セルフビルドのガラス工房

神奈川県足柄上郡山北町。神奈川県の西の端に位置し、直ぐ隣は静岡県の小山町と接する、水の綺麗な所だ。山北町はその名の通り山に囲まれた街で、廻りには富士山を筆頭に、金太郎で有名な足柄山系や丹沢山に囲まれている。その中で一際有名なのが丹沢湖。三保ダムによって造られた人造湖ではあるが、夏には丹沢マラソンなども催され賑やかになる。
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その丹沢湖の北側に、築40年以上が経ち、人が住まなくなってからからも20年以上経つ、一軒の空き家を買い求めた青年にお会いした。

少し離れた場所にキャンプ場はあるが、周囲に民家は少なく、夜になると頼れるのは月明かりだけのような場所。そんな場所に建つ廃屋同然の建物を買い取り、自分ひとりの手で補修改造していたのだ。朽ちた柱を補修し、ぶかぶかに腐った床を貼り直す。自分の手でコンクリートを練り、床に少しずつ敷いていく。

建築の世界を知っている自分から見ても、それはそれは気の遠くなるような作業を、そんな場所で一人黙々とこなしている。彼が造ろうとしているのは、自宅兼用の吹きガラスの工房らしい。

建物の直ぐ後ろには、鬱蒼と生い茂った竹やぶが、家を飲み込もうかとするように、家を包み込もうとしている。家に迫る石積みは、一体何年、そこにそうしていたのだろうと想像させる。

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少し離れた場所にキャンプ場があるが、周囲に民家はほとんど建っておらず、夜になると頼れるのは月明かりだけのような場所。そんな場所に建つ廃屋同然の建物を買い取り、自分ひとりの手で補修改造していたのです。朽ちた柱を補修し、ぶかぶかに腐った床を貼り直す。自分の手でコンクリートを練り、床に少しずつ敷いていく。
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建築の世界を知っている自分から見ても、それはそれは気の遠くなるような作業を、一人黙々とこなしていた。彼が造ろうとしているのは、自宅兼用の吹きガラス工房。

建物の直ぐ後ろには、鬱蒼と生い茂った竹やぶが、家を飲み込もうかとするように、両手を大きく広げている。いくら資金が少ないとは言え、こんな場所と家を選ばなくても・・・と思ってしまう。リフォームは完成するのか? ガラス工房は軌道に乗るのか? 傍から見れば気になる所だらけなのに、「とにかく虫が凄いんですよ~」と、虫の事を気にする彼の笑顔には、なんの迷いも無い。

その行動を、「若さゆえの無謀」と笑うことは簡単だが、自分の目標に向かって、がむしゃらにもがく姿を、やりもしない、出来もしない人間が、どうして笑うことが出来るだろう。そのパワーと行動力に、独立した当時の、自分の姿を思い出してしまった。毎日仕事も無く、暇と夢だけを抱えて生きていた、あの頃の自分を。

空地を見つけては勝手にプランを書き、地主のところに「こんな建物建てませんか?」と、尋ねてみたこともあった。ブログやHPなど無く、ワープロで書き綴った原稿を、コピー機で印刷して作ったミニコミ誌。近所のレストランやホテルに置かせて貰うために、飛び込み出回っていたあの頃の、幼稚で稚拙な行動と、無知で粗野な考え方ばかりしていたあの頃の自分を、今の自分が笑うことは出来ない。

「7月から少しずつでもガラスの制作活動に入りたい」と、話していた彼のこれからに、心からエールを送りたい。そして夏になったら、必ず遊びに行こうと思っている。
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ふと見ると、家の正面に「たばこ」の文字を見つけた。もとは雑貨屋さんだったのだろう。モルタルで、擬木風に作られた「たばこ」の文字が、なんだかとても優しく見える。「こ」の字が笑っているかの様にさえ見えた、山の中のガラス工房だった。


天工舎一級建築事務所
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