先日、あるご縁から、地方自治体の復興支援事業に関わるCM業務のお話をいただきました。
内容とすれば町役場に一定期間常駐しながら、公共事業に関する技術的な支援を行うというもの。いわゆるコンストラクション・マネジメント(CM)業務です。
CMという言葉は一般にはまだ馴染みが薄いと思いますが、設計者や施工者とは違う立場となり、発注者の立場に立ってプロジェクト全体を支援する・サポートする役割の業務です。
設計業務とは少し性質が違うものですが、建築に長く関わってきた者としては、非常に興味深い分野だったので、その業務に凄く惹かれました。
設計者とは異なる立場で関わる建築
私自身、若い頃に官公庁案件を中心に扱う設計事務所に在籍していたこともあり、公共建築の進め方は、ある程度知っています。また独立後も、公共工事の監理業務に携わる機会もあり、発注者・設計者・施工者の関係の中で仕事を進めてきた経験がありました。そのため今回の話は、
「設計者としてではなく、発注者側の立場で建築に関わる」
という点で、非常に興味を惹かれたのです。
また復興事業という背景もあり、建築家として何らかの形で関われるのであれば、意味のある仕事になるという想いもありました。偶然ながら、所在地が自分のルーツにも関わりのある場所での話だったこともあり、たんに 業務=仕事 と言う意味だけでなく、一人の人として役に立ちたいという想いもありました。
CM業務の実際
せっかくの機会なので、CMと言う業務に関して、簡単に触れておきます。そのお話を聞く中で感じたのは、CM業務というものの幅の広さでした。プロジェクトの内容によっては、
- 設計内容の確認
- 関係者との調整
- 工程や予算に関する検討
- 会議資料の整理
など、実務的な関与が多くなる場合もあれば、
- 会議への参加
- 技術的な説明
- 発注者への助言
といった、いわば「技術顧問」に近い役割になる場合もあるそうです。またその前段となる「どのような事業を企画すれば良いのかを考える」こともあるようです。
同じCMという言葉でも、その中身は案件ごとに大きく異なるようです。
こういう話は、実際に実務に携わる方に聞いてみないと、知らない話だったので大変勉強になりました。
働き方という現実的な問題
今回の業務は一定期間、現地に滞在しながら対応することが前提となっていました。しかも私の住む小田原からは、かなり遠い場所での勤務となります。そのため検討にあたっては、
- 自身の設計事務所の業務との両立
- 長期滞在に伴う生活面
- 年齢的な体力面
といった、極めて現実的な問題を考える必要がありました。
設計事務所という仕事は、一つの案件だけに専念できるとは限りません。複数の業務を同時に進めていく中で、どこまで時間と労力を割けるのかは、常に判断を求められます。実際のところ今も複数の案件を抱えていますし、相談を受けている新規の物件もあります。こうなると興味深い仕事であると言う事と、実際に継続して取り組めるかどうかと言う事は、必ずしも一致しないと言う事になるからです。
今回は見送るという判断
最終的に今回の話については、参加は諦めることとなりました。理由は特別なものではなく、
「現在の業務とのバランスの中で無理がある」
という一点に尽きます。
どのような仕事であっても、継続できなければ意味がありません。建築の仕事は短期的なものではなく、時間をかけて積み上げていくものです。そのご依頼に自分の仕事を全振りしてしまうと、小田原での天工舎一級建築士事務所の仕事は、全てを完全にストップしなければなりません。
通勤が絶対的に無理な場所であるという距離的な問題と、要求される業務内容が他の仕事以上に、片手間では出来ない内容の二点。またご依頼者様に対して、期待以上の成果を出すことへの重要性なども考えた上での結論でした。その他として年齢的に体力が落ちていることも、大切なことの一つでした。それら全てを含めて、無理をしないという判断もまた、一つの選択だと考えたわけです。勿論、御依頼者様も同様の考えだと思います。
建築家にとってのCMという関わり方
今回の件を通して改めて感じたのは、建築という仕事には様々な関わり方があるということでした。設計者として建物を形にするだけでなく、
- 発注者の立場で判断に関わる
- プロジェクト全体を俯瞰する
- 多くの関係者の間を調整する
といった役割もまた、建築に関わる重要な仕事の一つです。設計とは異なる立場ではありますが、これまでの経験が活きる場面も多いと感じることが出来ました。
最後に
今回の話は結果としては実現には至りませんでしたが、個人的には非常に有意義な機会であり、大変貴重な勉強をさせていただけたと思っています。建築という分野の中で、自分がどのような立場で関わるのかを、改めて考えるきっかけにもなりました。今後も設計という本業を軸としながら、状況に応じて様々な形で建築に関わっていきたいと、強く思いました。
また設計や監理に関するご相談はもちろんのこと、既存建物の調査や工事内容の妥当性の確認といった、発注者側の立場に立ったご相談についても対応しますので、何かあれば、お気軽にご相談いただきたいと思います。