Essay 145 土地探しは自分探し

家を建てる事が、とても大変な時代になってます。長引く不況から来る将来への不安なんて事から始まって、「地震には耐えられるのか?」・「誰に頼めば良いのだろう?」・「うちは欠陥住宅に成らないよな~」なんて事まで、心労が絶えないのが今の「家造り」なのかもしれませんねぇ~。


これは土地をお持ちの方にとっての悩みですが、土地から探される方には、更に幾つもの不安や戸惑いが付いてきます。土地を買う場合、大抵は不動産広告やチラシが頼りとなりますよね?つまり「ここの土地売りますよ」と広告している土地だけが選択対象となる訳です。


ところが、いざチラシの類を見ていても、どれも今一ピンと来ない・・・。しかもよく見ると、こっちのチラシに載っている土地が、あっちのチラシにも出ているなんてことは良くある事で、気がついたら別のチラシに載っている同じ土地を赤鉛筆で印を付けていたなんて事が有りそうですよね。これは不動産業界独特の事何です。つまり「世界中にたった一つしかない土地を、いろんな不動産屋さんが売っている」と言う訳です。迷わない方がおかしいです。


それでも目ぼしい土地が見つかればしめたものですが、土地の広さと値段、それに簡単な住所しか載っていないチラシだけで、中りをつけるのは不可能に近いかもしれません。まして、拘りを持っている方、拘りを持たざるを得ない昨今ではね。


ちょうど一年程前から、ご相談を受けているM氏も、そんな拘りを持って土地を探している御一人でした。広さや価格を気になさるのは当然ですが、利便・環境・交通圏・地盤・海抜・学区と言った様々なご要望を伺い、私自身が彼方此方に出かけ幾つかの土地を見たりしました。勿論、私の知り合いの不動産屋さんにも情報を求めました。多分、ご自身が探された土地も含めると100件以上の土地を見て歩かれたと思います。でも見つからなかったんです・・・・・琴線に触れるような土地が。


家を建てると言うことにも「縁」とか「タイミング」みたいな物が有ると思いますし、ひょっとすると「やるぞー!」と言う熱みたいな物も大切だと思います。だから焦っても見つからない時は見つからないし、ひょんな事から理想の土地に出会ったりする事もあると思うんです。M氏のお眼鏡に適った土地も、きっと何かの縁なのでしょう。


M氏の場合、「その土地で自分はどんな人生を過ごすのだろう?」と言う、自分自身と向き合うことが、土地に対する重要な拘りの一つでした。


例えば陶芸をやってみたいとか、自然と触れ合っていたいとか、絵を書いてピアノを弾いて、なんて言うご自身やご家族の姿を思い浮かべたとき、それがどんな風景の中ならマッチするかを大切にしていたのです。ですからお眼鏡に適った土地は、それはそれは素敵な環境だったんです。


ただし!ただしです。M氏が気に入られた土地は、不動産チラシには載ってない土地だったんです。そう、M氏自身が歩いて見つけて来られた所謂「空き地」なんです。だから土地の所有者も解らなければ、果たして売ってくれるのかさえも解りません。それに広さだって解らないんです。


もっともこのM氏、只者では有りませんので、土地の周りを歩測で計り、大体の広さを勘定して来ると言う兵ぶり。ムムムム 思わず「出来る!」と唸ってしまいました。


そしてここで出てくるのが先ほどの「縁」の話なんですが、なんと驚いた事に、この土地は私と不動産屋さんが「この土地良いよね~」と話していた土地だったんです。ねっ?何か「縁」を感じませんか?


これからの私の仕事は、まず最初に土地の所有者を探さなければなりません。さらに土地を譲って欲しいとお願いし、金額の交渉や契約と言った幾つかのハードルを越えなければなりません。勿論、私よりその道のプロの不動産屋さんが大いに活躍してくださるのでしょうが、決して楽な道程では無いかもしれません。でも、きっと上手くいくと思ってます(←この辺りが楽観論者)

「設計事務所って家の設計をする所だから・・・」と言わずに、土地を探す所から手伝ってくれる設計事務所も有ると言うことを覚えておいて下さい。きっと不動産屋さんや施主とは違った視点で、土地を見てくれる事でしょう。そしてその視点は、きっと住む方にとっても大切な視点だと思います。


さっ!これから空き地の地主探しが始まります。建物の計画を始めるには、まだまだ幾つかのハードルを越えなければ成りませんが、きっとあの場所で美味いビールが飲める日が来ると思います(また飲む話か) いつかご報告できる日が来ると思いますので、この続きはまたいづれ。


「なかなか良い土地が見つからなくて」と嘆いていらっしゃる方、たまには散歩がてら自分が住みたい街を歩いてみては如何でしょう? ひょっとしたら土地と一緒に、洒落た設計事務所の看板も見つけるかもしれませんしね!ではまた。

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