『ゴッサムの神々 - ニューヨーク最初の警官 上・下』リンジー・フェイ 読了

表紙からライトノベルを連想するが、見掛けに騙されてはいけない。ガチガチのミステリだ。舞台は1945年のニューヨーク、そこはまだ闇のような時代。火事で顔に大きなやけどを負ったティム・ワイルドは、夢も希望も無くしながらも、創設されたばかりのNY市警の警官となる。ある夜、ネグリジェを血に染めた十二歳の少女バードと出会う。「彼、切り刻まれちゃう」という少女の言葉通りに、胸を大きく十字に切り裂かれた少年の死体が、ゴミ捨て用の樽の中から見つかる。内臓の一部が無い猟奇的な少年の死体の発見は、街中を震撼させる大事件の始まりに過ぎなかった―

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正直言えば上巻は長いプロローグで、事件は下巻から大きく動き出す。そして下巻後半からの展開の早さは圧巻です。だが作品の魅力はそこではない。この作品の肝は時代背景の持つ暗さと陰湿さ、そして対立の構図にある。例えば貧しいアイルランド人移民への偏見と差別、カトリックとプロテスタントの宗教的対立、民主と共和党の政治思想的対立、全てが対立し合い憎み合う時代の暗さ。そして幼い頃に両親を火事で亡くしたティムと、たった一人の肉親である兄ヴァルへの憎しみにも似た感情。これらの対立する強い感情が憎悪となり、暗い闇を醸し出している時代。そしてその闇から抜け出せない閉塞感と、抜け出したいと願う小さな希望が交錯するところだと思います。

文章には若干の読み難さがあります。それに意味を読み取りにくい比喩や会話もありました。でもそれを超える魅力が、たくさんあります。主人公のティムの心情に、強く心を揺さぶられることが何度もあり、読まれた方の中には感情移入する方も多いかもしれません。

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上下二巻に分かれた大作であり、読み応えも十分にあるハード・ボイルドな作品でした。

 

 

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