『建築トリック謎解きガイド』発刊記念★建築怪異ファイル.3――家族を襲う新居の呪い

【CASE.3 家族を襲う新居の呪い】

【謎の事象の説明】

念願の新居に引っ越してきた家族。夫がネットで徹底的に調べて建てた、こだわりの高気密・高断熱住宅だった。

だが入居直後から、家族全員が原因不明の体調不良に悩まされることになる。

頭痛、めまい、息苦しさ。そして夜になると決まって襲われる「金縛り」。

不思議なことに、外出中はまったく平気なのに、家へ帰った途端に気分が悪くなるのだ。

「この家、何かあるんじゃないか……」

「ひょっとしてこの土地、昔なにかよくない場所だったんじゃ……」

せっかくのマイホームが、次第に得体の知れない恐怖の空間へ変わっていく。

果たしてこれは、土地に棲みつく悪霊の仕業なのだろうか――。

【霊媒師の見立て】

「待ってました! 今回こそ、今度こそ完全に“土地に宿る邪気”のせいじゃ。この土地には、怪しげな気が滞っておる。夜な夜なお前たちの胸の上に悪霊が乗り、首を絞めているから、息苦しさや金縛りが起きるのじゃ。家の中にいる時だけに症状が表れるのは、それこそ霊障のサイン。ただちにお祓いをして、家の四隅に盛り塩をしなさい。枕元には米と清酒も……」

【建築士の見立て】

「またあなたですか。“待ってました”って、不謹慎ですよ。お祓いの前に、まずは壁の給気口を開けてもらえませんか。こちらの家、ご主人こだわりの高気密住宅なんですよね? それなのに24時間換気を止めて、給気口まで閉め切っている。しかも室内ではファンヒーターを使っている。それでは空気の逃げ場がありません。」

「最近の住宅は昔の家と違い、とても気密性が高いんです。換気を止めたまま生活すると、空気が淀み、頭痛や息苦しさが起きることがあります。特に新築直後は、建材や接着剤の臭いも室内にこもりやすいですからね。」

「家に帰ると具合が悪くなる――というのは、実は高気密住宅で時々起きる典型的な症状なんですよ」

後日、24時間換気を動かし、給気口を開けてフィルターを掃除したところ、家族の体調不良は嘘のように改善したという。

もっとも——給気口を開けたその夜から、今度は家の外で「誰かの足音」が聞こえるようになったそうですが……。

【書籍の紹介】

いかがだったでしょうか? 幽霊の仕業かと思われた怪奇現象も、建物の構造や設備の仕組みを知っていると、全く違った「物理的な謎解き」に変わります。

5月29日発売の『建築トリック謎解きガイド』では、このような「建築の視点」からミステリ小説の謎に触れています。

「窓のない部屋はどうやって作る?」「隠し通路の図面上のごまかし方とは?」など、一級建築士である著者が真面目に考察した、建築×ミステリの新しい世界。ぜひ、本編でその謎解きを体験してみてください!

今日から発刊記念として、建築士の視点で解き明かす「建築怪異ファイル」を毎日一話ずつ、全六話にわたって公開します。

幽霊か、それとも建築か。

次回の怪異も、どうぞお楽しみに。


安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。