Essay 155 キッチン考

住宅の設計をしていて、クライアントと(特に女性と)熱が入った打ち合わせになる場所の一つに、台所が有ります。よく「女性の城」等と言われ、家事を任される女性にとっては大変気になる場所ですから、熱が入るのは当たり前。もっとも「じゃあご主人の城は何処?」と思ったりもするのですが、それを口に出してはダメ~!奥様に顰蹙を買ってしまいますからね。


この台所ですが、簡単に言えば2つのタイプに分かれると思います。一つは食堂から離し、個室化するタイプ。つまり「独立キッチン」と呼ばれるタイプですね。そしてもう一つは「対面式」等に代表する、オープンに見せてしまうタイプだと思います。


☆独立キッチン-調理作業を機能的にし、効率的な収納を目指す食事を作る為の「コックピット」


☆オープンキッチン-作る・片付けると言う作業を、出来るだけ楽しめるように配慮した「プラットホーム」


どちらのタイプを選択するのかは、クライアントの好み・動線の流れ・生活時間・家族の人数など、様々な要素が絡むものだと思います。勿論どちらが良い悪いはありません。あくまでも好みの問題ですから。
ただ最近では、オープンキッチンが増えているような気がします。ある意味、時代の流れに沿った形と言えるのかもしれませんね。


ところがそんな時代の変化に伴った台所なのですが、キッチン(流し台本体)だけは従来どおりの既製品を欲しがるのは何故なのでしょう?確かに国内はもとより、近年ではお手軽に外国製の流し台を入手する事が可能になりました。それらは豪華な扉、洒落た天板、外国映画で見たようなブーツ型レンジフード。
どれも憧れの品で有る事はよく解りますが、でも所謂既製品ですよね?


台所の位置や配置も大切ですが、実際に調理作業をするのは流し台の上ですよね?その流し台こそが、使う人にとっては一番大切だと思うのですが、実際には使いにくい既製品に甘んじている事が多いのではないかと思います。


例えば背の低い女性、あるいは背の高い女性、座高が・・・・・これは置いといて、まぁ身長・体重・利き腕・使用頻度は十人十色です。家の形、造り、仕上げ等は個性を尊重したのに、どうしてキッチンは既成の物、つまり多少使い難いと感じながらも、それを使おうとするのでしょうか。


「でもキッチンを作ると高いんでしょ~?」と言われるかもしれませんが、本当はそんなことも無いと思うんです。何故かと言えば、私が考えるオーダーキッチンとは、使う人の使い勝手を尊重した製品の事を言っているのであって、決して華美な装飾を目的としたキッチンの事を言っている訳ではないからです。


既製品のキッチンは、ある意味で“至れり尽せり”に作られていますが、使い手によっては必要でない物も沢山付いているとも思います。吊戸棚然り、流し台下の収納然り、米びつから浄水器までEtc。
ホントに全部必要ですか?ひょっとしたら吊戸棚だって、要らない場合があると思うんです。

また流し台の理想的な高さも、いろいろな捕え方があるようです。例えば「へそ下10cm」とか「身長の半分」とか「身長の半分+5cm」と言うふうにね。でもどれも一般解であり、適切な高さは人それぞれです。


例えば私の場合「へそ下10cm」だと「100cm」となるし、「身長の半分」だと「92.5cm」です。さらに「身長の半分+5cm」で考えても「97.5cm」と言う結果になります。いづれにしても、そんな背の高いキッチンは有りません。国内で一番背の高いキッチンは、昇降式の物で
90cmが最高だったと思います。それでも私には低そうですよね。


他にも水槽の深さや広さ、水洗の位置や天板の奥行き、果ては流し台の長さまで今ではオーダーが可能です。素材だってオールステンレスで作るも良し、木の天板の中に水槽を埋め込むも良し、またタイルなどで作ってしまう流し台も良いかもしれません。


既製品の流し台の大きさに左右される事無く、使う方が本当に自分に合ったキッチンが設けられ、自分の思い通りに料理が出来る場所でこそ、本当の意味での「城」と呼べるのではないでしょうか。


これからお家を建てる方、あるいは流し台に不便を感じている方、一度キッチンのオーダーメイドも考えてみては如何でしょうか。

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