『追想五断章』米澤穂信著/読了

お見事でした。ミステリの形式の一つに、「リドル・ストーリー」というものがあります。それは物語の中に示された謎の答えを、明確にしないままに終わる物語。本作は、そんなリドル・ストーリー小説が五作登場します。と言っても、五編の短編小説では無く、作中作としての登場です。

死んだ父親が残した五編のリドル・ストーリー小説を探して欲しいと言う、不思議な依頼を受けた主人公・菅生芳光。父を無くし大学の学費もままならなくなってしまった芳光は、伯父の営む古書店でアルバイトをしながら居候させて貰っている身。大学にも戻れず、生活もままならず、故郷の母からは戻って来いと泣きつかれる毎日に閉塞感を覚えていた。そんな芳光が伯父に内緒で依頼を受けたのが、五編のリドル・ストーリーを探す事だった。手探りで探し始めるうちに、故人が20年以上前に巻き込まれた「アントワープの銃声」と呼ばれる事件の容疑者だったことを知る。

リドル・ストーリーと聞いて直ぐに思い出すのは芥川龍之介の『藪の中』ですが、他にもクリスティーの『招かれざる客』なんて作品も浮かびます。いずれも本文が最初にあって、最後の謎解きを探す形式だと思うのですが、本作品の場合には、答えが先にあって、さて本文は何処でしょう?と言う形になっているところが面白いです。さらに言うと――と、これ以上言うのは危険なので止めておきますが、秋の夜長を楽しませてくれる一冊であることは間違いありません。宜しければ是非。

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