先日、有名なミステリ小説を映像化したドラマ作品を、サブスクで観ていました。映像化は難しいと考えられていた作品でしたが、とても巧みに映像化されており、本を読んだ時とはまた違った意味で感激しながら観ていました。
そのドラマ内で、ときおり屋敷内の間取り図が映し出され、「今、主人公たちはここに居る」と表示される場面があります。その間取り図を何度も見せられたことで、私はあることに気付きました。
それは、「廊下の重要性」です。
家を考える時、廊下は「部屋と部屋を繋ぐための通路」と、捉えられることが多いと思います。けれど、そこに少し作為を持ち込むだけで、廊下は単なる通路ではなくなります。
そのことを分かりやすく教えてくれるのが、廊下に特徴のあるミステリ小説です。
たとえば、一般的な住宅では考えられないほど曲がりくねった廊下の先に部屋があったり、反対に、ありえないほど真っ直ぐで長い廊下が続いていたりする家。そうした空間には、独特の恐怖があります。
それは「なにかが怖い」というより、「その先に何があるのか分からない」という不安に近いものです。
先が見えないこと。認識できないこと。それだけで人は畏怖を感じます。アイドルグループ櫻坂46の前身である欅坂46の曲に、「螺旋階段が上りにくいのは、先が見えないから」という意味の歌詞があったのを思い出します。あの感覚も、きっと同じなのでしょう。
反対に言えば、廊下や階段に何らかの目的や演出を与えることで、それらは単なる通路ではなく、「意味を持つ空間」に変えることが出来るということでもあります。
廊下に特徴のあるミステリ作品の話から入りましたが、こうした視点は、日常の家造りの中でも充分に意味のある考え方であり、時にはコンセプトにさえなり得ます。
たとえば、廊下の先に光や景色を用意すること。階段の途中に窓を設けること。あるいは曲がり角によって視線を切ること。そうした小さな工夫だけでも、人が空間から受ける印象は大きく変わります。
家を考える時、単に「〇〇LDK」のような数字だけで考えるのではなく、その数値には表れない廊下や階段にも目を向けてみて下さい。考え方ひとつで、そこは大切で貴重な場所にもなる筈です。
ミステリと建築の繋がりって、意外と面白いと思いませんか。
ミステリ作品の中では、こうした空間の効果が、「トリック」や「恐怖」として使われます。けれど本来それは、私たちが日々暮らしている住宅にも存在しているものです。
『建築トリック謎解きガイド』では、そんな「空間が人に与える効果」を、ミステリと建築の両方の視点から読み解いています。
執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
ご家族の想いを大切にし、時間とともに変化していく暮らしの器としての家づくりを、お手伝いしています。小田原周辺での住宅設計や、日々の積み重ねを大切にした無理のない省エネリフォームなど、住まいに関するご相談は、お気軽にお寄せください。
お電話でのご相談:0465-35-1464
お問い合わせフォーム:https://www.k-tantei.com/contact/
天工舎一級建築士事務所 ウェブサイト:https://www.k-tantei.com/