『黒死荘の殺人』 カーター・ディクスン著/読了

 
その昔、猛威を振るった黒死病の名を持つ館・黒死荘。幽霊が出ると噂されるその館で、一晩を過ごして欲しいと依頼されたケン・ブレークだが、その晩、厳重に戸締りされた石室の中で心霊学者が曰く付きの凶器で滅多刺しにされ、殺されてしまう。名探偵H・M卿が初登場した1934年の作品です。

翻訳が新しくなったことで、とても読みやすくなったと言うのが、まず最初の印象。ですが個人的にはカー作品の魅力の一つは、「読みにくい」と言う点にあると思っているので、少々スマートすぎる気がしなくもありません。

まぁ、それはそれとして、私が本書を初めて読んだのは、たぶんハヤカワ文庫の『プレーグ・コートの殺人』版だったと思います。そのときに感じた違和感と言うか、スッキリしなかった点が、本書を読んで凄く腑に落ちました。

まずは書名の『プレーグ・コート』と『黒死荘』の違いについて。
本書のあとがきに戸川安宣氏も書かれていますが、絶対に『黒死荘』と書いた方が分かりやすいと思います。黒死荘→黒死病→ペストと繋がるからで、そのイメージを感じながら読んだほうが、本の世界に入りやすいです。

それから『黒死荘』と書かれれば分かるのですが、このあとのカーの二つの作品とは、なにかしら繋がっているような気がするからです。

『黒死荘』から始まって『白い僧院』へと続き、『赤後家』へと繋がって書かれているのですが、カー独特のドロドロとした暗く粘着性のある世界観が、その色の持つイメージからアピールしようとしていたようにも思えるのです。まっ、他にもあるのですが、それを書くのは野暮なので止めておきます。

トリックに関しては、お見事ですね。
今となれば当然古典ですが、1934年当時、このトリックが生まれたから、今に繋がっている事もたくさんあります。雨でぬかるんだ地面に、足跡一つ残されていない現場。厳重に鍵が掛けられ、人の出入りが不可能な石室の中で、背中を滅多刺しにされ殺された男。凶器は室内に転がされていたのだが、外部からは投げ入れることも不可能な二重、三重の密室。読んでいて、チョー楽しい!(笑)

楽しいと言えば、全然違うところで一つ笑えました。本書は犯行から謎解きまでが、約一日の間で行われています。事件が起きた次の日の夜には、謎が解き明かされるのですが、謎を解き明かした次の日の朝、H・M卿が、おもむろにこう言います。

「もう一日早く、真相に辿り付いておればな・・・・・・・」と。

その時は、雰囲気で「ふんふん」と、読み進めてしまいましたが、後から読み直すと、「一日早いと、たぶん事件は、まだ起きてないな~」なんて思って笑ってしまいました。未読の方は是非!


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