Essay 157 6月8日に思った事

今日も1日暑かった。こんな日は少しでも涼しさを感じたいと、窓を開け風を誘う。近くの小学校からは、カラ~ンコロ~ンと、昔懐かしいチャイムが聞こえる。なんだか平和で、のどかな鐘の音だ。そんな鐘の音を聞きながら、ボンヤリと外を眺めながら、ふと1年前の事件を思い出す。


1年前の今日、6月8日。大阪府の池田小学校で、生徒を含む23人が殺傷された、あの凄惨な事件があった日だ。事件後、各地・各メディアで「学校の安全性」や「精神病患者」に対する、様々な意見が飛び交っていた。精神病を患った人にとっては、「全てを一括り」にされる報道もあり、とっても辛かっただろうと思う。また教育機関にも、その安全性や配慮に対する、辛辣な意見も多かったと思う。あれから一年・・・・・・学校を取り巻く環境に、一体何が変わって、何が変わらなかったのだろう。


昔、小・中・高校の校舎の設計に携わった事がある。とは言っても、まだ小僧の時代だったから、階段やグランドの図面を書いただけで、全体の設計をしたわけじゃない。


学校の設計は、当然だが市や県と言う行政から発注されていた。で、どう言う手順で計画に入るかと言うと、行政の建築部(市役所や県庁にも建築部と言うのが有って、そこに居る誰かが担当者となり、建物ごとに一部始終を統括する事になる)から、入札あるいは特命で、設計業務を請け負った事務所の設計者が、打ち合わせに行くと「先日某所で完成した、この学校のように設計してくれ」と言うお手本を見せられる事になる。だから新しく作られる学校は、大抵何処かの学校に似ている・・・と言う訳。


今は必ずしも、そんな設計の仕方をしているとは思っていないが、まぁ学校の校舎と言うのは、大抵の場合、どれも似たりよったりではないだろうか。


小学校と言えども、2階建てあるいは3階建ての鉄筋コンクリート造。窓には銀色の縁を光らせたアルミサッシュが嵌められ、白っぽい外壁をして、普段は決して開く事の無い正門が付いている。それが悪いとは言わないけど、どうも通り一遍で均一化されて居るような気がしてならない。


自分が通っていた中学校は、木造の校舎だった。窓も木製の窓で、ねじ込み式の鍵が付いていた。古い校舎だったので、風が吹くと窓が揺れ、隙間風が入ってくる。横殴りの雨の日には、窓の隙間から雨が頬に当たる。廊下の壁も羽目板が貼られ、拳で殴って穴を空けた奴も居たっけ。(当然、先生にぶん殴られていた) 今にして思うと随分ボロい校舎だったけど、なんだか暖かで優しかったような気もする。


確かに冬は寒かったが、だるまストーブで凍死しない程度の暖は取れていた(笑) 反対に夏は、そよ風が心地良かったのを覚えている。蝉の声も煩さかったが、沢山の木が校舎に柔らかな影を落としてくれて、のどかだったのを覚えている。古い校舎だと文句ばかり言っていたが、今にして思えば、案外過ごし易かったのかもしれない。


今、そんな木造の校舎は、ほとんど見かけない。大抵はRCの画一化された校舎ばかり。少なくても私の回りではそうだ。だけどRCの建物と言うのは、夏が異常に暑い。でも学校と言う建物に、冷房設備は設けられないのが普通。まして外壁には「これでもか!」と言うぐらいに窓が付いている。薄いペラペラのカーテンだけで、夏の暑さを一体どれだけ防げるか、甚だ疑問だ。


だから夏になると、学校の窓と言う窓、ドアと言うドアは開け放たれる事になる。少しでも風を誘い、勉強にに集中できるようにと。


でもホントに出来る~?大人はエアコンで涼みながら、子供は黙って暑さに耐え、シッカリ学べってちょっと理不尽だよなぁ~? 自分が出来ない事は人に言わないで欲しいし、押し付けないで欲しいなぁ~。
そしていざ事が有ると、学校に不審者が入らないように閉ざし、管理チェックすると言う。これって完全に矛盾している。


別に学校を「冷暖房完備のホテルみたいにしろ」と考えている訳じゃない。でも面積から来る効率論や、建設コストのことばかりを優先させずに、「如何に勉強に適した環境を整えられるか?」とか「自然と、どう向き合うべきか?あるいは、どう取り込めば良いのか」みたいな事を、教科書で学ぶだけでなく、実体験として感じられる校舎なら良いのになぁ~と思う。


安全に対する配慮も、校舎と言うハードに監視カメラを付けるとか、校門を固く閉じ、見回りをして警戒すると言うような事だけではなくて、もっと違う考え方が出来ないものかと思う。


少子化傾向にある今、もっと柔らかな学校作りって出来るような気がするし、それが過去の事件から学ぶ、教訓の一つでも有ると思う。なんだか纏まらない文章になってしまったけど、ただ6月8日に、こんな事を思っていた。(なんだか日記みたいだ・・・面目無い)
 

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