ちょうど一年前の今頃、体調を崩して救急搬送されました。
搬送直後は原因が分からず、様々な検査を受けた末に、腰から骨髄液を採取することで髄膜炎であることが判明しました。後から聞いた話では、医師から家族に対して「良性か悪性かの判定に数日かかる。悪性の場合は大変なことになる可能性もある」と説明があったそうです。
幸いにも良性だったため、一か月半ほどの療養で回復することができました。しかし、その経験によって「今日できていることが、明日も同じようにできるとは限らない」という当たり前の事実を、身をもって知ることになりました。
今年の春には健康診断で体重と腹囲について注意を受け、食事を見直したり少し歩いたりしています。思うようには減りませんが、それでも以前よりは自分の身体や時間について、考えるようになった気がします。
そんな経験を経て、仕事に対する考え方も少し変わったように思います。
先週末、10年以上前に住まいづくりのお手伝いをさせていただいた方からご連絡をいただき、現在のお住まいについてご相談を受けました。
設計者として仕事を続けていて嬉しいことの一つは、何年も前に関わった方から再び声を掛けていただけることです。建物は完成したら終わりではなく、その後も人の暮らしや人生と共に時間を重ねていくもの。その変化の節目に相談相手として思い出していただけることは、本当にありがたいことだと思います。
今回のご相談は、「今の住まいをどう考えるか」というものでした。リフォームという選択肢もありますし、建て替えという方法もあります。予算や時間が許すのであれば、どちらも可能です。
以前の私なら、そこで説明を終えていたと思います。判断するのはあくまでも相談者様であり、こちらから積極的に方向性を示すことは控えていました。「リフォームしましょう」「建て替えましょう」と勧めることは営業的に見える気がしていたからです。ただ今回は、もう少し違う話をしました。
なぜ今、このタイミングで相談しようと思われたのか。その理由を一度考えてみてはどうでしょうか、と。
人も住まいも、「今は大丈夫」がいつまでも続くとは限りません。私自身が病気を経験したことで、そのことを以前より強く意識するようになりました。もちろん、すべてを一度に解決する必要はありません。予算にも限りがあります。
だからこそ、できることを順序立てて考え、一つずつ解決していく方法もあると思うのです。今すぐ建て替えなくても、まずは気になる箇所を直す。暮らしにくさを減らす。将来に向けて準備を始める。そうした積み重ねも、立派な住まいづくりです。
綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、私にご依頼いただけなくても構わないのです。ただ家の中で安全に、安心して暮らし続けたいと願うのであれば、今できることから手を付けてみてはどうでしょうか。それは営業トークではなく、自分自身の経験から生まれた率直な思いです。
住まいづくりとは建物をつくることだけではなく、そこで暮らす人の時間に寄り添うことが大切だと思っているからです。
執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
ご家族の想いを大切にし、時間が流れて変化していく慣れ親しんだ物理的な器としての家づくりを、お手伝いしています。小田原周辺での住宅設計や、日々の積み重ねを大切にした無理のない省エネリフォームなど、住まいに関するご相談は、お気軽にお寄せください。
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