Essay 181 二世代が五感で楽しむ浴室への誘い ~視覚で楽しむ その2~

前回の続きです。 

窓からの景色

 
 窓から見える景色にも関係が有りますが、緑の活用も大切です。湯船に浸かりながら鑑賞する緑は、それだけで贅沢な気分にさせてくれます。この緑は浴室の外に見える緑も有りますが、浴室内に置いた観葉植物や植木鉢の緑でも良いと思います。


 広さを演出する方法には、他にも鏡を利用した錯覚効果と言うのが考えられそうです。近頃は何処のメーカーでも、横に長い鏡のオプションが設けられています。あれはナルシストの方の為に設けられたオプションでもなければ、がまの油売り効果を狙った新手のダイエット方法の提案でもありません。大きな鏡を利用することで、浴室内を広く感じさせる錯覚の効果を狙っているのだと思います。鏡を利用した錯覚効果は、浴室意外にもいろいろな箇所で使われていますので、街に出掛けた時には注意して見ると良いでしょう。

窓からの景色2

 
それから錯覚と言う意味では、浴室と脱衣室に設ける間仕切壁を無くすことで、開放感を演出する方法もあります。このとき文字通り壁を無くしてしまう方法も可能ですが、その場合は脱衣室の仕上げに、防水性の高い材料を使う事が必要となります。しかもそれなりに広い空間が必要になると思うので、実際に壁を無くしてしまうと考えるよりも、ガラスを利用して間仕切壁が無いのと同じ効果を期待することの方が現実的かもしれません。


この場合、ガラスを利用することでの利点と、ガラスであるが故の危険を理解した上で、適切な利用方法を考慮する必要がありますので、十分ご注意を。他にもシャワーカーテンを利用し、日常は開けておき、広く見せると言う方法はあるかもしれませんね。


 浴室内を日常的に、片付けておくと言う事も大切なことだと思います。「くつろげる雰囲気」を演出するための視覚的演出を考えているのですから、浴室内にシャンプーや石鹸、浴室用の掃除用具などが乱雑に散らかっているようではいけません。どんなに建築的に配慮し、知恵と工夫で視覚的効果を演出しても、日々の生活の中で散らかした日用品の山の中では、残念ながら「のんびりとリラックスする入浴」など期待できませんからね。大変だと思いますが、ほんの少しの心掛けの問題ですから、棚や籠に収納できる物は収納し、常に片付いた浴室であるように心掛けたいものです。
 

 次に考えるのは浴室内の仕上げ材料や色のことです。仕上げ材料や色にもリラックス効果を生むものと、そうでないものがあります。 最近はあまり見かける事がなくなりましたが、以前は木の浴槽が使われている家もありました。価格やメンテナンスの大変さから、現在ではあまり見かけませんが、浴室の壁や天井に木材を利用する方法も良いと思います。これは木の持つ柔らかい感触と色合い、それにアロマテラピーの効果も得られるからです。


またタイルなどの素材を使うときには、色に気を使うと良いでしょう。例えばパステル系の淡い色を使うと、リラックス効果が得られると言われています。また寒色系の色(青や緑)を使えば心が落ち着き、暖色系(赤や橙色)の色に囲まれると、気持ちに高揚感が生まれます。気持ちが落ち込んでいる時や、元気の無い時などは、色から受ける精神的な効果もあるのです。浴室を考える時、好みの色を配色すると良いでしょう。ただし浴室は家族共用の場ですから、あまり個人の趣味に走りすぎると、他の人にとっては辛い浴室になる可能性もあるので、ご注意を。


 入浴剤などを利用し、香りや成分を楽しむ他に、お湯に色を付ける事でリラックス効果を生むこともあります。これも視覚的効果の一つだと思います。このとき浴槽本体の色が濃い色だと、淡い色の入浴剤は視覚的効果を期待できません。その際には白い色の入浴剤を使うと良いでしょう。
 

 さて、今までは視覚を使った方法を説明してきましたが、最後に「視覚を使わない方法」をご説明足したいと思います。それは文字通り、浴室の照明を暗くすると言う方法です。
リラックスするためにはリラックスできる照度、つまり適した明るさがあります。この照度に関しては浴室だけでなく、部屋ごとに適した照度があります。年齢的な視力の衰えと言った事柄も関係して、注意しなければならない事もありますが、ここでは浴室だけの話に限り進めたいと思います。


 個人的な意見を言えば、家庭の浴室に設置される照明は、明る過ぎるのではないかと思っています。一般的に言って、浴室の照明器具には60W程度の電球が用いられる事が多いようですが、実はこの照度では落ち着かないと言う人が多いそうです。以前読んだ本の中に、「20W程度の明かりに一番落ち着きを感じる」と言うアンケート結果が載っていたましたが、人は適度な暗さに、落ち着きと見えない安心感を覚える事があるのです。


イメージとてしては、「ひなびた温泉宿で、月明かりの中、のんびりと湯に浸かる」なんて感じではないかと思います。コンビニ宜しくと、なんでもかんでも煌々と照らし出し、「壁の隅っこに生えた小さなカビまでバッチリ見えちゃうぜー!」なんて言うのが、いつも何時でも良いとは限りません。暗さを楽しむのも、また一興なのではないかと思うのです。ただし明るさは、調整出来たほうが良いでしょう。年を取れば、若い方よりも視力が落ちるのは当然のこと。その時、明かりを調整できると、今度は「見える安心感」を感じるようになります。それに若い方でも、時には明るい浴室を好む日もあるかもしれませんからね。


 駆け足で説明してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、箇条書きにしてみますので再確認していただき、今からでも取り入れる事が可能な物は、お試しになられるのも良いかと思います。以上、五感の中の一つ、「視覚」を利用した浴室の楽しみ方でした。


・ 広さを考える(面積/高さ/容積)
・ 浴室の配置の仕方(中庭や塀の設置)
・ 窓(形状/高さ/見えるもの/見たいもの)
・ 浴室外の緑(自分の家の緑/借景としての緑)
・ 浴室内の緑(植木)
・ 鏡による錯覚(大きさ/形/設置の仕方)
・ 間仕切壁を工夫した錯覚(無くす/見せない/カーテン)
・ 室内の整理整頓(物を無くす/片付ける)
・ お湯の色(入浴剤/浴槽)
・ 内装材の色(壁/床/天井の素材と色)
・ 見せない(照度/配置)


次回は、「聴覚」を利用した浴室の楽しみ方の、お話をしたいと思います。
 

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