住まいの生理学01|子供部屋は勉強部屋ではない――思春期まで見据えて考える子供の居場所

はじめに

これから「家づくり」に関する話を、コラムとして定期的に書いていこうと思います。

以前はホームページ内に「コラム」のページを設けて建築の話を書いていましたが、今はそのページを削除してしまいました。そこで今回、あらためてブログの中に新しいカテゴリーを設け、書き始めようと考えました。

「家づくり」の話というと、間取り、広さ、収納、設備、デザインといったことが中心になりがちです。もちろん、それらはどれも大切な要素です。けれども、実際に暮らし始めたとき、住み心地を左右しているのは、家族の距離感、音、気配、羞恥心、衛生感覚、成長に応じた居場所の変化といった、図面だけでは見えにくい事柄ではないかと思います。

そこでこの連載では、誰もが少し気になりながらも、案外きちんとは語られない住まいの問題を、建築士の視点から考えていきます。

流行や見た目だけではなく、「人が暮らすとはどういうことか」というところから、家のあり方を見直してみたいと思います。

一般的な住宅情報ではあまり触れられない内容であっても、実際には多くの人が気にしていることは少なくありません。そうした事柄をできるだけ分かりやすく言葉にし、家づくりを考えるときの判断材料のひとつとして、参考にしていただける内容を目指したいと思っています。

子供部屋は、最初から勉強部屋なのだろうか?

家づくりの相談を受けていると、まだ子供が小さいうちから「子供が二人いるので子供部屋を二つ作ってほしい」と言われることがあります。もちろん、それ自体はごく自然なことです。子供がいる家庭にとって、子供部屋は家づくりの大きなテーマのひとつだからです。

ただ、話をよく聞いてみると、その「子供部屋」は単なる居場所というより、最初から「勉強部屋」として考えられていることが少なくありません。勉強机を置いて、本棚を置いて、静かに勉強するための部屋として、思い描かれているわけです。

けれども、この考え方には、少し立ち止まってみても良いと思います。というのも、子供が自分の部屋にこもって勉強する時期は、意外と遅いからです。幼い頃の子供は、親の気配が感じられる場所で、過ごすことを求めるものです。絵を描くのも、本を読むのも、宿題をするのも、食卓のそばや居間の一角の方が落ち着く、ということは珍しくありません。親にとっても、その方が安心でしょう。子供の様子が分かりやすく、声も掛けやすく、ちょっとした会話も自然に生まれます。場合に拠っては一緒に本を読み、あるいは自分が子供の頃に読んだ本の話を、することもあるでしょう。子供が小さな頃とは、一緒の空間で過ごすことが大切な時期があるのです。

そう考えると、勉強することと子供部屋を持つこととは、最初から同じ意味ではないことが分かります。

子供部屋の役割は、勉強よりも成長にある

では、子供部屋は何のためにあるのでしょう。私は勉強のためというよりも、成長に応じて少しずつ「自分の場所」を持つためだと思います。つまりは「自立」する場所なのだと思っています。

子供は、いつまでも親のそばにいるわけではありません。年齢が上がるにつれて、自分の持ち物を自分で管理したくなり、ひとりで過ごしたい時間も少しずつ生まれてきます。

とくに思春期に近づくと、家族と距離を取りたい気持ちと、完全に切り離されたいわけではない気持ちとが、入り混じるようになります。その時に必要になるのは、立派な勉強部屋というよりも、自分の気持ちを落ち着かせたり、自分の時間を持ったりできる場所なのではないでしょうか。

そう考えると、子供部屋は最初から完成された個室である必要はないように思います。幼い頃には家族とつながりを持てる場所で過ごし、成長に応じて少しずつ役割を変えていける、そんな柔らかな場所である方が、自然だと思います。

家づくりでは「今」より「変化」に備えたい

家を建てる時に難しいのは、建てる時の暮らしだけでなく、その先の変化まで考える必要があることです。今はまだ小さな子供も、数年経てば小学生になり、やがて思春期を迎えます。親子の距離感も、家の中で必要とする居場所も、少しずつ変わっていきます。だからこそ、子供部屋は最初から固定的に考えすぎない方がよいのではないかと思います。

たとえば最初は広めの一室として使い、必要になった時に二つに分けられるようにしておく。あるいは、子供部屋とは別に、家族が一緒に本を読んだり勉強したりできる場所を大切にしておく。そうした考え方の方が、実際の暮らしには無理が少ないように思います。

家づくりでは、計画の段階で部屋の名前を先に決めてしまいます。寝室、子供部屋、客間、収納、といった具合に。けれども本当は、その部屋で誰がどのように過ごし、何年後にはどう変わっていくのかを考える方が大切なのだと思います。

子供部屋もまた、早く与えればよいというものではないのでしょう。大切なのは、子供の成長に合わせて、その時々にふさわしい居場所になっていくことです。勉強部屋を先に用意することよりも、家族の中でどのように育っていくかを考えることの方が、ずっと大切なのではないかと思います。

次回以降は、「子供に個室を与える時期」や、「思春期の子供部屋に本当に必要なもの」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

小田原周辺で家づくりをご検討の方は、間取りを描き始める前の段階でもご相談ください。子供部屋を含め、ご家族の暮らし方に合った住まいの考え方を、一緒に整理していければと思います。

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