「1日1冊は読めるようになる超メソッド」。
そんな帯の文句に惹かれて、思わず購入した一冊。いや正確には、「超メソッド」という言葉に興味を持ったのかもしれません。私はこれまでメソッドという言葉を、なんとなく「方法」や「仕組み」くらいの意味で捉えていました。
つまりこの本は、「こうすれば本は早く読めるようになる。ただし速読術の話ではない」という内容なのだろうと解釈したので、読んでみました。
結論から言えば、本書の主張はとてもシンプルでした。
「音楽を聴くように読む」
「毎日読む習慣を作る」
「熟読が必要な本には向かない」
おおよそ、この三点に集約できるように思いました。著者によれば、ビジネス書や自己啓発書、HOWTO本のような本には、本書で紹介されている読書法が有効です。一方で、小説のように情景や人物の心理を味わいながら読む本には、向いていないとも書かれています。
また、気に入った文章や印象に残った言葉を書き出すことで理解が深まるという話も紹介されています。そのあたりは確かにその通りだと思いました。
では私にとって役に立ったかといえば、「まぁまぁ」というのが正直な感想です。なにしろ私は、この本そのものを一時間も掛からずに読み終えてしまったので。それに自分が読む本は、圧倒的に「物語」ばかりなので。
自分は、読書の遅い人間だと思っています。だからこそ本書を手に取りました。若い頃は、一日に二冊くらい読むこともできました。しかし今は、一冊読むのに一週間ほど掛かってしまうこともあります。
原因ははっきりしています。飲酒と老眼。もちろん、日曜日の朝から「今日は読むぞ」と気合を入れれば、今でも三時間ほどで一冊くらいは読めます。でもその気合は午後には消滅しています。(という事は、気合と体力の低下も原因ですね) ですから二冊目に突入することは、まずありません。
それでも私は毎日、本は開いています。一日一ページしか読めない日もあれば、睡魔が襲ってこない限り読み続けている夜もあります。ただ毎日、必ず読んでいます。
そう考えると、私にとって読書は食事と同じなのでしょう。食事をするとき、「今日は絶対にたくさん食べるぞ」と、毎回気合を入れる人はあまりいないでしょう。
たくさん食べる日もあれば、軽く済ませる日もある。でも人は必ず毎日食事をする。私にとっては読書も同じです。たくさん読む日もあれば、少ししか読めない日もある。でも毎日、本を開くことは習慣として続けている、それが全て。
だから私には今さら、遅読を解消する必要はないのだな――。本書を読んで強く感じたのは、そのことでした。
『遅読家のための読書術』は、読書を速くするための本というよりも、自分と読書との付き合い方を見直すきっかけを与えてくれた一冊だったように思います。

安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。