大切なことと柔軟な考え方

気のせいでしょうか、ここ最近御相談に見える方のほとんどが「土地・建物・諸経費すべて含めて4000万円で家を建てたい」と、ご希望されます。この辺りの金額が、なにかの目安として常識化されているのかと思う程、多くの方が4000万円というのです。ひょっとして何処かのメジャーな建築サイトで、誰かがレクチャーしているのでしょうか? 

逆算して考えてみましょうか。例えば建物が木造で30坪の3LDKと仮定した場合、超概算で坪単価80万円×30坪=2400万円+消費税240万円+設計費用を含めた諸経費を10%の240万円と考えます。この時点ですでに2880万円、残りは1120万円となります。この金額で土地を探すことになるのですが、土地は出来れば平地で、地盤補強の必要のない堅牢な地盤、道路は工事車両が問題なく入れる広さがあり、周囲に崖などがないことが必要です。これらの条件が満たされなければ、地盤補強費用をはじめとした建築費用が増えることに繋がるからです。ちなみに小田原がいくら神奈川の西のはずれの地方都市だからと言って、その値段で誰しもが良い土地だと思う土地が買えると思ったら大間違い。

また参考に書いた坪単価の80万円は、コロナ禍が広がり始める前の話。今は坪単価90~100万円あたりは必要だと思います。少し前に大手ハウスメーカーが集まる住宅展示場に行く機会があり、数社のモデルルームを見せていただきましたが、どのHMの営業マンも費用の目安は坪80万円から85万円は下らないと話していました。勿論、仕様や大きさなど何もない前提での金額ですから、これは最低基準の金額で実際にはもっとするでしょう。つまり木造住宅で坪100万円するという話は、けして大袈裟でも嘘でもないのです。

さてこうなると、最初の総額4000万円で建てたいという考え方は、そもそも成立しているのか? という話です。建物は大きく豪華に、庭は広く、車は二台いや来客用も含めて三台は確保して、居間には床暖房、屋根にはソーラーパネルを載せ、居間一面の大きな窓を開くと目の前には海が一望でき、開放感・抜け感のある家が良い……と、夢がどんどん膨らむことは本当に楽しいのですが、あまり大きすぎる夢ばかりを膨らませてしまうと、それはもう夢ではなく、ただの妄想になってしまいます。

で、紆余曲折の上、3000万近くする街中の土地を購入し、超スーパーローコスト・ハウスメーカーで、ただの小さな四角い建物を建てて貰い、凄く窮屈な感じで生活することになるのです。それが夢見ていたマイホーム生活なのですか? と、聞いてみたくなりますが、残念ながらこと「家造り」に関しては、専門家の意見というのはあまり重要視されず、建築主の妄想だけが優先されてしまうのです。

若い頃はそんな方に対しても時間を掛けて、懇切丁寧に説明していましたが、今はもう面倒なので、説得やレクチャーするような真似はしません。こちらの話を聞く方は初めから聞く耳で来られていますし、聞く気の無い方の耳は初めてお会いした時から既に閉じられています。

長く、愚痴っぽくなってしまいましたが、この週末から始まるGWには、HMのモデルルームや見学会に行かれる方も多いと思いますが、今はコロナ禍とロシアの侵略戦争の影響からくる世界的な経済の不安定さが手伝い、建設費用が軒並み高騰しているということを理解しておく必要があります。高騰した建設費用のために無理をするのではなく、ご自身の希望や考え方、資産計画や運用方法も含めて捉え、専門家の意見に耳を傾ける余裕が大切です。

家を建てることが目的ではなく、建てた家で家族が楽しく生活することが目的だと言うことを、どうかお忘れなく。 良いGWを。

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