玄関先に植えているヤマボウシの木に、花が咲いた。
派手さのない白い花ですが、それでも変わりゆく季節を静かに教えてくれます。
その小さな変化に気づいたとき、初夏の近づく気配を感じました。
大げさなことではなく、朝玄関を出る一瞬の色の違いのような、ごく些細な感覚。
玄関前という場所は、家の中でも外でもない曖昧な中間領域。
そこで目にする緑や花は、室内の時間をそのまま外へと連れ出すのではなく
少しだけ緩やかに切り替えてくれているのかもしれません。
ほんの少しで良いので、家の前に緑が欲しいと感じる理由も
こうした境界の変化にあると思っています。
それは特別な設計論でもなく、意図して語るほどの明確な思想でもありません。
ただ、日々の暮らしの中で自然と感じている、ごく個人的な感覚。
それでも改めて考えると、玄関先の植栽や小さな季節の変化は
住まいにおける「内と外の緩衝帯」をつくっているのだと考えています。
機能としての空間ではなく、気配としての空間。
そのわずかな余白を埋める「生」が、家の印象を決めているのかもしれません。
こうした感覚は、5月29日刊行の『建築トリック謎解きガイド』の中でも
「家と街の狭間」という視点として触れています。

執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
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