料にするかでしょう。となると「既製品」を売っている会社は、そこら辺りの事を正しく説明する義務が生まれます。場合によっては「ご予算では適法なカーポートは作れませんし、許認可の必要も有ります」と。


もし、これからこのような物を設置したいとお考えの方がいらっしゃいましたら(特に防火・準防火地域で)施工者に「確認申請の必要は?」と聞いてみて下さい。きっと「ウム・・・グッグッ・・・」と、サザエさんがドーナツを喉に詰まらせたような声を出す筈ですから。


法律を厳守しようとすれば無理が出る場合も有ります。そして、知らず知らずのうちに守っていない場合も有るのです。「欠陥住宅」・「違法建築」と聞きたくも無い言葉が横行しますが、それはどんな事に対しても有効な「施主の免罪符」ではありません。

作っている側も「許容限度」・「受忍限度」と言った言葉で対向しているようですが、何が哀しくて大切なお客様と喧嘩をするのか。


そんな言葉を使う以前に、少しだけ「優しい気持ち」で応対できれば、あるいは作ることが出来れば、今言われている「欠陥住宅」の半分は無くなるかもしれません。こんな考え方は青臭いですか?


話が反れてしまいましたが、暗黙の了解で「是認」されている違反建築が、まだまだ沢山有るのですがその続きはまた次の機会に。(くれぐれも深刻に受け取らないように・^^;)ではでは。。。

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