Essay 132 住宅金融公庫の行く末

小泉総理大臣の人気は相変わらずで「選挙」でも、それが実証されたようですね。ところで小泉総理が唱えている「構造改革」って言葉の意味を正しく理解している方が、どれくらい居るのでしょう?その総理が、先に打ち出した「特殊法人の見直し」と言う政策の中に「住宅金融工を廃止し、今後は民間に、その業務を任す」とも取られる政策が打ち出されたことを、ご存知ですか?


その話をする前に「聖域無き構造改革」と言う言葉の意味を、考えてみることにします。実は私も、よく解らなかったので少し調べてみました。簡単に言うと、こう言うことらしいです。


今まで国が「構造改革」と言うと、規制を緩和する事でした。ところが近年では、どうも金融機関や大企業の不良債権処理に終始しているような感が否めません。つまり「供給する側」の問題を解決し供給力を増やす事が、結果的に需要を増加させると言う考え方になっているようなのです。


簡単に例を言えば「首都圏の空港問題」を解決し、バンバン旅行客を誘い、交通の便を良くする事でお金が落ちるだろう、と言う考え方です。まず供給側の対応が先と言う事です。この話だけでも詳しく書くとエッセイの2~3話分になってしまうので、この辺にしますが、な~んとなく解りますか?


さて、この「構造改革」の中に「特殊法人の見直し」と言うのが有ります。道路公団や都市整備公団と言った悪名高い・・・失礼!時々テレビでその名を聞くこの公団、実は特殊法人なんです。他にもこのような特殊法人があります。そして、その全てが大なり小なり問題を抱えていると言う訳。だから「問題が有るなら切っちゃおう!」って言う非常~に短絡的な発想が「特殊法人の見直し」なのです。


■都市基盤整備公団
■地域振興整備公団
■住宅金融公庫
■日本道路公団
■首都高速道路公団
■阪神高速道路公団
■本州四国連絡橋公団
■新東京国際空港公団
■関西国際空港株式会社
■JR各社
■帝都高速度交通営団
■日本鉄道建設公団
■水資源開発公団

大体、この住宅金融公庫(以下 住宅公庫と省略)が設立された経緯は、戦後日本の「持ち家制」に拍車をかける為の国策だった筈です。確かに現在では民間の金融機関も、こぞって「住宅ローン」に取り組んでいます。金利だけを見たら、民間の金融機関も住宅公庫と大差ないかもしれません。また、特殊法人の中でも飛び抜けて高い利子補給金の恩恵を受けているのかもしれません。


でも一部のメディアで言われているように「既に住宅は供給過多になっている」と言う点には疑問も感じますし、「無節操な融資を拡大している」と言う点にも疑問を感じます。


それでも100歩譲って、住宅公庫の存在に問題が多いとしても、公共の役には立っていると思いますし、それこそが民間の融資機関との差でも有ると思います。それは「性能基準の設置と評価」では無いでしょうか?


住宅公庫で融資を受けた事がある方なら既にご存知でしょうが、この融資を受けるには建物の一定以上の基準をクリアしなければなりません。基礎や柱・梁と言った骨組みを正しく作る事と、それを補う補強などが明確に指示されていますし、実際に立会いによる検査にも合格しなければなりません。この基準自体の良し悪しは別にしても、民間の金融機関で融資を受けても「建物を正しく造る事」に関しては一切関知していないのが実情です。


昨今、取り沙汰されている「性能評価」や設計監理者と契約を交わし、建物の質の向上に勤めようとする方は、まだまだ少ないのが実情です。そんな方でも住宅公庫の融資を利用すれば、最低限の基準だけはクリアされるのです。でも、これさえも無くしてしまうつもりでしょうか?その時に不具合を抱えた建物が乱立し、結果的に経済をジリ貧に追い込む事は無いのでしょうか?


残念ですが関係官庁の大臣や総理は、建設業界の末端の実情まではご存知無いのでしょう。経済政策の前には「庶民の悲劇」には目を瞑らねば成らないのかもしれません。同時に「住宅金融公庫」の存在価値を守ろうとする建設・不動産業界の方たちも、ただオロオロしているだけでは何の解決にもならないと思います。

もし、住宅金融公庫の存在価値を認めさせたいのならば、間違い無く「耐久性基準を満たした住宅に限る」と言った基準の確立と、その実践しかないと思います。この基準を上手に設定すれば街づくりや環境・景観保全にも、きっと有効になり豊かな都市造りが可能になると言う、ただ一点しかないと思います。


間違っても市民が適正な負担で住宅を取得出来るようにする言う理念だけで、税金を利用した「住宅公庫」の存在を訴える限り、その将来は無いでしょう。


小泉首相は「建築が好き」だと聞きました。都市が街が、そこに住む人が好きだとするのならば、財政面の事と同時に、街並みに目を向けるべきだと思います。「田園都市構想」までもを本当に考えていると言うのならば、ここ意外に、その構想への近道は無いと思います。

これから家を建てようと考えている皆さんにとって、深刻な、そして重要な時期を迎えようとしています。
 

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