『十二人の手紙』井上ひさし著/読了

どれぐらい自筆で手紙を書いていないだろう? たぶんここ2~3年は、間違いなく手紙を書いていない。

私の学生時代(と言うと凄く昔だな)には、かなり手紙を書く方だったと思う。勿論、メールなんて物が無い時代だし、スマホだって無い頃の話しだから、手紙以外の連絡方法は電話しかない。でも電話よりも手紙の方が、なんとなく情があったし、誰かの文字を見ることも好きだったから。何を隠そう、私はこの歳で丸文字だったりするのだが、これは中学生時代の女の子の影響だったりする。手紙のやり取りをしているうちに、その人の文字が写ってしまい、その後、ずっと丸文字のままだった。建築の勉強をしていた時代、設計図面は手書きで文字を書いていた。その時に丸文字が、やや右側に傾くような文字に変化したのだが、他人から見たら今でも「概ね丸文字」と言われるに違いない。ちなみに手紙を書く時には、ブルーブラックのインクを使った細字の万年筆と決まっている。これもまた学生の頃から変わっていないスタイルだ。

と、蛇足ばかりが長くなってしまったが、本書は手紙だけで物語が綴られている短編集だ。十二人の人物が、近しい人、大切な人に綴った手紙だけで進んでいく短辺の物語。手紙というもので人物の気持ちが綴られていくと、ともすれば読者は他者へ宛てられた人物の心情を、盗み見ているような錯覚に陥ってしまう。悪いことをしているような気持が、手紙の書き手の心情に寄り添ってしまう共感に繋がる。だから物語の真相が見えた時に、なんとも言えない感情を味わうことが出来るミステリです。

久しぶりに手紙を書いてみたくなりました……書く相手が思い浮かばないけど。

20200615.jpg

 

にほんブログ村 住まいブログ 住宅設計・住宅建築家へ

ブログランキングに参加しています。
宜しければ応援の一押しを、宜しくお願い致します。

コメントする

< 民度の意味  |   一覧へ戻る   |  オープン・オフィスの御案内 >

最近の画像

お問い合わせ

  • お問い合わせフォーム
  • 0465-35-1464

このページのトップへ