今、思うこと 今、出来ること

コロナウィルスの影響で、学校や会社その他様々なイベントに影響が出ていますね。とくに学校への自粛要請を受けて、多くの小中高校が3月2日から休校に入ったため、お子さんがいる家庭では相当バタバタしていることでしょう。本当に対応が大変だと思いますが、同時にそれぐらい緊急事態だということも実感します。

では建築の世界では、どのような影響が出ているのでしょうか。まずは各種のイベントが中止されているようです。新しい商品・建材などを一堂に集めた大々的な展示会などは、軒並み中止になっています。またHMや建築家が催すオープンハウス(完成した家の見学会)なども、開催を取りやめるケースが増えています。HMのように常設の住宅展示場を持っている会社ならば、この時期にこだわらなくても、沈静化した後でもモデルルームを見て貰う事は出来ますが、設計事務所が主催するオープンハウスの場合は、クライアントへの引き渡しの予定があるので、いつか沈静化したら見て貰うなどということは不可能です。その辺りは辛いところ。

それから私たちの仕事に必要な各種の免許がありますが、この免許の更新講習会や新規取得講習会にも、講習会の延期や取り止めがあると聞いています。例えば建築士免許の更新講習会等の場合、免許証の期限があるので、有効期限を迎えるまでに講習を受講し、終了考査試験に合格する必要があります。時間にして約一日。終日、教室内で講義を受け、その後に試験を受けて合格しなければならないのですが、これ今の時期なら行きたくないと思っても不思議じゃないですよね。隣の席で咳き込む人でも居ようものなら、落ち着いて試験なんか受けられない!ってものです。ちなみにこの更新講習を受けないと、戒告あるいは2ヵ月間の業務停止処分が下ります。建築士の資格だけでなく、他の資格を持っている方は同じような更新講習を受けることになるのですが、それがこの時期なら、やっぱり行きたくないのが本音です。これらの講習の一部は、4月末を目処に開催を控えるよう国交省から要請が出ています。(ただし開催する講習も多々あります 管理建築士講習とか)

それから工事に入っている建物では、建築資材の一部が入って来ないと言う事態に陥っています。例えば便器や洗面台、ユニットバスや既製品の室内用扉や巾木と言った建材の一部に関しては、納期が分からない状態だそうです。また住設機器を扱うメーカーでは、新しい商品の発注を受け付けない状況にもなっています。つまりこの時期に建設会社やHMと請負契約を交わし、工事に入るタイミングの方には少し怖い時期だということです。

工事期間の短い住宅の場合ならば、4ヶ月ほどで完成する家もあると思いますが、その場合、ユニットバスを現場に納めるのは、着工から1か月から1か月半後です。それって、この時期の感覚で言えば直ぐですよね? 納期は大丈夫ですか? 発注して製品が予定通りに入りますか? って話です。年間に何万棟も建てるような大手HMなら、ひょっとしたら凄い数の住設機器の在庫を持っているかもしれませんが、ほとんどの会社はそんな在庫を抱えていません。つまり現在を緊急時だと考えたら、通常の工期を目安として契約しても大丈夫なのかということ。発注者・受注者側の両者共に心配です。発注者側にとって工事が始まってからの予定外の遅延は、ローンの返済や現在の住まいの解約、子供の学校の手続きや引っ越しにも影響が生じます。受注者である作り手側にとっては、遅延の発生=損害賠償の発生に繋がります。なによりも双方にとって悲しいです。だってどっちも悪くないのですから。材料の納期がハッキリしないことを甘く考えず、また依頼する側も不足の事態に備えて金融機関と打ち合わせしておくことが大切です。受注者側も契約時にはその辺りの様子を分かる範囲で正しく伝え、場合に拠っては契約書に「引き渡しが遅延する可能性もあります」みたいな一文を入れるべきなのかもしれません。

 

次に、これから家を建てようと思っている方や、作り手側の設計者や建設会社さんは、この時期をどう過ごせば良いのかを考えてみましょう。まずは家を造りたい人の場合です。例えば土地を探している最中の方は、まずはネットでの情報の収集かと思います。これは私が言わなくても承知していると思いますし、すでに実践されている事でしょう。問題はその先です。少し前ならば直ぐに現地に赴き、土地や周辺状況を見て回ったと思うけど、今は出掛けることを躊躇する時期。そこで土地情報をUPしている会社に、遠慮なく連絡してみることをお薦めします。ネットだけでは分からない情報も聞けますし、その土地以外のネットに公開されていない土地情報も紹介して貰えることだってあります。またグーグルアースなどを利用して、家に居ながらにして土地周辺の様子を眺めてみることも可能ですが、その為には土地の住所等の情報が必要ですが、その情報を手に入れるためにも不動産会社に連絡することが必要になります。購入を希望する土地が遠方にある場合には、土地の近くに住む建築家(勿論、設計を依頼することを前提として)に相談すれば、不動産会社の視点では無く、建築家の視点でアドバイスや情報を貰えることもあります。遠慮せずに連絡してみることをお薦めします。(ただし相手もお忙しいと思うので、最低限の礼節を持ってお問い合わせするようにして下さい)

次に土地が決まっている方の場合です。何処に建物を依頼するのか、あるいはどんな建築家が居るのかを探す際に、モデルルームやオープンハウスには行きにくいので、やはりネットを活用することになると思います。建築のコミュニティサイトを利用すれば、HMだけでなく建築家や建設会社の情報を得ることも可能ですので、積極的に利用されると良いでしょう。(HOUZZとか) 今はネット回線を利用して通話が可能なソフトも豊富なので、互いの顔を見ながら、お話することも出来ます。勿論、メールや固定電話だって構いません。「家を建てよう」って思い立った気持ちを、しぼませないようにしましょう。そして何よりも大切な事は、この時間を利用して御家族で、あらためて話し合ってみることをお薦めします。いったい自分たち家族は、これからどんな暮らしをしたいのか。御主人は、奥さんは、子供たちは、どんな生き方だったら楽しく暮らせるのかを、話し合ってみて下さい。家を建てる時って、そんな肝心なことを家族で話さないまま、なんとなく「ボチボチ家でも建てるか」って感じで建てていると思います。だってそんなこと面と向かって話し合うのって、なんか恥ずかしいじゃないですか。でもこんな時期だからこそ、恥ずかしがらずに話し合ってみると良いと思うのです。そのことを一番にお薦めします。

 

最後に私たち作り手側は、この時間をどう過ごせば良いのでしょうか。簡単に言えば「充電」と「準備」だと思っています。「充電」とは、新しい物を見たり聞いたり触ったりすることで、一度リフレッシュしながら、自分の中の情報の蓄積と上書きをしたら良いと思います。それが建物でも良いですが、映画でも音楽でも美術でも良いでしょう。今まで興味すら持たなかったものに、一度目を向けてみるのは如何でしょう。きっと何か知らないものが見えてくるかもしれません。そして「準備」とは、文字通り次に依頼される仕事に対する準備です。例えば、今までは使っていなかったSNSを始めたり、現在のHPを整理したり、まとめていなかった過去の設計事例をまとめてみるのみも良いでしょう。写真しかなかったものをスライドショーにまとめ、今までに試していなかった見せ方や公開する先を、変えてみるのも面白いと思います。今までは無かったパンフレットを作ったり、思っていたことや考えをエッセイやコラムとして書き綴ることも良いと思います。「稚拙な文章だから」「綺麗に撮れていない写真だから」と卑下せずに、自信を持って公開してみましょう。それが誰かの琴線を揺らす可能性だって、無いとは言えないじゃないですか。(と、自分自身に向かって言っています)

家を造る事って「夢」を形にすることで、それは「希望」でもあります。多くの方が怖がり、苦しみ、いつ終息するのか分からない不安の中で、夢を見て貰えることって凄い事ですよね。そんな気持ちを持って、仕事に向き合いたいと思っています。以上、今思っていることと出来ることです。

みんな頑張りましょう。

 

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コメント(2)

ベティ (2020年3月 6日 20:32)

そうですね、こんな時期だからこそ自分の足元を見つめるいい時期だと思えば良いのかもしれません。出来ることをやっていきましょう。同感です。
またコロナウイルス の本質が分からないからこそいろいろなデマが飛んでいましたが、これからは長期的に見れば食料問題?かもしれません。 日本は国内食料自給率が40%に満たないのであり得ない話ではありません。
良い機会と捉え、外国頼りがゆえに「いざ外国から食料が入ってこなくなると国民が困窮してしまう」という日本の農業の在り方はどうなのか?と、国家は国民のために考えて欲しいです。

天工舎一級建築士事務所 (2020年3月 7日 17:50)

食料自給率に関してはまた違う視点がありますが、人件費が安いという理由だけで国内生産を止め、外国にばかり生産を頼ってしまうことには不安を覚えます。今は古い製品を修理して使うよりも、新しい物を買った方が安い時代です。それを消費の時代と言うのでしょう。たしかに安い事が喜ばれる時代ですが、それらの商品のほとんどが外国で生産されている状況です。高い技術を持った町工場や職人が消え、腕の良い職人よりも、大量に消費されるペラペラな材料が、早く、安く、便利だと喜ばれる時代です。そしてそれを喜んで受け入れている一人に、自分が居ることも事実です。自分の足元を見つめ直すには、ひょっとすると良い機会なのかもしれないと思っています。

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