家族は記憶で出来ている

静岡県熱海市某所まで、敷地の調査に行って来た。住宅を建てようと計画している方が、購入を検討されている土地で、「専門家の視点で見て、どうでしょう?」との御相談を頂いたので、出向いたという状況。土地は山の上にあり、北斜面だが廻りに高い樹木なども無く、日当たりの良い場所。正面に見えているのは、湯河原町。街から凄く離れているように見えるが、実はそんなに遠くない。ただ山の上ってことだけ。土地も広く、空気も美味いし景色も良い。建物を建てるための、大きな問題点も見当たらない場所。道幅も適切にあるし、土地が広いから工事をする際だって、車の置き場に困るなんてことも無い。きっとここでなら冬の星空を眺めながら、ホット・バーボンを飲んだら美味いことだろう。価格をはじめ、いろいろと整理しなければならない点もあるが、それも含めての要検討。仕事に繋がることを祈りつつ、ご報告書を提出し、まずは一段落。

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敷地を確認している時に、散歩する親子連れを見かけた。3歳ぐらいの男の子が、トコトコと坂道を登って行く。その後ろ姿を見守るように、母親らしき女性が付いていく。街中ならば、同じ年ぐらいの子供が近所に居るかもしれないし、公園に行っても良い。だけど少し街から離れると、同じ年ぐらいの子供を見付けるのは、なかなか大変なのだろう。子供は母と遊び、母は子供から目を離すことが出来ない。濃密な時間とも言えるが、息苦しいと感じてしまうことだってあるかもしれない。

そんな二人の散歩すると姿に、グッと来た。分からない人には全く分からないと思うし、的確に伝える言葉も持ち合わせていないので書くことは出来ない。だけど、なんだかグッときた。何年かして男の子が大きくなり、家族の元を離れ、今日の事なんか忘れてしまうのかもしれないけど、お母さんは、こんな小さな時から君が転ばないように、何処に行きたいのかを見守りながら、じっと後ろから支えていたんですよ。家族とは、そんな毎日の記憶の積み重ねで出来ているんだと、二人の後姿を見ながら思った。男の子が私を見付けて、大きな声で叫んだ。「こんにちはー」と。

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御相談者がこの土地を選び、運良く計画のご依頼を頂けたら、またこの二人の姿を見ることが出来るかもしれない。その時はきっと、今よりも成長していることだろう。

 

 

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