Essay 141 放棄する親、忘れる子供

秋・・・、もう晩秋ですかね。秋と言えば運動会、遠足、お遊戯会に学習発表会と、子供たちにとっても大切なイベントが目白押しですね。そんなイベントに、花を添えるのはなんと言っても「お母さん」の作ってくれたお弁当ではないでしょうか。


海苔で巻いたおむすび、具にはおかか、昆布、梅干、鮭なんかが入っていて、おかずには厚焼き玉子やウィンナー、唐揚げやお漬物などなど。


運動会で走るのが得意な子も苦手な子も、親と一緒に食べるお弁当は嬉しかったものですよね。ところが近頃ではコンビニで買ったおむすびやおかずを、コンビニのビニール袋のまま、ぶら下げて来るお母さんが居ると言うから驚きました!飲み物までペットボトルのジュースだって言うじゃ有りませんか!確かに早起きしなくても良いし、そこそこ美味しいけど、ホントにそれで良いのかなぁ?と考えちゃいます。


家の中で家族が集まる場所と言えば、直ぐに【居間】と言われるかもしれませんが、でも本当に居間に集まってますか?私は家族が唯一集まる場所は「食事をする場所」だと思っています。


食事の時間だけは、家族揃って食べていませんか?今頃の季節なら、鍋なんかを皆でワイワイ言いながら突付いちゃって、なんか家族だなぁ~って事、無いですか?


と書いている私だって、そんな食卓の風景を毎晩見られる家族が、殆ど無い事ぐらいは承知しています。お父さんは毎日遅くまで残業で、お母さんはパートに出かけ、子供たちは今日は塾、明日は習字、明後日は野球の練習と、それぞれが忙しく皆バラバラですよね?


家族全員が顔を揃えるのって、休日ぐらいですよね?いや、今はそれも無理かもしれませんね。食べるのも別々、寝る時間さえも違い、全員が顔を合わせない日も度々。おまけに食卓に並ぶおかずは、コンビニや総菜屋で買ってきた品ばかり。決してその家の「お母さんの味」では無かったりもします。それじゃあ「家族」って何でしょう?ただ一つ屋根の下に寝起きする同居人なんでしょうか?外国で言えば、仲の良いルームメイト程度なのでしょうか?


最近、チョッと自分の中で変わって来ている事が有ります。それは今まで居間、つまりリビングと呼ばれていた場所と、食事をする場所を一つにした方が良いんじゃないかと言う事。これは今までの「リビング・ダイニング」と言う考え方ではなく、どちらかと言えば一昔前の「茶の間」的空間を指しています。食べる場所でくつろぐ。出来れば、家族それぞれ自分専用のお気に入りの椅子が有って、その椅子に座った空間は、パブリックの中のプライベート空間だったりして。


「対面キッチンで家族を見ながら」なんてケチな事言わないで、流し台自体をテーブルと合体させてみたらどうでしょう?で、そのテーブルが少し大きくなっていて、そこが家の中で一番居心地の良い場所になったとしたら、どうですか?


ただ残念な事に、それでも根本的な問題の解決では有りませんけどね。


「家」はただのハードでしか有りません。住む人の問題や障害を解決しようと、可能な限りのアイディアを盛り込み、手助けするように努力したハードなんです。でもハードだけじゃあダメですよね?どんなに素晴らしいゲーム機が有っても、本当に楽しいゲームソフトが無ければ、それはただの箱でしかありません。つまり宝の持ち腐れなんです。


今、ひょっとすると「家族」と言う形が悲鳴をあげているのかもしれません。どうしようもない迷宮に迷い込み、どうすれば現状から抜け出せるのかを、父・母・子供の立場で、そしてそれを包括する家族と言う形で、悩みながらもがいているのかもしれません。


私は知らない人が握った「おむすび」が食べられません。友達のお母さんが握ってくれた物でも、そのお母さんを知らないと食べる事が出来ないんです。


「おむすび」って握ってくれた人の想いが、とっても伝わる食べ物だと思います。せめて子供の思い出の行事に、お母さんの握ったおむすびを食べさせてあげて欲しいと思います。母が「母である事」を放棄しないでほしいし、子供の記憶の中から「お母さんのお弁当」が、消えないで欲しいと思っています。


複雑に絡み有ってしまった「家族の絆」を、ゆっくりと解きほぐす事って、そんな所からしか始められないと思うからです。


今回はあんまり建築的な話じゃなくて、ごめんなさい。もう少し建築的な話を書こうと思っているのですが、いろんな出来事を見たり聞いたりした性で、今回はまとまりの無い文章になってしまいました。本当の事を言えば、今週は休刊してしまおうかとも考えました。段々【自分らしさ】から離れて「読んで下さる方の期待するもの」に傾斜して行くのが怖いので。


一番迷っているのは誰でもなく、自分自身みたいですね。

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