お盆のこの時期、実家へ里帰りし、のんびりと過ごされている方も多いのではないかと思います。久しぶりに子や孫が帰省し、家族全員でワイワイと食卓を囲む姿は、賑やかで、いつもとは違う少しだけ騒がしさもある、楽しい時間だと思います。
そんな家族が一緒に食事をとる楽しい時間ですが、実は本当に数少ない、貴重な時間だということをご存じでしょうか。
分かりやすい例を挙げて考えてみます。
30歳で結婚し、33歳で長男、35歳で長女が生まれ、子どもたちは大学を卒業すると家を出ていく――。そんな、どこにでもありそうな家族を想定してみます。
家族の出来事 年齢
夫婦が結婚 30歳
長男が誕生 33歳
長女が誕生 35歳
長男が大学を卒業し独立 55歳
長女が大学を卒業し独立 57歳
長女が生まれた35歳から、長男が独立する55歳までの20年間は、家族4人で暮らす時間です。
では、この20年間に、家族4人で食卓を囲む機会は何回あるのでしょうか。
子どもが小さい頃でも、平日は親が仕事に出て、子どもは幼稚園や学校へ行きます。成長すれば、塾や習い事、部活動なども始まります。友達と出掛けることも増えていきます。
そこで、かなり甘めに、
平日は夕食だけ、1日1回
土曜・日曜は朝・昼・夕の3回
1週間で11回
1年間で約570回 と仮定してみます。
すると、570回 × 20年間 = 約11,400回となります。
「11,400回もある」と思われるかもしれません。
しかし、これはあくまで、家族全員がかなり高い割合で食卓を囲むことができた場合の数字です。実際には、平日の夕食で全員が揃わない日もあるでしょう。土曜や日曜にも、それぞれの予定があります。
もし、実際に家族4人が揃う食事を年間300回程度と考えれば、
300回 × 20年間 = 約6,000回。
さらに少なくなる家庭もあるでしょう。
つまり、これから家を建てようとしている30代、40代の皆さんが、子どもたちと家族4人で食卓を囲める時間は、思っているほど多くはないのです。
そして、子どもが大学を卒業して家を出れば、その機会は一気に減ります。
正月やゴールデンウィークに帰省してくれたとしても、家族4人が揃って食事をする機会は、年間にすればほんの数回です。
やがて子どもが結婚すれば、帰省の仕方も変わります。仕事や家庭の都合で、全員が揃うことが難しい年もあるでしょう。そう考えると、家族4人で食卓を囲む時間は、決して「いつまでも続く日常」ではありません。
むしろ、子どもが家にいる20年ほどの間に集中している、限られた時間なのです。
だからこそ、家づくりについて考えてみたいことがあります。
「家族で使う回数が少ないのなら、大きなダイニングは必要ない」と考えるのか。それとも、
「回数が少ないからこそ、その一回一回を大切にできる場所をつくりたい」と考えるのか。
私は、「食卓とは、単に食事をするためだけの家具ではない」と思っています。
一緒に食事をするということは、そこに会話が生まれ、子どもの成長を見守り、誕生日や進学、就職など、家族の出来事が積み重なっていく大切な時間を共有することでもあります。
何か特別な話をするわけではなくても、
「今日、学校でこんなことがあった」
「仕事でこんなことがあってね」
そんな何気ない会話を交わした時間が、後になって家族の記憶として残っていくこともあるでしょう。
そう考えると、家づくりで考えるべきなのは、「何帖のLDKにすれば良いのか」ということだけではないように思います。
家族が揃って食事をする時期もあれば、子どもが成長して一人で食事をする時期もある。そして、やがて夫婦二人の生活に戻り、時々、子どもや孫が帰ってくる。
そんなライフステージの変化まで考えた上で、食卓やダイニング、そしてリビングをどうつくるのか。
普段は夫婦二人でちょうどよく、家族が帰ってきた時には皆で囲める。食事が終わっても、もう少し話をしていたくなる。
そんな「家族の時間」を受け止められる場所をつくることも、家づくりの大切な役割だと思います。
ひょっとすると、居間という場所よりも、大切な時間を共有できる場所が、食卓なのかもしれません。
お盆でご家族が食卓を囲むこの時期、どうか揃われた家族の顔を眺めながら、談笑の夕食をお楽しみください。
そして、もしこれから家を建てようと考えている方がいらっしゃるなら、今日の食卓を眺めながら、そんな家族との時間を、どんな場所で過ごしたいのかを、考えてみてはいかがでしょうか。
家族で食卓を囲めるのは、あと何回あるでしょう。

執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
ご家族の想いを大切にし、時間が流れて変化していく慣れ親しんだ物理的な器としての家づくりを、お手伝いしています。小田原周辺での住宅設計や、日々の積み重ねを大切にした無理のない省エネリフォームなど、住まいに関するご相談は、お気軽にお寄せください。
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