Essay 101 だからこそ「生きる」家

家の間取りやデザインも、時代の変化に伴って変わっていくものです。例えば外壁の仕上げにしても「サイディング張り」が多く見受けられるようになったのは、ここ20年ぐらいでしょう。また外観の色だって原色や派手な色を使う事だって、一昔前には考えられませんでした。


外壁の色に限って言えば「白・グレー・ベージュ」の3色が主流で、間違ってもオレンジや黄色・水色なんて色を塗ろうとすれば、親戚中から縁を切られかねなかったですからねぇ?


この数々の変化は、新材料の開発や低コスト化にも影響されているのでしょうが、一番大きな理由はハウスメーカーが建てる家のデザインの模倣じゃ無いかと、密かに思っています。


爆発的に勢力を拡大しているハウスメーカーですから、そのデザインや色使い、あるいは材料の使い方だって目新しいものばかりです。真似したくなるのも無理はありませんよねぇ?大きな声では言えませんが、そう言う意味ではある意味での「スタンダード・デザイン?」を確立しているハウスメーカーの功績も侮れないと密かに思っています。(もっとも、それが全て良しと諸手を挙げて賞賛している訳ではないことだけ、お断りしておきます。だってこのエッセイを読んでるご同業の方に“裏切り者”と呼ばれるのは辛いですからね。)


変化しているのは、デザインだけでは有りません。室内の仕上げ材として一番ポピュラーな“ビニールクロス”だって、少し前までは水廻りに使うだけで、今のように全部の部屋がビニールクロス張りなんて言う家は殆ど無かったと思います。


勿論間取りだって大きく変化しています。さて、ここで問題です。20年・・・いえ15年ぐらい前の施主の要求には必ず有って、今の施主には絶対に無い要求と言えば、さて何でしょう?(もっともかなり主観的な意見だと言うことだけお断りしておきますね)


答えが解った方はメールにてお知らせ頂けば、素敵な豪華商品を・・・・・あっ!そんな予算が無かった!ごめんなさい、冗談ですから。


答えは「和室の続き間の要求です」これは今でも地域や、いわゆる本家と呼ばれるような家ならば、そのご希望は有りますが、首都圏に近い地域や核家族所帯では、あまり聞かなくなったご要望なんです。

この「和室の続き間」と言うのは「洋風の生活だから」とか「和風の生活」なんて言う事とは全く関係無いところから来ている要望で、多分に「人が集まる時のため」と言う非日常での使い方を想定している場合が殆どだと思います。


例えば「長男に嫁を貰ったお披露目」とか「新年に年始に集まる人たちの為」と言う1年に1度、あるいは、いざと言うときの為に多くの親戚が座れる場所と言うための要求でした。


その最たるものが「お葬式」です。今でも地方に行けばそうだと思いますが、「お葬式」と言うのは、その家にとって「結婚式」以上のイベントなのです。(お断りしておきますが、けして不謹慎に話しているつもりは有りませんので、お気に障られた方はご容赦を)

その為に普段使わないような食器やグラスの山を仕舞う納戸や、倉庫を別に造られる家が有るぐらいですから、その気の使いようと言ったら都市圏の住宅からは考えられないぐらいです。

ですから、家の設計の際に「ニ間(ふたま)続きの和室」の確保に拘るのは、多くの場合がお年寄りなんです。きっと、ご自身の「死」を見つめてのことなのでしょうね・・・・・。


「安心して死ねる」と言うのは「安心して生きられる」と、有る意味では同義語なのかもしれません。


生きるための場所である「家」を造ると言う仕事は、時として「死」と向かい合う時が有ります。そんな時、ふと自分の死をも見つめる瞬間があるのです。


私自身が死ぬまでに、あと200棟の住宅の設計は出来ないと思います。たった、それだけの数しか設計出来ないのだとしたら、1棟1棟大切に造っていきたいですねぇ。