『カレンダーの無い家』兵頭るり 著 | 声を出して笑い、少し泣ける一冊

少し前、テレビの深夜ドラマで「ミッドナイトタクシー」という番組を放送していました。そのタイトルに興味を惹かれて、毎回録画して観ていました。30歳の誕生日を目前にした女性タクシードライバーが、いろいろな乗客との出会いの中で、自分の生き方や人生を見つけるドラマでした。とにかく会話が面白く、突拍子もない設定にも関わらず、なぜか最後には納得させられてしまう、変な説得力があるドラマですごく楽しく見ていました。

最終回の後、脚本家さんの名前を探すと「兵頭るり」とありました。経歴を見ると少し前に脚本を書かれたドラマで「時すでにおすし!?」という番組がありました。このドラマも私はハマって見ていました。主演の永作博美さんが好きだったので見始めたのですが、とにかく展開が奇想天外で面白かったのです。

ふだんドラマなど観ない私が、面白いと思った二本のドラマの脚本を書かれた方なので、もし本を書かれているとしたら、絶対に私には面白いはずと思い調べて購入した本が『カレンダーの無い家』です。

16年間音信不通だった母の死をきっかけに、たった一人の妹と家族としての絆を再生させる——。簡潔に書けばそんな物語。これまた設定が面白く、亡くなった母親が誰かに依頼したようで、毎月、姉妹で行うべきイベント? 指令のような物が書かれたカレンダーが郵送されてきます。そんなイベントを二人で協力したり、時には衝突したりしながらこなしていくうちに、二人の絆と同時に、知らなかった母の一面にも触れていくことになります。

一冊の本と二本のドラマに共通して言えるのは、どれも親子の絆や自身の成長、そして自分の生き方や人生を見つめるという感じでしょうか。設定が突拍子も無かったりするので、思わず笑ってしまうことも多いのですが、その裏に絶妙に泣かせるポイントが隠されています。

突拍子もない設定なのに、最後には妙に納得させられてしまう。そして、笑っていたはずなのに、いつの間にか少し泣かされている。どうやら私は、兵頭るりさんの感覚や感性、そしてこういう作品が好きなようです。


安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。