『大江戸省エネ事情』石川英輔 著

本書では現代人が一日に消費するエネルギー量は、一人当たり約10万キロカロリーの化石燃料を使用すると書かれています。ですが江戸時代には化石燃料などはなく、ほぼ太陽エネルギーだけを消費していたにもかかわらず、高度な文化と産業を生み出し続けていました。それは合理的な知恵と工夫がもたらした究極的な「省エネ社会」だったとも言えます。そんな江戸時代の生活を「省エネ」の視点を切り口に考察した一冊です。

衣・食・住をはじめ、旅や乗り物、冷やす・捨てると言ったワードを切り口に書かれています。仕事柄「住む」の項目は面白かったです。紙と木と土だけで作られている家は、究極の省エネ住宅であり、シックハウスなどの体調不良を起こすことも無い家だったこと。隙間だらけの家は、夏は暑く冬は寒い。暑ければ裸で過ごし、寒ければ着る。小さな火鉢で暖を取る。本当にそれだけで凌いでいたのですから、エネルギー問題など発生しませんよね。

本書を読みながら思い出したのは、「蚊帳 かや」で、寝た記憶でした。部屋の四隅に蚊帳の端を引っかけ、蚊が入って来ないようにそっと蚊帳の中に入る。薄い靄が掛かったような不思議な感じで、戸が開け放たれたままなので外から虫の音が聞こえる、内なのか外なのか分からない不思議な空間。私がまだ小学校にも上がらない頃、何度か経験した蚊帳。いま思い出すと、少し艶っぽい空間でしたね。

今ではエアコンを点けないと眠ることが出来ない夜も増えましたが、家中の窓を全部開け、蚊帳を吊って眠ったあの頃が、少し懐かしくもあり、憧れにも似た気持ちも抱きます。


執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)

「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」

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