連日、各地に大雨の被害が出ていて心配ですね。設計事務所を含めた建設関係者は、大雨が降ると、過去に工事に携わった建物に雨漏りなどの被害が出てはいないかと、そちらの面でも心配します。普段の雨なら問題がなくても、強い風を伴う大雨になると、普段とは違う場所から雨水が入り込むことがあるからです。
どちら様も「あれ?」と異常を感じたら、直ぐに工事に携わってくれた建設会社さんに連絡し、手当てをすることをお薦めいたします。被害は少ないうちに対処することが一番なので。
また、すでに完成している建物ではなく、工事中の建物の場合には、違う心配があると思います。
例えば、基礎のコンクリートを打設したばかりなのに大雨が降り、基礎内がプールのように水が溜まってしまった。さてどうしよう! 基礎は傷まないか、鉄筋は錆びたりしないのか?
あるいは上棟した直後に台風が直撃し、建てたばかりの柱や梁が濡れてしまったけど、このままで大丈夫なのか? 濡れてしまった柱や梁の全てを取り替えないとダメなんじゃないのか、と言った具合に心配は尽きないことと思います。
実は、こうした心配をされる建築主は、決して少なくありません。
以前私が、HOUZZというサイト内で、2023年6月に「建築中の雨はどこまで気にしたらいい?建主が知っておきたい雨と工事の関係」↗という記事を書いたことがあります。
この記事は、私が書いた他の記事と比べても、圧倒的に多くの方に読まれています。
記事内では、基礎・柱や梁・合板・断熱材などの部位ごとに、濡れた時のリスクに関して説明していますので、詳しくお知りになりたい方は、そちらの記事もご参考にしてみて下さい。
ここでは少し違う視点で、「なぜ多くの建築主は、工事中の雨に対して心配し、情報を検索するのだろう」という点に関して考察してみます。
あくまでも私の推測ですが、工事中の木材が濡れることに関して心配をしている方は、疑問や不安を感じた時に、身近に問い合わせて回答をくれる相談者が居ないのではないかと思うのです。
たとえば設計事務所に問い合わせ、「こんな状態ですが大丈夫ですか?」と質問すれば、納得できる回答をしてくれることでしょうし、「現場にも必要な措置を講じるように連絡しておきます」となり、不安点が解消される筈です。
一方、HMなどの場合は、建築主が直接設計者と話が出来る仕組みになっていないケースもあるため、「誰に聞けばいいのだろう?」となります。
営業担当者に聞けば良いのか、現場監督に聞くべきなのか、それとも職人さんに聞くのはまずいだろうか……。
そうこうしているうちに、「もしかして、かなり濡れてしまったのではないか」「このままで大丈夫なのだろうか」と、最初は小さな疑問や不安だったことが、どんどん自分の中で大きく膨らんでしまう。
その結果、SNSで不安を吐露すると、何処かの誰かが「それはマズいですね」とか「交換して貰った方が良いですよ」なんて感じで答えてくれる。
もちろん答えた方は、現場を見ているわけでも、建物の状態を把握しているわけでもありません。それでも、そんな一言を読んでしまうと、最初は小さかった不安が、さらに大きくなってしまうのは、不安を抱えた人の心理とすれば当然のことだと思います。
建築主とは、一生のうちに何度も経験することのない、大きな事業を遂行する事業主なのですから、その事業を成し遂げるに際して、信頼のおける、安心して相談できる相手の存在が必要です。
その相手が居ないままだから、自分一人で悶々としてしまう。その結果、悪い方へと思考が向かってしまい、心配事だけが大きくなっていく——そんなことではないかと考えるわけです。
家づくりという一大事業において、不安になったときに相談できる人とは、建築士ではないでしょうか。
ここで言う建築士とは、単に図面を描く人とは少し違う捉え方をしています。
たとえばHM等の会社の中に属していて、建築主が一度も会ったこともなく、ただ間取りの図面を描いてくれた建築士を、絶対的に信頼できるでしょうか。
それよりも、建築設計事務所として、責任のある立場と関係性で建築主と向き合う建築士の言葉の方が、すんなりと受け入れられるのではないかと思うのです。
建築主が「これ、大丈夫なのかな?」と思ったときに、その疑問を受け止め、理由を説明し、必要であれば現場にも伝え、安心して次へ進めるようにしてくれる。そんな仕事も、建築士の大切な仕事だと思います。
家を造るということは、建物を造ることだけではありません。その過程で生まれる疑問や不安を一つずつ解消しながら、建築主が安心して家づくりを進めていける環境を整えることも、建築士の仕事です。
そのためには、まず自分自身が選んで決めた家づくりのパートナーを信頼し、分からないことや不安に思ったことを、何でも聞ける関係を築くことが大切だと考えます。
「こんなことを聞いてもいいのかな?」などと遠慮する必要はありません。
家づくりは、建築主にとって一生に何度も経験することのない一大事業なのですから、分からないことがあれば聞けばいい。不安になったら相談すればいいのです。
そしてもし何らかの事情で、どうしてもそのような関係を築くことが難しいのであれば、第三者である建築士にセカンド・オピニオンを求めれば良いのです。
大切なのは、工事中に雨が降ったときに、一人で悩み続けないこと。
「これ、大丈夫なのかな?」
そう思ったときに、安心して尋ねられる人がいることだと思います。
それもまた、家づくりには大切なことだと思っています。
今回は少し違った視点で、雨に対して不安に思ってしまう気持ちを考察してみました。
執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
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